下記資料を紹介した。
『白川静著作集 第12巻 雑纂』 平凡社 2000年
「Ⅲ 三部の字書について」(p.231-415)という章立てがあり、「字統の編集について」「字訓の編集について」「字通の編集について」それぞれに立項されている。
「字統の編集について」の項では、「一 本書の要旨」として「この書は、漢字の構造を通じて、字の初形と初義とを明らかにする「字源の字書」であり、その初形初義より、字義が展開分化してゆく過程を考える「語史的字書」であり、またそのような語史的な展開を通じて、漢字のもつ文化史的な問題にもふれようとする「漢字文化の研究書」である。要約していえば、この書は、漢字の歴史的研究を主とする字書である。」(p.231)とあり、「字訓」「字通」についても、それぞれ趣旨が記載されている。
また、章末には「字通に寄せる」という項目において「字書は、まずその字のもつ原義、原始性を発掘するものでなければならぬ。すなわち過去に向うものでなければならぬ。過去より現在に至り、さらにまた未来に向うものでなければならぬ。未来に向って、いかにあるべきかを問うものでなければならぬ。実践の程度はともかくとして、少なくともその意識をもつものでなければならぬと思う。」という記述がある。(p.394)
『入門講座白川静の世界Ⅰ 文字』 立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所編 平凡社 2010年
「第三部 白川文字学の展開」の中で、第一章『字統』(p.136-151)、第二章『字訓』(p.152-167)、第三章『字通』(p.168-184)の項目立てがあり、各字典に関する分析、記述がある。
『白川静を読むときの辞典』 立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所編 平凡社 2013年
p.228-229に『字統』、『字訓』、『字通』の各項目が立てられている。『字統』の項では「漢字の初形・初義を明らかにする字源(成り立ち)の字書。字源を明らかにすることによって字義の展開を説明できると白川はいう。(略)収録されている約七千字は部首法によらないで、漢字を国語国字とする立場から五十音順に配列されている。(以下略)」との記述がある。
・『字訓』の項では「日本で上代語(奈良期まで)と、その語の表記に使用されている漢字との間にみられる、国語の語源と漢字の原義との対応関係を検証することを目的とした字書。(以下略)」等の記述がある。
・『字通』の項では、「漢字の成り立ちとその意味の展開を明らかにすることを主な目的とする字書。(略)漢字を国字とする立場から、約一万字の親字を五十音順に配列し、古訓(日本の古辞書からとっている訓)の項目を設けている。(略)漢字の用義法は二字の連語、熟語によって示されるものとして、中国の古典から二字熟語の語彙を選び、意味が完結するまとまった単位の用例文を訓(よ)み下してつけている。他の漢和辞典にないこの試みは、訓読法で読まれていた中国の古典が、教養の一部となっていたかつての日本人の状況を回復したい、という白川の強い願いから生まれたものである。(以下略)」との記述がある。