レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017年05月14日
- 登録日時
- 2017/09/16 00:30
- 更新日時
- 2017/09/28 17:26
- 提供館
- 京都市図書館 (2210023)
- 管理番号
- 右中-郷土-103
- 質問
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解決
京都府庁前あたりにある「滋野井(しげのい)」と,「白峯神宮(しらみねじんぐう)」との関係について知りたい。
- 回答
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「滋野井」とは,平安初期の公卿,滋野貞主(しげのさだぬし)が住んでいた邸宅,または邸宅内にあり,都七名水にも数えられた井戸の名称です。現在は井桁がわずかに残存しています。
滋野貞主以後の邸宅の沿革はあまり明らかではありませんが,11世紀前半に藤原公成の邸宅となり,またその娘藤原茂子の里邸ともなりました。その後,蹴鞠の達人として知られる藤原成通(ふじわらなりみち)の別邸となりました。
滋野井の邸内には精大明神(せいだいみょうじん)が祀られており,一説によると,後鳥羽院の勧請とも言われています。精大明神は『成通卿口伝日記』や『古今著聞集』にもみえる蹴鞠の神で,藤原成通が千日間にわたって蹴鞠上達の願をかけたところ,祭壇に置いた鞠が転がり落ちてきて,藤原成通の前に現れたと言われています。
また【資料5】によると,蹴鞠の神「精大明神」は,蹴鞠の達人である藤原成通に贈られた神号であるともされています。
一方,「白峯神宮」は,京都市上京区飛鳥井町にある神社で,崇徳天皇・淳仁天皇を祭神として祀っています。社地はもと飛鳥井氏の別邸で,境内には飛鳥井氏の鎮守神で蹴鞠の神である精大明神が祀られており,現在でも精大明神の祭日と定められた七夕の日には蹴鞠の技が奉納されます。
白峯神宮の精大明神は,【資料4】【資料13】によると,滋野井の精大明神から白峯神宮に移したとされています。
また【資料8】によると,もとは堀川通丸太町に祀られていた精大明神を,飛鳥井氏の祖である藤原雅経(ふじわらのまさつね)が自身の邸宅の近くに移したともされています。
- 回答プロセス
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●京都の事典より・・・【資料1~3】
【資料1】p602「滋野井跡」の項に詳しい記述あり。
【資料2】p30滋野井第について詳しい記述あり。
●京都の寺社に関する資料から・・・【資料3】p382「白峯神宮」の項
白峯神宮の基礎情報あり。“社地はもと飛鳥井氏別邸であった”“境内には,蹴鞠の家として知られた飛鳥井氏の鎮守神で,蹴鞠道の神である精大明神が祀られている”
●オンラインデータベース「ジャパンナレッジlib」で“精大明神”を検索。
「東洋文庫」より『改訂 京都民俗志』に載っているとわかる。・・・【資料4】
●【資料4】p23「滋野井」の項に詳しい記述あり。
“井戸の上に蹴鞠神の小祠が祭られていて,精大明神と称されていたこともあるが,今は上京区今出川通り堀川東入る飛鳥井町の白峯神宮の内へ移されている”
p67「都七名水」の項,p193「猿」の項,p275「祝園村」(ほうそのむら)の項に滋野井に関する記述あり。
●“蹴鞠”のキーワードで当館所蔵資料を検索。・・・【資料5・6】
【資料5】p24“名足として声誉高き大納言成通が「蹴鞠の精の神」と尊崇されるようになつて,「精大明神」の神号が贈られるとともに,その社殿も造営された”
【資料6】p22藤原成通が蹴鞠の名足として知られたこと,その弟子の頼輔も名足で,孫の宗長が難波家を継ぎ,その弟の雅経が飛鳥井家を興して共に蹴鞠の宗家として伝承されたことが記載されている。
●神社の縁起や由来に関する資料から・・・【資料7・8】
【資料7】p251「白峯神宮」の項,「鞠の精大明神」の説明
成通の前に精大明神が姿を現した伝説についての記述あり。
【資料8】p378「精大明神」の項
“鞠之精大明神を祀る京都市上京区の白峯神宮は,後鳥羽上皇の蹴鞠師範で,蹴鞠長者といわれた藤原宗長(難波家祖)とその弟雅経(飛鳥井家祖,『新古今集』の撰者の一人)が,堀川通丸太町に祀られていた精大明神を,両家の近くの今出川通に移したものと伝えられる”
●【資料7】の参考文献より・・・【資料9・10】
【資料9】p393『成通卿口傳日記』に鞠の精が現れる場面の描写あり。
【資料10】p233『古今著聞集』に鞠の性が現れる場面の描写あり。
●京都の地理・地名に関する資料より・・・【資料11】
【資料11】p136「山城名勝志巻之三」の「滋野井社」の項に,鞠の性が現れる場面の描写あり。(『古今著聞集』の引用)
●過去の新聞記事を調べる。
オンラインデータベース「聞蔵Ⅱビジュアル」(朝日新聞),「Gサーチ」(京都新聞)で“滋野井”を検索。
【資料12】(最終確認日:2017年7月6日)
●“名水”のキーワードで当館所蔵資料を検索。・・・【資料13】
【資料13】p37「滋野井」の項に,滋野井の邸宅や名水,精大明神について記述あり。
“後鳥羽上皇も蹴鞠の上手で,「滋野井」のほとりに鞠の神,精大明神の社を建てさせている。のちに飛鳥井家が自分の邸内に勧請して,現在も白峯神宮に祀られているが,元の社の方はいつの頃かに廃滅してしまった”
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本 (291 9版)
- 神社.神職 (175 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】『日本歴史地名大系 27』(平凡社 1979)p602
- 【資料2】『角川日本地名大辞典 26 京都府下巻』(「角川日本地名大辞典」編纂委員会/編 角川書店 1982)p30
- 【資料3】『京都・山城寺院神社大事典』(平凡社/編 平凡社 1997)
- 【資料4】『京都民俗志』(井上 頼寿/著 平凡社 1968)p23,67,193,275
- 【資料5】『京都郷土芸能誌』(京都市産業観光局観光課/編 京都市 1953)p24
- 【資料6】『日本の蹴鞠』(池 修/著 光村推古書院 2014)p22
- 【資料7】『社寺縁起伝説辞典』(志村 有弘/編,奥山 芳広/編 戎光祥出版 2009)p251
- 【資料8】『日本神祇由来事典』(川口 謙二/編著 柏書房 1993)p378
- 【資料9】『群書類従 第19輯』(塙 保己一/編纂 続群書類従完成会 1979)p393
- 【資料10】『国史大系 第19巻』(黒板 勝美/編輯 吉川弘文館 2000)p233
- 【資料11】『新修京都叢書 第13巻』(野間 光辰/編,新修京都叢書刊行会/編著 臨川書店 1968)p136
- 【資料12】「滋野井の井桁後世に 上京・平安期からの名水 所有者,地元寄付の意向」(2016.11.21 京都新聞 夕刊p1)
- 【資料13】『京洛名水めぐり』(駒 敏郎/著 本阿弥書店 1993)p37
- キーワード
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- 滋野井
- 井戸
- 白峯神宮
- 精大明神
- 蹴鞠
- 名水
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000221963