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レファレンス事例詳細(Detail of reference example)

[転記用URL] http://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000217382
提供館
(Library)
神奈川県立図書館 (2110018)管理番号
(Control number)
相-170004
事例作成日
(Creation date)
2017年05月24日登録日時
(Registration date)
2017年06月16日 13時56分更新日時
(Last update)
2017年06月16日 13時59分
質問
(Question)
わさびが根から放出するアリルイソチオシアネートがどのような化学作用によって他の植物の生長を抑制するかについて知りたい。
回答
(Answer)
当館及び県立川崎図書館で調査した結果を回答した。

①星野敏明著「みずわさび~害虫防除の苦労ばなし~」『植物防疫』69巻6号(2015)日本植物防疫協会p.50~の中で「根からアリルイソチオシアネートを放出して他の植物が近接しないようにする」との記述があります。ただし、化学作用について詳しい記載はありませんでした。こちらの記事は日本植物防疫協会のウェブサイトで全文公開されています。
http://www.jppa.or.jp/shuppan/images-txt/2015/2015_0613.pdf

②『作物学用語事典』日本作物学会編 農山漁村文化協会 2010<615.03/102 相談室常置>(22405724)
p.72に「植物自身から分泌される有機酸などの他感物質によって近接の生物の生育や活動が影響されることを他感作用(アレロパシー)allelopathyという」と記載がありました。

③『アレロパシー』Elroy L.Rice著、八巻敏雄共訳 学会出版センター 1991<471.4/ 3>(80273543)※県立川崎図書館所蔵
p.147~149、生長帯に大量のアリルイソチオシアネートを生成するクロガラシ(Brassica nigra)を磨砕した組織からの揮発性物質および純品が、ヒゲナガスズメノチャヒキ(Bromus rigidus)の幼根の生長に阻害的に働くことや、揮発性ガスに曝されると根の生長が抑制され、種子は発芽が抑制されるとした、Mullerら(1964)による試験結果が紹介されています。
p.329~330、アリルイソチオシアネートあるいはアリルチオシアネートといったカラシ油類は、シニグリンのようなカラシ油配糖体が加水分解されることによって生成すること、
Evenari(1949)によれば、カラシ油は種子発芽や微生物の生育を強力に阻害するということが紹介されています。
また、BellとMuller(1973)による試験を紹介し、クロガラシ(Brassaica nigra)のカラシ油は、実験室内の試験では種子発芽を強く阻害したが、圃場試験においては顕著な効果を示さなかったことなどが書かれています。

CiNii Articles(学術論文情報のデータベース  http://ci.nii.ac.jp/ )にてキーワード「アリルイソチオシアネート アレロパシー」で検索したところ、次の論文がヒットしました。

④草川知行、平舘俊太郎、藤井義晴 [他]著「カラシナ(Brassica juncea Cross.)由来の揮発性物質による雑草の発芽抑制」『千葉県農業試験場研究報告』41号(2000-3)p.29~34

ワサビから発生した物質についてではありませんが、「I緒言」に「アブラナ科植物の植物体から発生したAITCが株周辺の雑草種子に対して発芽抑制作用を示していることが指摘された(BROWN and MORRA 1996, WESTON 1996)」、「V摘要」に「カラシナから発生するAITCを利用して雑草防除を行うため、レタスおよび雑草種子の発芽抑制効果を明らかにした。」といった記述がありました。AITCはアリルイソチオシアネートの略です。

なお、こちらの論文はアグリナレッジ(農林水産研究に関する国内の論文・情報が探せる
データベース)によりインターネット上で全文公開されています。
http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010620972

事前調査事項でいただいた土壌殺菌作用については資料を見つけることができませんでした。土壌に限らない抗菌作用ついては、次の資料に記載がありました。
➄『ワサビのすべて 日本古来の香辛料を科学する』木苗直秀ほか著 学会出版センター 2006<657.86/2>(21940192) p.95~100「7.3.1.a. AITCにより発現する抗菌, 抗寄生虫活性」
⑥『わさび博物誌 金印グループ創業75周年記念誌』長谷川嘉成ほか編著 金印 2004<657.86/ 2>(81085714)※県立川崎図書館所蔵
植物の生長を抑制することに関しては記述がありませんでしたが、「7 わさびの機能性と安全性」p.95~102では、アリル芥子油に、大腸菌、腸炎ビブリオ菌、サルモネラ菌やカビに対する強い抗菌作用が確認されているとして、細菌、酵母、カビに対する作用や抗寄生虫作用を示す実験結果などを紹介しています。

・JDreamⅢ(県立川崎図書館が契約している科学技術文献データベース)で「ワサビ アリルイソチオシアネート」、「ワサビ AITC」、「ワサビ アレロパシー」等のキーワードで検索した結果、下記の雑誌論文に関連する内容が掲載されているのが確認できました。

⑦木苗直秀、増田修一著「沢わさびの機能性」『日本食品新素材研究会誌』11巻2号(2008-12)、p.64-74
沢わさびの抗菌作用と抗カビ作用の項目で、アリルイソチオシアネート(AITC)の抗菌性について言及されています。こちらの論文にも植物に対する作用については記述がありません。

アリルイソチオシアネートのエチレン作用の抑制に関する情報は、次の通りです。
⑧「エチレン作用の抑制剤としてのアリルイソチオシアネートの作用機構の解明とその応用」(KAKEN(科学研究費助成事業データベース)の1994年度実績報告書)
(研究代表者 内田好則)
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04806004/

CiNii Articlesにてキーワード「アリルイソチオシアネート エチレン」で検索すると、11件ヒットしました。そのうち、インターネット上で閲覧できるものは7件ありました。

その他、下記の資料を調査いたしましたが、アリルイソチオシアネートやエチレン生成の抑制に関わる内容は見つかりませんでした。※県立川崎図書館所蔵
・『植物たちの静かな戦い』藤井義晴著 化学同人 2016<471.3/ 63>(81667727)
・『化学で勝負する生物たち 1 アレロパシーの世界』今村寿明著 裳華房 1994<464/ 64/ 1>(80563323)
・『化学で勝負する生物たち 2 アレロパシーの世界』今村寿明著 裳華房 1994<464/ 64/ 2>(80563331)
・『植物の体の中では何が起こっているのか』嶋田幸久、萱原正嗣著 ベレ出版 2015<471.3/ 61>(81633380)
・『最新 植物生理化学』長谷川宏司、広瀬克利編 大学教育出版 2011<471.4/ 31>(81504797)
・『植物生化学』H.W.ヘルト著、金井龍二訳 シュプリンガー・フェアラーク東京 2000<471.4/ 10>(80844582)
・『アレロパシー 他感物質の作用と利用』藤井義晴著 農山漁村文化協会 2000<615.6/ 2>(80836711) 
こちらには、アレロパシー物質の一例として「ワサビやカラシの辛味成分であるアリルイソチオシアネート」という記述はあるものの、具体的にどのような作用をするのかについては記述がありませんでした。
回答プロセス
(Answering process)
①「事前調査事項」として情報のあったWikipedeiaのワサビの項を確認の上、Googleにて「ワサビ アリルイソチオシアネート 自家中毒」で検索→資料①
②Googleにて「ワサビ アリルイソチオアシアネート」等で検索→論文がヒット
・藤井義晴、濱野満子著「アレロパシー;植物が放出する化学物質による他の生物との相互作用―とくに植物が放出する揮発性物質が他の生物に及ぼす作用」日本生気象学雑誌40(1)p.49-54 2003-05 ※ただし、アリルイソチオシアネートの作用については記述なし
③「アレロパシー」というキーワードが見つかったため、資料②で確認
④「アレロパシー」「アリルイソチオアシアネート」「ワサビ」等のキーワードで当館OPAC、CiNii Articles、JDreamⅢを検索→資料③~⑦
➄Googleにて「アリルイソチオシアネート エチレン」で検索→資料⑧
事前調査事項
(Preliminary research)
Wikipediaではこのことについて「土壌を殺菌し共生菌を死滅させてしてしまうため」と説明してあるものの出典が見当たらず、アリルイソチオシアネートの土壌殺菌作用についてウェブ検索を行っても事実確認できなかった。自家中毒についての説明においても「この物質によって大きくなれない」など表現が曖昧であり,わさびが自らが放出するアリルイソチオシアネートがどのような作用によってわさび自身の成長を阻害するのかは不明である。
この他の多くのウェブサイトでも調べたが、Wikipediaの情報を元にしたものが多いためかどれも同じような説明で、研究論文や出典などは見当たらなかった。
一方で、アリルイソチオシアネートにはエチレンの生成を抑制する作用が知られており、これにより他の植物やわさび自身の成長が抑制されるとも考えたが事実確認できなかった。
NDC
一般植物学  (471 9版)
作物栽培.作物学  (615 9版)
森林利用.林産物.木材学  (657 9版)
参考資料
(Reference materials)
キーワード
(Keywords)
ワサビ
アリルカラシ油
アレロパシー
照会先
(Institution or person inquired for advice)
寄与者
(Contributor)
備考
(Notes)
調査種別
(Type of search)
内容種別
(Type of subject)
質問者区分
(Category of questioner)
社会人
登録番号
(Registration number)
1000217382解決/未解決
(Resolved / Unresolved)
解決
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