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レファレンス事例詳細(Detail of reference example)

[転記用URL] http://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000193788
提供館
(Library)
大阪府立中央図書館 (2120005)管理番号
(Control number)
6001015576
事例作成日
(Creation date)
2016/05/06登録日時
(Registration date)
2016年06月24日 00時30分更新日時
(Last update)
2016年06月24日 00時30分
質問
(Question)
黄泉を「ヨミ」と読む根拠について知りたい。『万葉集』等の古典籍では、どのように表音されていますか。
回答
(Answer)
「黄泉」に関して、次の資料を調べました。

※資料内容の表記に関しまして、旧字体を新字体で記載している部分があります。[ ]内はルビを記載しています。ルビの位置に書かれていてもルビではないと思われるものは、[ ]に入れずにカタカナ表記にしています。

『日本古典文学大系 1 古事記』(岩波書店 1958.6)
p.63「黄泉[よみ]ノ国」の頭注に「ヨモツクニ、ヨミツクニと訓んでもよい。死者の住む国で、地下にある穢れた所と信じられていた。黄泉の二字は漢語の借用で「地中之泉」の意。」とあります。

『日本古典文学大系 67 日本書紀 上』(岩波書店 1967.3)
p.94「泉門」を「よみど」と読んでいます。「泉門」は頭注によればp.95「冥界の入口にあって、邪霊の侵入を防ぐ神。部落の入口に陽物の像などを立てて、その勢能によって、部落の安全を保った。それと同じく冥界の死神を防ぐ意。」とあります。

本居宣長は『古事記伝』において「黄泉国」について次のように書いています。

『本居宣長全集 第9卷』(本居宣長/[著] 筑摩書房 1968.7)※中之島図書館所蔵資料
※【 】内は、この資料の底本の二行割注です。

p.237-239 「古事記伝六之巻」に「黄泉国」についての記載があります。
p.237「黄泉国は、【豫美能久爾[ヨミノクニ]とも、豫美都久爾[ヨミツクニ]とも訓べし、與美津[ヨミツ]と云ことは、祝詞式に見ゆ、されどなほ】豫母都志許賣[ヨモツシコメ]、又書紀に余母都比羅佐可[ヨモツヒラサカ]など、例多きに依て、豫母都久爾[ヨモツクニ]と訓つ、たゞ黄泉とのみあるは、豫美[ヨミ]と読べし、さて豫美[ヨミ]は、死[シニ]し人の往[ユキ]て居[ヲル]国なり」とあります。
また、p.238「名ノ義は、口決に夜見土[ヨミド]とある、土ノ字は非[ヒガコト]なれど、*夜見[ヨミ]はさも有リぬべし、下文[シモノコトバ]に燭一火[ヒトツビトモシテ]とあれば、暗處[クラキトコロ]と見え、又夜之食国[ヨルノヲスクニ]を知看[シロシメス]月読ノ命の、読[ヨミ]てふ御名も通ひて聞ゆればなり」ともあります。
また、別の記述の二行割注の中の記載ですが、「出雲ノ国ノ風土記に、伯耆ノ国ノ郡ノ内ノ夜見[ヨミ]嶋と云ことあるは、黄泉[ヨミ]に由あることありての名なるべし」とあります。

この資料には、「注釈が今日の語学研究から見て誤りと思われる場合など」に*をつけ、補注を加えたと凡例にあります。上記、「夜見[ヨミ]はさも有リぬべし」の補注は次のとおりです。

p.545-546「上代特殊仮名遣によれば夜[ヨ]はヨ甲類yo、見[ミ]はミ甲類miである。しかし、黄泉はヨモツシコメ、ヨモツヒラサカ、ヨモツヘグヒなどに、豫母都志許賣、余母都比羅佐可、譽母都俳遇比とあり、豫・余・譽は、いずれもヨ乙類y〔oの上に点二つ〕の音である。従って、夜見国のyoとヨモのy〔oの上に点二つ〕とを関係づけるのは不適切である。ヨミノ国の古形は、ヨモツクニであるから、ヨミのミはミ乙類m〔iの上の点が二つ〕である方が蓋然性がある。ただし、祝詞式の、鎮火祭に、「與美津枚坂」とあるが、これは平安時代の転写を経ているので、そのまま信じがたい。」

また、こちらも別の記述の二行割注の中の記載になりますが、p.239「又世に十王経と云ものに、閻魔王国、自人間地去五百臾善那、名無佛世界、亦名預彌[ヨミ]国云々と云る、此経はもとより偽経と云中にも、此邦にて作れるものなり、預彌[ヨミ]国と云も、神典に依て作れる名なり、然るをかへりて、神典に豫美[ヨミ]と云る名は、此経より出たることかと、疑ふ人も有リなむかと思ヒて、今弁へおくなり」とあります。
*漢文の返り点などは記載していません。

国立国会図書館デジタルコレクションで『佛説地藏菩薩發心因縁十王經 1卷』((唐) 釋藏川 撰[他])がインターネット公開されています。14コマ目に、上記の記載を見ることができます。
国立国会図書館デジタルコレクション『佛説地藏菩薩發心因縁十王經 1卷』(2016/3/1現在)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2542700

甲類・乙類の漢字については、次の資料に一覧を見ることができます。
『万葉事始』(坂本信幸/編 和泉書院 1995.3)※中之島図書館所蔵資料
p.44に「特殊仮名遣表」があり、甲類、乙類の別に漢字がまとめられています。
「夜」が甲類、「豫・余・譽・與・預」が乙類となっています。
「美」「見」は甲類となっています。

『小田切秀雄全集 1 戦時下の仕事』(小田切秀雄/著 勉誠出版 2000.11)
p.242-243に『古事記伝』の黄泉国の説明をまとめた記述を見ることができますので、一部記載します。
「黄泉国は「よみのくに」とも「よもつくに」とも読むが、『祝詞式』などという本を見ると「よみつ」という言い方もある。しかし『古事記』での他の部分などに「よもつしこめ」などといわれていたり『日本書紀』という本でも「よもつひらさか」などと言われているので「よもつくに」と読むことにしよう。ただ「黄泉」とだけ書かれていたら「よみ」と読む。以上は「黄泉国」の読み方について考えて見たのだが、こんどはその意味を考えるとそれは死んだ人の行っている国という意味である。」

『本居宣長『古事記伝』を読む 1 講談社選書メチエ 461』(神野志隆光/著 講談社 2010.3)
p.94-97に黄泉国についての記載があり、「『古事記伝』には、黄泉=ヨミは「夜見」の意で、一つ火をともすとあるから「暗き処と見え」、「下方に在る国」(地下にある国)であって「死人の往て住国と意得[ココロウ]べし」というだけです」とあります。

『新・古事記伝 1 神代の巻』(中山千夏/現代語訳・解説 築地書館 1990.2)
p.85-87に「黄泉国[よもくに]」の現代語訳があり、黄泉国の注釈にp.85「「黄泉」は漢語で「黄」が土の色を表し、総じて地下の泉の意味で死者の国を表す。読みのヨモは和語。ヤミ(闇)と同源の言葉かという。」とあります。

『万葉ことば事典』(青木生子/監修 大和書房 2001.10)
p.415-416
「よみ(黄泉)」の項目に、p.415「記には死んだイザナミの霊魂と肉体がともに住まう暗黒の汚れた世界として描写されるが、そこに描かれた「黄泉国」が古代人の普遍的な他界観であったかどうかは不明。紀本書にはみえない。出雲風には「黄泉坂」「黄泉穴」の地名があり、これは海辺の洞窟をさす。漢語「黄泉」は「地下の泉」を原義とするが、日本古代のヨミは必ずしも地下に限定されず、(略)水平的に遠距離の世界をいう場合もある。」とあります。
※記:古事記 紀:日本書記 出雲風:出雲国風土記

『時代別国語大辞典 上代編』(上代語辞典編集委員会/編 三省堂 1990.1)
p.802
「よみ[黄泉・泉]」(この[ ]は原文のものです)の項目に、「よみ」が出てくる資料として次の説明があります。
※漢文の返り点は記載しておりません。

「「与美津枚坂[よみツヒラサカ]に至り坐して思ほし食さく」(祝詞鎮火祭)「遠つ国黄泉[よみ]の界[サカヒ]に」(万一八〇四)「生けりとも逢ふべくあれやししくしろ黄泉[よみ]に待たむと」(万一八〇九)「夢至此礒窟之辺者、必死、故俗人自古至今、号黄泉[よみ]之坂、黄泉[よみ]之穴也」(出雲風土記出雲郡)」「所塞磐石是謂泉門[よみド]塞之大神也」<泉門与美奈止尓[よみナトニ]>(神代紀上・私記乙本)」(最後の、「与美奈止尓」は小さく書かれています。)

参考とすべき事柄や補足的な解説などとして、「交替形としてヨモがある。上代の葬地は山坂・山上など山野に設けられることが多かった。後世も葬地・他界の意でヤマという語が多く用いられているが、ヨミはあるいは山[ヤマ]という語と関係があり、ア列音とオ列乙類音が交替して類義語を構成する一つの例ではないかと考える説もある。」と書かれています。また、「一方、死後の世界はネノクニ・シタツクニともいい、地下の国とも考えられていた。交替形にヨモがあり、木[キ]―木[コ]の交替の例から考えて、ミの仮名は乙類と考えられる。第四例の、ヨミノ坂は山のヨミの、ヨミノ穴は地下のヨミの入り口として考えられそうである。」とあります。

『時代別国語大辞典 上代編』の説明より、「黄泉」以外の表記となっている次の資料を確認しました。
『延喜式 上 訳注日本史料』(虎尾俊哉/編 集英社 2000.5)
「延喜式巻第八 神祇八 祝詞」のp.480-485「鎮火祭」を見ますと、その中に「與美津枚坂尓至坐弖所思食久」と書かれています。(尓、弖、久は小さく書かれています。)

神代紀の分については、
・『日本古典文学大系 67 日本書紀 上』(岩波書店 1967.3)
・『国史大系 [1] 日本書紀 前篇 新訂増補 普及版』(黒板勝美/編 吉川弘文館 1977.6)
・『国史大系 第1巻 日本書紀』(経済雑誌社 1897)
を確認してみましたが、「与美奈止尓」については記載が見当たりませんでした。

「與」の甲類・乙類の別については、先に挙げました『万葉事始』で記載したとおりです。

なお、母音交替に関して調べるには、
『古代日本語母音論:上代特殊仮名遣の再解釈 ひつじ研究叢書 言語編第4巻』(松本克己/著 ひつじ書房 1995.1)
といった資料があります。
記述としては少ないのですが、p.23に「黄泉」が載っています。


参考までに、次の資料の記載を紹介します。
『日本古代地名事典』(吉田茂樹/著 新人物往来社 2001.12)
p.236「よみのしま[夜見嶋] 『出雲風土記』意宇郡に「夜見の嶋」で初見し、鳥取県米子市から境港市へ伸びる弓ヶ浜(夜見ヶ浜)をいう。「ゆみのしま(弓の島)」の意で、古代では弓状の細長い洲島であったが、現在では砂地の半島になっている。」
(この[ ]は原文のものです。)

[事例作成日:2016年5月6日]
回答プロセス
(Answering process)
事前調査事項
(Preliminary research)
NDC
日本語  (810 8版)
参考資料
(Reference materials)
日本古典文学大系 1 岩波書店 1958.6 (63)
日本古典文学大系 67 岩波書店 1967.3 (94-95)
本居宣長全集 第9卷 本居/宣長∥[著] 筑摩書房 1968.7 (237-239,545-546)
万葉事始 坂本/信幸∥編 和泉書院 1995.3 (44)
小田切秀雄全集 1 小田切/秀雄∥著 勉誠出版 2000.11 (242-243)
本居宣長『古事記伝』を読む 1 神野志/隆光∥著 講談社 2010.3 (94-97)
新・古事記伝 1 中山/千夏∥現代語訳・解説 築地書館 1990.2 (85-87)
万葉ことば事典 青木/生子∥監修 大和書房 2001.10 (415-416)
時代別国語大辞典 上代編 上代語辞典編集委員会∥編 三省堂 1983 (802)
延喜式 上 虎尾/俊哉∥編 集英社 2000.5 (480-485)
国史大系 [1] 新訂増補 普及版 黒板/勝美∥編 吉川弘文館 1974
国史大系 第1巻 経済雑誌社 1897
古代日本語母音論 松本/克己∥著 ひつじ書房 1995.1 (23)
日本古代地名事典 吉田/茂樹∥著 新人物往来社 2001.12 (236)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2542700  (国立国会図書館デジタルコレクション『佛説地藏菩薩發心因縁十王經 1卷』(2016/3/1現在))
キーワード
(Keywords)
照会先
(Institution or person inquired for advice)
寄与者
(Contributor)
備考
(Notes)
調査種別
(Type of search)
書誌事項調査
内容種別
(Type of subject)
地名・地域,その他
質問者区分
(Category of questioner)
個人
登録番号
(Registration number)
1000193788解決/未解決
(Resolved / Unresolved)
未解決
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