レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013/12/13
- 登録日時
- 2015/09/25 13:19
- 更新日時
- 2015/11/16 14:53
- 管理番号
- 埼熊-2015-055
- 質問
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解決
土蔵の壁のL字型金具について、記述のある資料が見たい。
- 回答
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L字型金具の名称である〈おれくぎ〉〈おれかなもの〉〈和釘〉〈にほんくぎ〉〈とび〉〈とびこ〉をキーワードとして調査したところ、名称が確認できた資料は以下のとおりである。
『川越の蔵造り 文化財シリーズ no.3』(川越市教育委員会)
「蔵造りの名称」の図中に「折釘(おれくぎ)」あり。
『建築大辞典』(彰国社 1993)
p1196「どぞうづくり」 「折釘」についてなし。
p223「おれかなもの」土蔵に用いられる大折れ釘のこと。「おおおれくぎ」の項目はなし。
p223「おれくぎ」断面角形の和釘の一。
p224「おれくぎのねまき」の項に「戸前口に庇を付けたり、簓子(ささらこ)下見を付したりするために折れ釘を取り付けた場合は」とあり。
『建築の事典』(沖塩荘一郎〔ほか〕編集 朝倉書店 1990)
p552折れ釘の図あり。
役割について記述が見つかった資料は以下のとおり。
『大間々町の土蔵 大間々町誌「基礎資料」 9』(大間々町誌編さん室編 大間々町誌刊行委員会 1996)
p19「図1-9 江戸時代の土蔵壁の一般的な仕上げ方法」折れ釘の図あり。
p233「第三章左官職人 (二)中村富雄氏」「外壁によく見かける先端が直角に上に曲がった鉄釘は、「オレクギ(折れ釘)」といい、その根元周りの丸く膨らんだ部分は「マンジュウ(饅頭)」と呼称した。折れ釘は、工事中の足場の振れ止めにしたり、普段ははしごを吊るしておいたり、また樋を受ける金物の役割も果たした。」とあり。
『和洋漆喰物語 土蔵と洋館の修復現場から 伝技塾 第4回』(伝統技法研究会編 伝統技法研究会 2009)
p22「図-1土蔵の壁断面図」p23「図-2文庫蔵立面」「つぶ」及び「折れ釘」の図あり。
p40-41「司会 土蔵の壁には、漆喰を丸く盛り上げた「つぶ」と呼ばれる部材があって、芯に折れ釘が入っています。この「つぶ」と折れ釘には、なにか役目があるのでしょうか。 加藤 土蔵を修理するときの足場の控えになったと聞きましたが、川越の場合には化粧にもなっているのではないでしょうか。また、柱面から決まった長さの折れ釘を打つので、壁の厚さの定規にもなります。我々が土を八寸(二十四cm)付けるか一尺(三〇cm)付けるかは、最初に大工さんが取り付ける折れ釘の長さで決まります。」とあり。
◆インターネット情報
《川越市蔵造り資料館》(http://www.kawagoe.com/kzs/checkpoint.html 2015/09/18最終確認)
「蔵造りの建物の壁面には漆喰を半球形に盛り上げた部分に、鉤形に折れた太い釘が突き出たものを見ることができます。この太い釘が折釘で、漆喰の盛り上がりがツブです。ツブを伴う折釘は補修作業の際のハシゴの固定など、縄をかけるために使われます。これは折釘に荷重をかけた際に、壁とは別にツブをつけておくことでツブの損傷だけで本体の壁土に亀裂が入るのを防ぐようになっています。また、折釘は鉄製なので、錆びると湿気を呼び込むため、釘が露出する部分を減らし、錆による湿気を壁土内に入れないようになっています。ツブの伴わない折釘は庇や霧除、下見板など、建物本体に後からつけた付属設備を取り付けるためのもので、いずれも蔵造り建物の壁面は釘などが打てないため、あらかじめ壁の芯に折釘を打ち付けてから壁を仕上げます。」とあり。
- 回答プロセス
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◆埼玉資料(川越の蔵造り)を見る。
『川越の蔵造り 文化財シリーズ no.3』
「蔵造りの名称」の図中に「折釘(おれくぎ)」あり。使用する理由等は記述なし。
『川越の蔵造り 川越市指定文化財調査報告書』(川越市教育委員会 1983)
「典型的蔵造り町屋の各部名称」の図あり。「折釘」
「折釘」の役割についての記述なし
◆建築分野の辞典・図書を調べる。
以下の回答資料が確認できた。
『建築大辞典』
『建築の事典』
p552折れ釘の図あり。
索引〈土蔵造り〉、〈しっくい(漆喰)塗〉、〈蔵〉、〈折れ釘〉、〈和釘〉それぞれの項目の記述を確認するが、該当なし。
『和洋漆喰物語 土蔵と洋館の修復現場から 伝技塾 第4回』
『大間々町の土蔵 大間々町誌「基礎資料」9』
◆百科事典を確認する。
『日本大百科全書 17 とけ-にほんく』(小学館 1987)
p86「土蔵」「土蔵造」の項あるが、金具についてなし。参考文献に『蔵』(川添登編 文藝春秋 1980)があるが自館及び県内図書館に所蔵がないため確認できず。
◆インターネット情報を調べる。
《川越市蔵造り資料館》(http://www.kawagoe.com/kzs/checkpoint.html 2015/09/18最終確認)
【その他調査済み資料】
『国史大辞典』(吉川弘文館 1989-1990)
『日本国語大辞典』(日本国語大辞典第二版編集委員会編 小学館 2001)
『ビジュアル・ワイド江戸時代館』(大石学編 小学館 2002)
『事典しらべる江戸時代』(林英夫編 柏書房 2001)
『復元江戸生活図鑑』(笹間良彦著 柏書房 1995)
『徳川幕府と巨大都市江戸』(竹内誠編 東京堂出版 2003)
『木造伝統文化街並み形成事業報告書』(埼玉県 2005)
『日本建築史論集 1 日本建築の特質』(太田博太郎著 岩波書店 1983)
- 事前調査事項
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一説によると「トビ」または「トビコ」と呼ばれ、火災の際に屋根をとりはずすのに使用する。また、別の説では「折れ釘」と呼ばれ、補修の際に使用する、と調べた。
- NDC
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- 建築学 (52 9版)
- 参考資料
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- 『川越の蔵造り 文化財シリーズ no.3』(川越市教育委員会)
- 『建築大辞典』(彰国社 1993) , ISBN 4-395-10015-5
- 『建築の事典』(沖塩荘一郎編集 朝倉書店 1990) , ISBN 4-254-26614-6
- 『大間々町の土蔵 大間々町誌「基礎資料」 9』(大間々町誌編さん室編 大間々町誌刊行委員会 1996.3)
- 『和洋漆喰物語 土蔵と洋館の修復現場から 伝技塾 第4回』(伝統技法研究会編 伝統技法研究会 2009)
- 《川越市蔵造り資料館》(http://www.kawagoe.com/kzs/checkpoint.html 2015/09/18最終確認)
- キーワード
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- 折釘
- 大工道具
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000180791