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レファレンス事例詳細(Detail of reference example)

[転記用URL] http://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000177836
提供館
(Library)
埼玉県立久喜図書館 (2110009)管理番号
(Control number)
埼熊-2015-025
事例作成日
(Creation date)
2014/09/05登録日時
(Registration date)
2015年07月29日 13時10分更新日時
(Last update)
2015年10月02日 13時50分
質問
(Question)
『江戸の食文化』(原田信男篇 小学館 2014)p96に振売りについて、以下のような記述がある。
 「万治二年(1659)四月に出された町触には(中略)食品関係はほとんど鑑札を必要としなかった。鑑札の不要な品目は(中略)12品目であり、その品目を扱ってよいとされたのは50歳以上の者、15歳以下の者および身体障害者である。つまりは社会的弱者の救済的色彩の濃い措置だったことになる。」
時代劇では、元気な青年・中年が振売り(魚屋など)をしているシーンがあり、この記述と食い違っている。実際のところを調べてほしい。
回答
(Answer)
振売りの規程等について記述のあった次の資料を紹介した。
1 『東京市史稿 産業篇』の記述
『東京市史稿』は江戸時代の基本史料の記述をまとめたもの。
『東京市史稿 産業篇 3』(東京都編 東京都 1956)
 p345「浪人及農民ノ振売一銭売禁止」(慶長18年)特に浪人・農民に対する取り締まりだが、年齢、障害についての記述はない。
『東京市史稿 産業篇 5』(東京都編 東京都 1956)
 p510「振売業者録上」(明暦4年) 各町に品目別および六十代、十代、障害者の登録を命令する記述あり。
 p617「振売札新発及特殊営業税」(万治2年正月)
 『正宝事録』という資料から引用した記述あり。
 「従来ノ振売登録者以外ニ五十歳以上ノ老齢者、十五歳以下年少者及ビ不具者ニ振売札ヲ増発スルニ至リタルハ、去歳大火ノ後ヲウケテ社会的救済ノ必要ヨリ、老幼不具者ノ細商保護ヲ目的トセシ者ノ如シ。」「振売之もの五拾以上拾五已下并かたわもの、今度振売御札被下候間、唯今まで振売仕候もの共斗り(中略)書付上ケ可申候。家持札取候事又ハ新規ニ振売商企札取候もの堅く停止之事」とあり。
 『正宝事録』の他、『大成令巻69』、『御触書寛保集成36』、『徳川十五代史』、『厳有院殿御実紀巻17』、『日本商業志(遠藤芳樹著)』『武江年表』、『文政町方書上』からの引用があるが、いずれにも「魚」「肴」の語はみつからない(魚をはじめ一部の品目の取り扱いを禁止する記述はない)。
 p626「振売検査」(万治2年3月)
 p634「諸商売鑑札」 内容は「万治2年4月9日」付の触書
『東京市史稿 産業篇 7』(東京都編 東京都 1960)
 p302「振売商売人制限」(延宝七年)
 『正宝事録』『町觸』『撰要永久録』からの引用あり。いずれも振売商売人が増加していること、振売りの人数を改めること、新規参入する者を規制する内容が記されている。
2 辞書類の記述
『国史大辞典 12』(国史大辞典編集委員会編 吉川弘文館 1991)
 p350<振売り・立売り>
 「幕府は慶安元年(1648)に江戸市中の振売商人に振売札を工夫して札所持者にのみ営業を許可し、明暦の大火後の万治二年(1659)にも再度振売札を工夫して(万治札)、政策の徹底を図った。振売商人は年一~二両の札銭を課せられたが、老人・子供・障害者の振売は札銭を免除された」とあり。
 魚をはじめ一部の品目の取り扱いを禁止する記述はない。
『江戸時代用語考証事典』(池田正一郎著 新人物往来社 1984)
 p411<ふりうり(振売)>
「ものを肩ににない、また手に下げなどして呼びながら売り歩くこと。あきない。「五十歳以上、十五歳以下と肢体不具の者に限りこれを許可した。(中略)。振売札なしで振売すること発覚した場合は、本人は犯罪者、家主は過料十貫文とした」(万治2年正月令)。「振売札なしの時は、当人は三日さらし、その上三十日の牢舎。家主は三貫文の過料、五人組は一人につき一貫文の過料」(慶安元年二月)。」とあり。魚をはじめ一部の品目の取り扱いを禁止する記述はない。
3 『江戸の食文化』と同様の記述があった研究書
『日本の社会史 7 社会観と世界像』(朝尾直弘〔ほか〕編集 岩波書店 1987)
 p92「(ニ)万治札」「肴売など15種。前述のとおり、A(老人、子供、身体障害者で札持ちのもの)のみに許可される」
 表などでわかりやすく解説されている。
『日本の近世 9 都市の時代』(辻達也編集 中央公論社 1992)
 p275「老人・子どもや身体障害者の札持ちだけが許される業種(肴売・たばこ売・塩売・飴おこし売・下駄足駄売・味噌売・酢醤油売・豆腐こんにゃく売・籠ざる売など、合計十五種)」
『近世商人法制の研究』(隈崎渡著 芦書房 1973)
 「第ニ章 売買に関する法制」に『東京市史稿』に出ていなかった触書あり。
  p208「正保五年(慶安元年、1648年)二月二十八日附触書中の一条は、振売札(前記手札の系脈)を所持しない所謂無礼者に対する罰則を規定し」「万治二年巳亥(1659年)正月十九日の触書は一定年齢の老人または年少者或は不具者にこれを許可するものとし」「更に同年三月九日の法令(定)は翌十日から振売業者の調査を行うべき旨を予告し該当者の範囲種別を稍々詳細に示しており」
  p209「更に同年四月九日の法令にいたっては、一層詳細に規定しており」万治二年の正月から4月にかけて段階的に規定ができていったことがわかる。魚をはじめ一部の品目の取り扱いを禁止する記述は4月の触書が初出。
回答プロセス
(Answering process)
『国史大辞典』等の事典を確認し、参考文献を調査した。
『東京市史稿 産業編』の江戸時代の部分を〈振売り〉をキーワードに確認した。
 ※《東京都公文書館》『東京市史稿 産業篇』目次のページで「振売」をブラウザ検索した。
( http://www.soumu.metro.tokyo.jp/01soumu/archives/0601sangyo.htm  2014/09/04最終確認)
《Google books》を〈振売り & 制限〉等のキーワードで検索した。
事前調査事項
(Preliminary research)
NDC
日本史  (210 9版)
商業史.事情  (672 9版)
関東地方  (213 9版)
参考資料
(Reference materials)
『東京市史稿 産業篇 3』(東京都編 東京都 1956)
『東京市史稿 産業篇 5』(東京都編 東京都 1956)
『東京市史稿 産業篇 7』(東京都編 東京都 1960)
『国史大辞典 12』(国史大辞典編集委員会編 吉川弘文館 1991), ISBN 4-642-00512-9
『江戸時代用語考証事典』(池田正一郎著 新人物往来社 1984), ISBN 4-404-01211-X
『日本の社会史 7 社会観と世界像』(朝尾直弘編集 岩波書店 1987), ISBN 4-00-004027-8
『日本の近世 9 都市の時代』(辻達也編集 中央公論社 1992), ISBN 4-12-403029-0
『近世商人法制の研究』(隈崎渡著 芦書房 1973)
キーワード
(Keywords)
商業-日本-歴史-近世
照会先
(Institution or person inquired for advice)
寄与者
(Contributor)
備考
(Notes)
調査種別
(Type of search)
事実調査
内容種別
(Type of subject)
質問者区分
(Category of questioner)
個人
登録番号
(Registration number)
1000177836解決/未解決
(Resolved / Unresolved)
解決