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レファレンス事例詳細(Detail of reference example)

[転記用URL] http://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000116454
提供館
(Library)
京都市図書館 (2210023)管理番号
(Control number)
右中-郷土-55
事例作成日
(Creation date)
2012年12月21日登録日時
(Registration date)
2012年12月21日 18時26分更新日時
(Last update)
2012年12月28日 13時07分
質問
(Question)
懸魚(げぎょ)には火除けの願いがこめられているというのは本当か。また,東寺(教王護国寺)慶賀門の懸魚についても知りたい。
回答
(Answer)
懸魚とは,屋根の破風板につけて棟木や桁の木口を隠す,彫刻や透彫りの飾り板のことです。棟木や桁の木口を風雨から守るためにつけた板が装飾化したものと言われています。
【資料7】【資料8】によると,火に弱い木造寺院を火災から守るため,水に強い魚の飾りを屋根にほどこして,防火の願いを込めて火除けのまじないとしたのがはじまりとされています。
傷みやすい場所にあるため,日本にはあまり古いものは残っていません。残っている中では,鎌倉時代に作られたもの(例:峰[峯]定寺本堂厨子)が最も古いとされています。
懸魚は,取り付ける位置によって,拝(おがみ)懸魚・下降(くだり)懸魚と呼ばれます。中央にあるものを拝懸魚,左右の下側にあるものを下降懸魚(脇懸魚または桁隠(けたかくし)ともいう)と呼びます。その他に,唐破風(からはふ)につけられる懸魚を兎の毛通(うのけとおし)と呼んでいます。

また,形によっても呼び方があり,主に次の4種類に分けられています。
野菜のカブのような形をした蔐(かぶら)懸魚,蔐懸魚を三つ組み合わせた三花(みつばな)懸魚,猪目と呼ぶハート形のくりぬきが付いた猪目(いのめ)懸魚,ほぼ六角形の簡単な形をした梅鉢(うめばち)懸魚の4種類です。

東寺は,京都市南区にある東寺真言宗の総本山で,平安遷都の際に創建されました。慶賀門は,鎌倉時代前期に建立された,本瓦葺・三間一戸の八脚門で,重要文化財に指定されています。

慶賀門の懸魚は,俗に魚尾形(ぎょびがた)懸魚(異形懸魚)と呼ばれるもので,国内に類例は少なく,古い様式をとどめているとされています。その形について,【資料12】には,末端が魚尾形に二つに分かれて,両方に少しまきあがっているとあり,【資料6】には“魚の尾の形にみえないこともない”とあります。
【資料13】によると,東寺に残っている懸魚の内,特に慶賀門のものが古い様式であるのは,桃山時代の修理で,慶賀門に残っていた建設時の懸魚とまったく同一に新調したものと考えられているからのようです。

【資料1】~【資料8】【資料11】に,懸魚には火伏せの意味があることが書かれています。
慶賀門の懸魚については,【資料13】【資料14】に詳しい記述があります。

【資料13】,【資料15】に修復時の南妻拝懸魚と新調された懸魚の写真があります。
また,【資料12】には慶賀門側面の写真があり,懸魚の様子もわかります。
回答プロセス
(Answering process)
●懸魚について,百科事典などを調べる…【資料1】~【資料6】
【資料4】“懸魚の源流”
魚や龍に関する中国の民間伝承として,以下の話を紹介しています。
 ・魚は水と深い関係にあることから,村や家が火事にならないための火伏せの意味もある。
 ・建物の棟木は龍の胴体であり,龍(蛇)が魚の招きに応じた様子を表現したのが,胴体(棟木)の先端に懸けられた
  懸魚である。

【資料5】“懸魚 火伏せと招福の祈りと飾り”
 懸魚の源流は中国の雲南省といわれ,中国雲南省の奥地の民家では,両妻側の棟木下に魚の絵を描いたり,
 魚の形に切り抜いた板を取り付け,現地ではこれを「懸魚」というようです。
 日本への伝来時期は定かではなく,中世まで社寺建築のみに用いられていたとあります。

●社寺建築に関する資料より…【資料7】~【資料12】
【資料7】懸魚の分類ごとに詳しく書かれています。
p99 “魚尾形のものは現在東寺の諸門に見られるくらいだが,焼失前の四天王寺金堂にも同種のものがあって古式が伝承されていたらしいことを示していた”

【資料10】p101 “形が魚を懸けたようだとの連想から懸魚の名前があるのらしい”

【資料11】“語源についてはわかっていませんが,懸魚の主体の両側に装飾の付いたものを鰭と表現しており,水中動物を建物の妻側に掛けることで,魔除けか火難除けかの願いを込めて命名されたのかもしれません。”

●東寺に関する資料より…【資料13】~【資料15】
【資料13】p66 “懸魚の変遷”

【資料14】調査の結果,現存していた南妻の拝懸魚は,慶長の修理時に取り替えられたものと推定されています。
この南妻の懸魚の形はつくられた当初の形に倣ったものである可能性が高いとされ,欠失していた北妻の拝懸魚ならびに両妻の降懸魚は,南妻の懸魚の形に倣って復旧されたとあります。
事前調査事項
(Preliminary research)
NDC
日本の建築  (521 9版)
各宗  (188 9版)
衣住食の習俗  (383 9版)
参考資料
(Reference materials)
【資料1】『国史大辞典 5』(国史大辞典編集委員会/編 吉川弘文館 1985) p81~82
【資料2】『日本史大事典 2』(平凡社 1993) p1218
【資料3】『日本民俗大辞典 上』(福田 アジオ/[ほか]編 吉川弘文館 1999) p567
【資料4】『日本の生活環境文化大事典』(日本民俗建築学会/編 柏書房 2010) p441
【資料5】『写真でみる民家大事典』(日本民俗建築学会/編 柏書房 2005) p51
【資料6】『世界大百科事典 8 改訂新版』(平凡社 2007) p588
【資料7】『古建築の細部意匠』(近藤 豊/著 大河出版 1991) p97~100,図73①
【資料8】『お寺と神社その美を楽しむ方法』(柴田 謙介/著 河出書房新社 2010) p20,151
【資料9】『神社・寺院・茶室・民家違いがわかる!日本の建築』(宮元 健次/監修 PHP研究所 2010) p60
【資料10】『古建築入門講話』(川勝 政太郎/著 スズカケ出版部 1934) p101~106
【資料11】『現代実例社寺建築の細部意匠』(清水 稔次/著 朝日新聞出版サービス(制作) 2003) p17~18
【資料12】『京都古建築』(藤原 義一/著 桑名文星堂 1944) p207~209
【資料13】『東寺の建造物』(東寺(教王護国寺)宝物館 1997) p22,66~67
【資料14】『国宝重要文化財教王護国寺蓮花門・北大門・慶賀門・北総門修理工事報告書』(京都府教育庁指導部文化財保護課/編集 京都府教育委員会 1995) p36~38
【資料15】『国宝重要文化財教王護国寺蓮花門・北大門・慶賀門・北総門修理工事報告書 図版』(京都府教育庁指導部文化財保護課/編集 京都府教育委員会 1995) p42
キーワード
(Keywords)
懸魚     
社寺建築
古建築
東寺
慶賀門
火除け
火伏せ
照会先
(Institution or person inquired for advice)
寄与者
(Contributor)
備考
(Notes)
調査種別
(Type of search)
文献紹介
内容種別
(Type of subject)
郷土
質問者区分
(Category of questioner)
社会人
登録番号
(Registration number)
1000116454解決/未解決
(Resolved / Unresolved)
解決
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