傷痍軍人に関することであればどんな統計資料でもということですが、統計に関しましては現在の援護の状況についての文献以外はほとんど見つかりませんでした。ほとんどが傷痍軍人に対しての保護制度や法律に関しての文献でした。それらのなかでも傷痍軍人を取り巻く社会状況や生活に関連する内容ならびに統計が引用されている資料が数点ありましたので参考までに紹介します。
1.統計
・『福祉行政報告例 平成21年度版』(厚生労働省大臣官房統計情報部/編 厚生統計協会 2011.3)
平成21年度における都道府県・指定都市・中核市の社会福祉関係業務の実績についての福祉行政報告例を取りまとめたもの(『社会福祉行政業務報告』の改題,巻次を継承)。21年度を例にとれば、「戦傷病者特別援護」として以下の6表が掲載されています。
第1表:戦傷病者手帳交付台帳登録数(障害の種類と障害の程度に関する表で、「軍人」「軍属」「準軍属」別に分類)
第2表:戦傷病者手帳交付台帳登録数(都道府県別に障害の程度にそれぞれ分類)
第3表:戦傷病者等の療養の給付件数(入院ならびに入院外を特定病類と移動状況別に分類)
第4表:戦傷病者の療養患者数(各都道府県を入院、入院外別に分類)
第5表:戦傷病者の補装具支給件数、支給金額、修理件数及び修理金額(補装具別の種類別の表)
第6表:戦傷病者乗車券引換証受給者数(都道府県別に障害の程度別の表)
※この統計は、政府統計の総合窓口でも閲覧できます。
・『社会福祉・ボランティア統計データ集 2006年版』(日本能率協会総合研究所/編集 生活情報センター 2006.5)
179ページに「戦傷病者手帳交付台帳登録数」の平成7年度から平成16年度まで年度ごとの推移の表が掲載されています。出典は上記資料の継続前誌『社会福祉行政業務報告』です。
・『傷痍軍人職業再教育事業概要』(傷兵保護院 1939)
61ページに「傷痍軍人職業再教育実施状況(昭和14年5月末日現在)」(都道府県別)の表が掲載されています。
2.関連資料
・『軍事援護の世界 軍隊と地域社会』(郡司淳/著 同成社 2004.3)
近代日本の軍事援護についての通史であり、当時の社会状況を踏まえながら記述されています。例えば「癈兵院」収容者の家族の生活に関して「東京癈兵院概況書」の一部分を掲載されており、生計の逼迫についての記述があります(p.106-107)。
・『障害者はどう生きてきたか 戦前・戦後障害者運動史』(杉本章/著 現代書館 2008.12)
ごく短文ですが、「軍人優遇の保護・救済政策」(p.26-27)、「傷痍軍人の結婚斡旋」(p.27-29)という記述があります。また「身体障害者福祉法の制定」(p.43-45)という項目には「実は、政府が当初考えていたのは「傷痍者保護法」、つまり傷痍軍人に対する保護ということだった」との記述があり、法成立の過程が簡単に記述されています。
・「(調査)傷痍軍人援護の実情 身体障害者福祉法ではこうする」:『東洋経済新報』2472号(東洋経済新報社 1951.5.12)p.33-37(請求記号:P33/15)
昭和26年当時の傷痍軍人に対する援護の実情が記述されています。
上記のほかインターネット上で閲覧可能な傷痍軍人に対する援助についての論文があります。以下に4件紹介します。
※閲覧の際は、「本文を読む/探す」の項目の「CiNii 論文PDF - オープンアクセス」をクリックしてください。
・「戦前・戦中期における傷痍軍人援護政策に関する研究 職業保護対策の日韓比較」金蘭九/著:『九州看護福祉大学紀要』7(1)(九州看護福祉大学 2005.3)p.45-57
・「占領下日本の再軍備反対論と傷痍軍人問題 左派政党機関紙に見る白衣の傷痍軍人」植野真澄/著:『大原社会問題研究所雑誌』550-551(法政大学大原社会問題研究所 2004.9)p.1-16
・「身体障害者福祉法の制定過程 総則規程を中心に その1」矢嶋里絵/著:「人文学報」(東京都立大学)13(首都大学東京 1997.3)p.41-71
・「「白衣募金者」とは誰か 厚生省全国実態調査に見る傷痍軍人の戦後」植野真澄/著:「待兼山論叢. 日本学篇」 39(大阪大学2005.12) p.31-60
3.その他
上記資料のほか、軍事援護に関する規定や制度の当時の状況下で書かれた傷痍軍人の手記を集めた資料があります。調査には直接関連がないかも知れませんが、参考までに紹介します。
・『軍事援護事業参考資料』(神戸市社会部 1939)
昭和14年に神戸市社会部が刊行した資料で、第三篇に「傷痍軍人保護」に関する規定などが収録されています。
・『軍事援護制度の実際』(吉富滋/著 山海堂出版部 1938)
厚生事務官である著者が制度の内容や執行に関して記述した資料です。
・『傷痍軍人更生感話』(佐藤定勝/編著 モナス 1940)
昭和15年に刊行された日露戦争や上海・満州事変で負傷した傷痍軍人の方の手記を編集した資料。巻頭に傷痍軍人の方が働いている写真が掲載されています。
・「大日本傷痍軍人会大阪府支部報」1-5号(請求記号:P36/243)
刊行期間は、昭和14年11月から昭和15年3月です。
以上です。
なお、最後に当館に所蔵していない資料ですが、文献の題名から推測して参考になるかもしれないと思われる文献を2件紹介します。
・「「忘れられた戦傷病者」の生活報告(ルポルタージュ)」:「産業労働月報 」(産業労働調査会)7(2), p.31-34, 1953(国立国会図書館請求記号:Z366.05-Sa2)
・「「傷痍軍人」をめぐる研究状況と現在」植野真澄/著:「戦争責任研究」(日本の戦争責任資料センター)55(2007)p.64-70(国立国会図書館請求記号:Z8-B194)
※上記文献は国立国会図書館で所蔵しています。コピー依頼につきましては同館「複写サービス」を参照してください。