レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20110713
- 登録日時
- 2011/08/18 02:01
- 更新日時
- 2011/08/18 13:27
- 管理番号
- B2011口頭0713
- 質問
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解決
アスピリン(Aspirin)の溶解性(Solubility)を知りたい。
- 回答
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ご照会の事項について、下記のとおり回答します(【 】内は当館請求記号です)。
日化辞Web(http://nikkajiweb.jst.go.jp/nikkaji_web/pages/top.html)で検索すると、アスピリンの慣用名として、アセチルサリチル酸、Acetylsalicylic acidなどがあります。
アスピリン又は上記の別名について記載がありました資料(1)-(21)、データベース(22)、ウェブ情報(23)-(27)をご案内します。
(1)『化学大辞典. 1』(縮刷版 共立出版 1963.7(第34刷:1993.6) 【PA2-G24】)
「アセチルサリチル酸」はp.107に記載しており、性質の項目に「水に難溶:アルコールに易溶:エーテル、クロロホルムに可溶」とあります。
(2)『有機化合物辞典』(講談社 1985.11 【PA2-181】)
「アセチルサリチル酸」(p.28)に、「エタノール、アセトンに易溶、エーテル、クロロホルムに可溶、水に難溶」とあります。
(3)『15911の化学商品. 2011年版』(化学工業日報社 2011.1 【PA2-J51】)
「アスピリン」(p.1701)の性状として、「エタノール、アセトンに溶け易く、エーテルにやや溶け易く、水に溶けにくい」と記載しています。
(4)『日本薬局方. 第16改正』(厚生労働省 [2011] 【SD113-J8】)
「アスピリン」はpp.305-306に記載しており、「性状」の項目(p.305)に、「本品はエタノール(95)又はアセトンに溶けやすく、ジエチルエーテルにやや溶けやすく、水に溶けにくい。本品は水酸化ナトリウム試液又は炭酸ナトリウム試液に溶ける」とあります。
なお、日本薬局方は、厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/yakkyoku/)より全文を閲覧することができます。
(5)『日本薬局方解説書. 第15改正』(廣川書店 2006.6 【SD113-H14】)
「アスピリン」は第2巻のpp.C-99~C-104に記載しており、「性状」の項目(p.C-99)に、「本品はエタノール(95)又はアセトンに溶けやすく、ジエチルエーテルにやや溶けやすく、水に溶けにくい。本品は水酸化ナトリウム試液又は炭酸ナトリウム試液に溶ける」とあります。また、注(p.C-101)には、「本品1gは25℃で水300mLに溶ける。本品1.5gに対し、クエン酸ナトリウム3gを加えると、100mLの水に溶解することができる」、「本品は水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムなどアルカリ溶液に溶けるが、分解してアセチル基が脱離する」と記されています。
(6)『労働安全衛生法MSDS対象物質全データ』(改訂第2版 化学工業日報社 2007.3 【PA31-H198】)
「アセチルサリチル酸」はpp.51-53に掲載しており、「物理的及び化学的性質」の項目(p. 53)に、「96%エタノール9mlに1g溶ける。水に溶けにくい(0.25g/100ml、15℃)」とあります。
(7)『化学品安全管理データブック』(増補改訂第2版 化学工業日報社 2000.3 【PA31-G76】)
「アセチルサリチル酸」は第3巻のpp.4952-4953に掲載しており、「物理的及び化学的性質」の項目(p.4953)に、「96%エタノール9mlに1g溶ける。水に溶けにくい(0.25g/100ml、15℃)」とあります。
(8)『国際化学物質安全性カード(ICSC). 第4集』(第2集改訂版 化学工業日報社 1999.12 【PA31-E15】)
「アセチルサリチル酸」はpp.20-21に掲載しており、「物理的性質」の項目(p.21)に、「水への溶解度0.33g/100ml(25℃)」とあります。
なお、国際化学物質安全性カードは、国立医薬品食品衛生研究所によりインターネット上で提供されています。(詳細は、ウェブ情報(24)をご覧ください。)
(9)『CRC Handbook of Chemistry and Physics』(91st ed. CRC Press 【Z63-C694】)
「Physical Constants of Organic Compounds(有機化合物の物理的性質)」(pp.3-1~3-523)では、有機化合物の名称のアルファベット順に、溶解性などを掲載しています。
「Acetylsalicylic acid」はp.3-8に記載しており、溶解性の項目には、水、ジエチルエーテル、クロロホルムには可溶、エタノールには非常に可溶、ベンゼンには難溶といった内容の記述があります。
(10)『Landolt-Boernstein New Series』 (Springer 1961- 【M5-B1】)
「C9H8O4 Acetylsalicylsäure Aspirin」(III/5a p.493)の「Weitere Informationen(更なる情報)」に、溶解性:水(20℃)、1.37g/100g; エーテル(20℃)、5g/100g; ベンゼンにはほとんど溶けないといった内容の記述があります。
(11)『Handbook of aqueous solubility data』(2nd ed. CRC Press c2010 【PA2-B48】)
「1731.C9H8O4」(pp.569-570)に、様々な温度下でのアスピリンの溶解性のデータ(Moles/l、Grams/l)とその出典文献を掲載しています。データごとに出典文献の記述内容の評価(温度、溶質の純度、平衡時間と攪拌、分析、精度)も掲載しています。
(12)『Handbook of solubility data for pharmaceuticals』(CRC Press c2010 【SD61-B6】)
薬剤の溶解性について、各溶媒における様々な温度下でのデータを掲載する資料です。アスピリン(Acetylsalicylic Acid)の溶解性については、pp.72-73、pp78-79、p.81、p.86、p.92、pp.94-96、p.104、p.112、p.115、p.117、p.121、p.124、p.133、p.145、p.158、p.165、p.174、p.181、p.183、p.185、pp.192-195に、それぞれ出典文献と共に掲載しています。
(13)『United States Pharmacopeia, the National Formulary』(United States Pharmacopeial Convention 年刊 【Z63-C237】)
USP34(NF29) (Vol.2) 2011のp.1931に「Aspirin」を記載しており、水、アセトンなど、いくつかの溶媒に溶かした際の変化について記述しています。また、pp.1931-1944には、カプセルや錠剤など様々なアスピリン系薬剤について、分解などの物理的試験に関する記述があります。
(14)『European Pharmacopoeia』(Council of Europe 【Z63-C574】)
6 (Vol.2) 2008のpp.1103-1104に「Acetylsalicylic Acid」を記載しており、「CHARACTERS Solubikity(性質 溶解性)」の項に、水にわずかに溶ける。エタノール(96%)によく溶ける。といった内容の記述があります。また、物質の同定方法、試験方法の記述の中に、水やその他の溶媒に溶かした際の変化などについて記載があります。
(15)『The Merck index : an encyclopedia of chemicals, drugs, and biologicals』(14th ed Merck Research Laboratories 2006 【YU111-B618】)
「851. Aspirin」(pp.140-141)に、1gが、25°の水300ml、37°の水100ml、5mlのアルコール、17mlのクロロホルム、10-15mlのエーテルに溶ける。無水エーテルには溶けにくい。水で加熱するか、アルカリ性水溶液と炭酸塩に溶かすと分解される。アセチルサリチル酸の無機塩は水にとけるが、すぐに分解される。といった内容の記述があります。
(16)『Drugs : synonyms and properties』(2nd ed. Ashgate 2002 【SD2-B17】)
「511 Aspirin」(pp.42-43)、「4563 Aspirin」(pp.339-340)、「5919 Aspirin」(p.437)、「6300 Aspirin」(p.466)に、物性値などを掲載しています。溶解性については、水にわずかに溶ける(1 g /300ml at 25°、1 g /100 ml at 37°)、エタノールに溶ける(1 g /5 ml)、クロロホルムに溶ける(1g/17 ml)、ジエチルエーテルに溶ける(1g10 ml)といった内容の記述があります。
(17)『Clarke's analysis of drugs and poisons : in pharmaceuticals, body fluids and postmortem material』(3rd ed. Pharmaceutical Press 2004 【SD61-B2】)
「Aspirin」(pp.651-652)に、1(g)が水300(ml)、エタノール5(ml)、クロロホルム17(ml)、エーテル10-15(ml)に溶ける。酢酸とクエン酸溶液に溶ける。アルカリ性水溶液と炭酸塩で分解される。といった内容の記述があります。
(18)『Sittig's handbook of toxic and hazardous chemicals and carcinogens』(5th ed. William Andrew c2008 【SD2-B27】)
第1巻のpp.45-46に「Acetylsalicylic Acid」を掲載しており、Descriptionの項目(p.45)に、「Poor solubility in water = 0.3% @ 15℃.」とあります。
(19)『Veterinary drug handbook』(Donald C. Plumb 3rd ed. Distributed by Iowa State University Press c1999 【RB551-A8】)
pp.56-60に「Aspirin」を掲載しており、Chemistryの項目(pp.56-57)に、アスピリンは水に僅かに溶け、アルコールによく溶けるといった内容の記述があります。
(20)『The Dictionary of substances and their effects』(2nd ed. Royal Society of Chemistry c1999 【SD2-A38】)
第1巻のpp.48-50に「A28 Acetylsalicylic Acid」を掲載しており、物理的性質の項目(p.48)に、水:3.3g/l 25℃ 有機溶媒:クロロホルム、ジエチルエーテル、エタノールといった内容の記述があります。
(21)『Solubilities of organic compounds. A compilation of quantitative solubility data from the periodical literature』(3 ed. D. Van Nostrand 1941 【541.34-Se424(2)】)
様々な文献から得られた溶解性データを、物質ごとに取りまとめた資料です。
「Acetylsalicylic Acid(Aspirin)」はpp.630-631に掲載しています。「合成法によって決まるアセチルサリチル酸と水の混合物の溶解度と融点の曲線」(表)のほか、水、アルコール、ベンゼン、四塩化炭素への溶解性を記載しています。また、水とエチルエーテル、水とキシレン、水とクロロホルム、水とトルエンの混合物に対して、各層への溶解性を記載しています。
(22)Reaxys(当館契約データベース:館内限定)
「Substances and Properties」から構造式、名称、CAS番号などを入力して検索すると、物性値や利用例などを調べられます。
「Aspirin」の検索結果から「Physical Data」、「Solubility (MCS)」の順にクリックすると、溶解性に関する文献の温度、溶媒、書誌事項などが表示されます。
(23)GHS対応モデルラベル・モデルMSDS情報(http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/GHS_MSD_FND.aspx)
厚生労働省が提供しているデータベースです。名称、化学式、CAS番号などを入力して検索すると、製品安全データシートを閲覧できます。
「アスピリン」で検索して閲覧できるデータシートには、「溶解度:0.33g/100 mL(25℃)」とあります。
(24)国際化学物質安全性カード(ICSC)-日本語版-(http://www.nihs.go.jp/ICSC/)
国際化学物質安全性カード(ICSC)とは、IPCS(国際化学物質安全性計画)によって作成された、化学物質の健康や安全に関する情報をまとめたものです。各国語に翻訳されており、日本語版は国立医薬品食品衛生研究所(NIHS)が提供しています。
物質名(英日)、ICSC番号、CAS番号から検索できます。
「アスピリン」と入力して閲覧できる安全性カードでは、物理的性質の項目に、「水への溶解性:0.25 g/100 ml(15℃) (溶けにくい)」とあります。(http://www.nihs.go.jp/ICSC/icssj-c/icss0822c.html)
(25)化学物質総合情報提供システム(CHRIP)(http://www.safe.nite.go.jp/japan/db.html)
NITE化学物質管理センターが提供しているデータベースです。総合検索では、CAS番号、化審法官報公示整理番号(MITI番号)、EC番号(EINECS番号等)、物質名称から検索できます。
「アスピリン」で検索して閲覧できる情報には、「物理化学性状」の項目に、対水溶解度の値が1g/300ml、測定条件が25℃とあります。
(26)ESIS(European chemical Substances Information System)(http://esis.jrc.ec.europa.eu/)
欧州委員会が作成しているホームページです。化学物質に関する情報を提供しています。
IUCLID DSでは、EINECS番号とCAS番号から化学物質を検索でき、一般情報、物理化学的性質、環境動態・経路、生態毒性、毒性などをPDFファイルで閲覧できます。
[アスピリンの検索方法]
1. IUCLID DSをクリックします。
2. 「Select a range of CAS#」から「From CAS# 50-00-0 to 100-02-7」を選択します。
3. CAS#「50-78-2」(ID「0004」、EINECS#「200-064-1」、Substance Name「O-acetylsalicylic acid」)の「>view」をクリックすると、PDFファイルでアスピリンのIUCLID Dataset(http://esis.jrc.ec.europa.eu/doc/existing-chemicals/IUCLID/data_sheets/50782.pdf)が閲覧できます。
「2.6.1 Water Solubility」の項目で、水への溶解度について「3.3g/l at 20 degree C」、「3.33g/l at 25 degree C」など、複数の値を記述しています。
(27)ChemIDplus Lite(http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp)
米国国立医学図書館(United States National Library of Medicine:NLM)が提供しているデータベースです。検索ボックスに化学物質名またはCAS番号を入力して検索すると、Basic Information(基本情報)と様々なデータベース(PubMed、TOXLINEなど)へのリンクが表示されます。
検索ボックスに「aspirin」と入力した検索結果から、Basic InformationのPhysical Propertiesをクリックすると、Water Solubility(水への溶解度)について記述があります。
調査済資料
・『化学便覧. 基礎編 1』(改訂5版 丸善 2004.2 【PA2-H21】)
・『化学便覧. 基礎編 2』(改訂5版 丸善 2004.2 【PA2-H22】)
・『Dictionary of organic compounds』(Chapman and Hall 1996- 【PA2-A119】)
・『Dictionary of pharmacological agents』(1st ed. Chapman & Hall 1997 【SD2-A37】)
・『Dictionary of drugs : chemical data, structures, and bibliographies』(1st ed. Chapman and Hall 1990 【SD2-A21】)
・『Handbook of physical-chemical properties and environmental fate for organic chemicals』(CRC/Taylor & Francis 2006 【NA2-B10】)
データベース・インターネットの最終アクセス日は、2011年7月20日です。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 環式化合物の化学 (438)
- 薬学 (499)
- 参考資料
- キーワード
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- 溶解性
- 溶解度
- Solubility
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000090145