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レファレンス事例詳細(Detail of reference example)

[転記用URL] http://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000078591
提供館
(Library)
愛知芸術文化センター愛知県図書館 (2110019)管理番号
(Control number)
愛知県図-01042
事例作成日
(Creation date)
2005/1/26登録日時
(Registration date)
2011年02月21日 02時00分更新日時
(Last update)
2013年12月26日 11時41分
質問
(Question)
熊野合戦について知りたい。本当にあった合戦なのかどうかもわからない。
回答
(Answer)
『国史大辞典』(吉川弘文館)、『日本史大事典』(平凡社)、『日本歴史大辞典』(河出書房新社)等委各種日本史事典では立項されていません。また『和歌山県史 原始・古代』和歌山県、『和歌山県の歴史』山川出版社、『図説和歌山県の歴史』河出書房新社といった和歌山県の歴史に関するものにも「熊野合戦」という名詞は記述されていません。確認できた「熊野合戦」としては、以下の2つが見つかりました。

1.『平家物語』が巻四「源氏揃」の章末等(異本ごとに記述の章名、位置、内容が異なるが)に、治承4年、源行家が以仁王の令旨を奉じて諸国源氏の決起を促しに出立したことが発覚した後、行家が身を寄せていた熊野新宮(熊野速玉大社)に対して、熊野本宮(熊野本宮大社)が平家方として合戦に及び敗退した記事を載せ、この記事について「熊野合戦」の章名をたてています。                                 

2.佐渡説経人形の演目に「熊野合戦」があります。これは坂田金平を主人公とした金平物とよばれる演目のにあるもので、金平浄瑠璃正本の「頼義長久合戦公平生捕問答并四天王国めぐり」とほぼ内容を同じくする物で、源頼義と四天王(坂田金平(公平)・渡辺竹綱・碓氷定景・卜部季春)のはなしとして佐渡説教人形の演目として残っています。頼義が糺の権大納言広長との確執の末熊野へ配流された後、四天王以下の家臣の苦難と活躍の末に広長一統を討ってめでたしとなる架空の物語です。
回答プロセス
(Answering process)
1.について
 日本史の辞典等では「熊野合戦」立項されていないが、和歌山県関係の歴史書では、治承・寿永内乱期における熊野三山の内紛のことが記述されているので『史料綜覧』の綱文をあたってみたが「熊野合戦」という名詞は見られなかった。なお、『国書総目録』から『熊野軍記』という本があることが分かったが現物の確認はできず、『国書解題』『群書解題』にも採録がないため内容は分からない。
 そこで、改めて『平家物語』を参照してみると、語り本系として日本古典文学大系『平家物語』(底本「龍谷大学図書館本」覚一本系)は「四之巻」目録の「源氏揃」と「鼬之沙汰」の間に「熊野合戦」の章名を立てるが、注として「本文中には章段を立てない」とする。これについては同本が校合の対象とした『高野本平家物語』(東京大学国語研究室蔵)も同様の体裁をとる。ただしこれを底本とした小学館『完訳日本の古典 平家物語』は巻第四の目次に「熊野合戦」を立章しない。
 覚一本とは体系を異とする読み本系では『延慶本平家物語』巻四の「平家ノ使宮ノ御所に押寄事」の章の中段から熊野における新宮、本宮合戦についての記述があるが章段名はない。(本巻所蔵汲古書院刊『延慶本平家物語全注釈』は編集の便宜上「熊野合戦」の見出しを立てているが同社刊『校訂延慶本平家物語』はこの見出しをたてていない。)また、同じく読み本系で『平家物語』の異本とされる『源平盛衰記』(三弥井書店)の底本『内閣文庫蔵慶長古活字版全四十八冊』は巻第十三冒頭目録に「熊野新宮軍」を掲げる(ただしこの底本は本文中小見出しを立てない)。
 「合戦」の内容は本宮側が敗退したという結果以外、諸本でかなり異なり、特に主要人名、本宮、那智衆徒(熊野那智大社)の動向等において顕著である。こうした相違について高橋修は「別当湛増と熊野水軍-その政治的考察-」(『ヒストリア』146号1995.3)で「こうした食違いは、諸本が、確たる事実に立脚しているわけではなく、後の情勢の推移からそれぞれ予定調和的にこの内紛を説明しようとした結果であろう。ここでは、諸本の記述に一致している、熊野に以仁王令旨がいち早くもたらされ、それへの対応をめぐって内紛が起こったということだけを事実として確認しておけば十分である。」とし、上杉和彦は『源平の争乱』(『戦争の日本史6』吉川弘文館)で「一方、他の信頼できる史料から、治承四年段階での熊野では、田辺別当家の湛快の地位の継承をめぐって湛増と湛覚兄弟の争いが、時の別当の範智や新宮別当家の行命を巻き込む形で激しさを増していたことが明らかとされている。この動きの中で、やがて湛増は「反平氏方の人物」と断ぜられ、追討の対象とされていくのだが、以仁王の謀反が起きた段階では、湛増の政治的立場は、源氏方あるいは平氏方のように明確に色分けされるものではなく、その点が『平家物語』諸本の叙述の混乱の要因の一つとなっていたものと思われる。」とする。

2.について
 Googleで「熊野合戦」を検索してみると、佐渡観光協会のサイトに「佐渡の人形芝居には(略)「熊野合戦」「酒天童子」をはじめとする10曲近い演目があり、現在は新穂村にある広栄座だけが、昔ながらの唯一の伝統を守り伝えています。」とある。『岩波講座歌舞伎・文楽 7 浄瑠璃の誕生と古浄瑠璃』p264に佐渡の説教・文弥人形について書かれておりその中に「語り本リスト四十六本中、「角太夫節付」注記本は…嘉永三年(一八五〇)『熊野合戦』の計三作」とある。『日本の人形芝居』p326-331に説教人形があり、「熊野合戦」上演風景の写真や人形カシラの写真も出ている。以上の資料ともに、「熊野合戦」の内容は書かれていない。そこで「熊野合戦」について雑誌記事はないかとNDL、CiNiiの雑誌記事を検索するが該当する論文はなし。国文関係の論文をさがすということで国文学研究資料館の「国文学論文目録データベース」で検索すると松本孝三「佐渡の説経人形―金平物の語り本「熊野合戦」「浜松合戦」を中心に」『在地伝承の世界・東日本(講座日本の伝承文学)』 があることが判明。所蔵を確認し、これにより佐渡説教人形の演目「熊野合戦」の内容が判明した。
事前調査事項
(Preliminary research)
NDC
日本史  (210 9版)
近畿地方  (216 9版)
金融.銀行.信託  (338 9版)
参考資料
(Reference materials)
資料1:『国史大辞典』(吉川弘文館)
資料2:『日本史大事典』(平凡社)
資料3:『日本歴史大辞典』(河出書房新社)
資料4:『和歌山県史編さん委員会 編. 和歌山県史 原始・古代. 和歌山県, 1994.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002317484-00  (1109404750)
資料5:『小山靖憲 [ほか]著. 和歌山県の歴史. 山川出版社, 2004. (県史 ; 30)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007437170-00 , ISBN 4634323001 (1108544863)
資料6:図説日本の歴史 30. 河出書房新社, 1988.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001947617-00 , ISBN 4309611303 (1104095811)
資料7:日本古典文学大系 32. 岩波書店, 1977.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I000051790-00  (1101313882)
資料8:編者: 市古貞次. 高野本平家物語 3. 笠間書院, 1973. (笠間影印叢刊)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001257822-00  (1108200085)
資料9:延慶本注釈の会 編. 延慶本平家物語全注釈 第2末(巻4). 汲古書院, 2009.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010215107-00 , ISBN 9784762935336 (1109703777)
資料10:黒田彰, 松尾葦江 校注. 源平盛衰記 3. 三弥井書店, 1994. (中世の文学)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002391893-00 , ISBN 4838210213 (1106670135)
資料11:高橋修「別当湛増と熊野水軍-その政治的考察-」『ヒストリア』146号1995.3 (所蔵なし)
資料12:上杉和彦 著. 源平の争乱. 吉川弘文館, 2007. (戦争の日本史 ; 6)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008444058-00 , ISBN 9784642063166 (1109118294)
資料13:鳥越 文蔵/[ほか]編集. 岩波講座歌舞伎・文楽 第7巻. 岩波書店, 1998.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I000295222-00 , ISBN 4000107879 (1107568806)
資料14:永田衡吉 著. 日本の人形芝居. 錦正社, 1969.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001280162-00  (1100677077)
資料15:徳田 和夫/編 , 菊地 仁/編 , 錦 仁/編. 在地伝承の世界 東日本. 三弥井書店, 1999. (講座日本の伝承文学 ; 第7巻)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I000315929-00 , ISBN 4838230656 (1108630845)
キーワード
(Keywords)
熊野合戦
熊野三山
源平合戦
熊野神社
平家物語
佐渡
説経
人形
浄瑠璃
金平
公平
照会先
(Institution or person inquired for advice)
寄与者
(Contributor)
備考
(Notes)
調査種別
(Type of search)
内容種別
(Type of subject)
質問者区分
(Category of questioner)
登録番号
(Registration number)
1000078591解決/未解決
(Resolved / Unresolved)