レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2010/9/9
- 登録日時
- 2011/01/14 02:00
- 更新日時
- 2021/02/25 14:07
- 管理番号
- 児童-2010-04
- 質問
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鳥取の「一つとや」というわらべうた(手まり歌、資料1に掲載あり)の十番目の歌詞「遠く離れては母と子が鏡の光になかなおり」というものが、何の物語なのか知りたい。「松山鏡」だと思うが、資料4の「松山鏡」とは話が違うようだ。
- 回答
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資料1を確認すると、歌詞が一から十までありそれぞれ「桃太郎」や「金太郎」の話の歌詞になっている。問合せの十番目に歌われている物語は、鏡が出てきており「松山鏡」と思われる。
児童文学の事典である資料2や資料3によると、昔話の「松山鏡」には、いくつかの類話があることがわかる。
一つは、鏡を知らない登場人物が起こす勘違いを笑い話にしたもの。資料4にあるような話で、「坊主裁判」「尼裁判」などといわれている。これは全国各地で主に口承の昔話として採録されている。
もう一つは、越後の松山の話。ある男が京都の土産に妻のために鏡を求め、やがて病気になった妻は、娘に自分が死んだら鏡を見るようにと言って亡くなる。父親は後妻を迎えるが、娘は母恋しさに時々鏡をのぞいていたところ、父親が娘の行動を不審に思い問うが、娘の母へ寄せる想いを知り不憫に思う。そこへ後妻も入り、3人はともに慰めあう、という話。話によっては、継母が娘が自分にまじないをかけていると父親に訴えるが、最後には詫びを入れ、仲直りするというストーリーもある。
問合せのわらべうたは後者の話になる。
越後の話の「松山鏡」は、巌谷小波の御伽噺(明治30年)や世界童話大系刊行会の『世界童話大系』(大正13年、資料5)、『日本お伽集』(培風館 大正9年、資料6)等、明治大正期の児童書に掲載されている。資料1に「一つとや」の解説として、「特定の作家による創作と考えられる」とあるが、当時一般に本を通して流布している物語を取り上げたのではないかと思われる。
そのほか、越後系の「松山鏡」が載っているものとしては、資料7『日本の民話5 甲信越』(ぎょうせい 1979年)、資料8『日本お伽集 1』(東洋文庫 平凡社 1972年)などもある。
「松山鏡」については、資料2『現代児童文学辞典』(宝文館 1960年)と資料3『日本児童文学事典』(河出書房 1954年)に説明があり参考になる。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 声楽 (767 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】 鳥取のわらべ歌 / 酒井董美∥著 / 柳原書店 , 1985.4 ( 日本わらべ歌全集 20 上 ) <K/767/27/20-1>
- 【資料2】 現代児童文学辞典 / 古谷綱武∥等編 / 宝文館 , 1955 <RK/909/76/55>
- 【資料3】 日本児童文学事典 / 長谷川誠一∥責任編集 / 河出書房 , 1954 <K/910/95/54>
- 【資料4】 おもしろ落語図書館 その1 / 三遊亭円窓∥著 / 大日本図書 , 1996.3 <913/3251/1>
- 【資料5】 日本篇 / 松村武雄∥著 / 世界童話大系刊行会 , 1924 ( 世界童話大系 第16巻 ) <908/80/16>
- 【資料6】 日本お伽噺集 / 巌谷小波∥著 / アルス , 1927 ( 日本児童文庫 第10 ) <080/14/10>
- 【資料7】 甲信越 : 山梨・長野・新潟 / 小沢俊夫∥編 / ぎょうせい , 1980 ( 日本の民話 第5 ) <K/388.1/141/5>
- 【資料8】 日本お伽集 : 神話・伝説・童話 第1 / 森林太郎∥等撰 / 平凡社 , 1973 ( 東洋文庫 ) <K/918/2/1>
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000076460