"絵と音楽" に関連する資料を探し、調べるには?
1.探すためのキーワード
当館OPACの場合
「絵と関係があると言われる音楽作品名(ex:「死の島(Toteinsel)」「死の舞踏(Totentanz)」「展覧会の絵」
「画家マティス」「ボッティチェッリの三枚の絵」「海」「伝説」「喜びの島」)」
「絵に影響を与えたと言われる音楽作品名(ex:「スクリアビンの「エクスタシーの詩」に題す」)
*「展覧会の絵」等、絵からの影響がはっきりしている有名作品の場合は、そのタイトルを検索語にできます。
*そうした検索ができない音楽作品の場合は、絵と関係がある作品を書いたと言われる作曲家の名前で検索し、
現資料に当たるか、事典類等の資料で、作曲者や作品を特定してから検索する必要があります。
(2.調べるためのキーワード参照)
◆当館OPACで図像を探す場合は以下の件名検索を用います。
件名 Pictorial works (又は 図集) フレーズ検索
*2015.3.14現在 280件ヒット(2015.3.14現在)
中でも、音楽家の図像等を含む図集を探す場合は、以下のような件名を用います。
Handel, George Frideric, 1685-1759-Pictorial works(ヘンデル, ジョージ フレデリック, 1685-1759-図集)
Mozart, Wolfgang Amadeus, 1756-1791-Pictorial works(モーツァルト, ウォルフガング アマデウス, 1756-1791-図集)
Composers-Germany-Pictorial works(作曲家-ドイツ-図集)
・ヘンデルの図集の件名も利用している下記のレファレンス事例もご参照をお願いします。
ネットで見かけるヘンデルの絵の写真中に写っている楽譜は何の楽譜か?(国音2014-0020)
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000166873 2.調べるためのキーワード
「絵と関係がある作品を書いたと言われる作曲者名」「絵と関係があると言われる音楽作品名」
「絵に影響を与えたと思われる作曲者名」「絵に影響を与えと思われる音楽作品名」
「音楽に関係があると思われる絵画名」
◆音楽作品になった(美術の)題材を調べるには、以下の資料が役に立ちます。
"Music inspired by art : a guide to recordings / Gary Evans " (参考資料1参照)
同上書の解説記事を当館コミュニケーション誌『ぱるらんど』に掲載したことがあります。
http://www.lib.kunitachi.ac.jp/pub/parlando/2008/Parlando261-4.pdf◆音楽作品の題材として、聖書やギリシア神話の神(神々)、登場者(天使、悪魔、人)、
場面等が取り上げられることがよくあります。必ずしも、作品化のときに影響があったも
のだけではないので、直接的に音楽作品になった美術の題材とはいえませんが、聖書
やギリシア神話の美術作品(特に絵画)は、音楽作品の解釈や演奏に際してのイメージ
作りのおおきな助けとなります。多くの画集、美術事典類とともに、次のような図書も又、
音楽解釈、演奏の際に大変参考になる資料と言えます。『「聖書」と「神話」の象徴図鑑
: オールカラー / 岡田温司監修』 (ナツメ社)、『不朽の名画を読み解く/宮下規久朗編
著』(ナツメ社)、『西洋絵画の主題物語 : カラー版 聖書編/諸川春樹監修』(美術出版
社)、『西洋絵画の主題物語 : カラー版 神話編/ 諸川春樹監修』(美術出版社)、『西
洋名画の読み方. 3, 聖書と神話の名画188点 / パトリック・デ・リンク著 ;内藤憲吾訳 ;
神原正明監修』(創元社)、又、『ムーサの贈り物/喜多尾道冬』4冊(音楽之友社)は、
主にCDジャケットに使用された絵をたどって、絵と音楽の関係を明らかにしています。
国立音楽大学附属図書館所蔵キリスト教美術資料(国音2014-0003S)もご参照ください。
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=man_view&id=2000022909 "Ave Maria"と美術作品(特に絵)は大変深い関係があります。
Ave Maria(アヴェ・マリア)(国音2013-0006S)もご参照ください。
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=man_view&id=2000022503 *特に、関連ファイル「Ave Mariaの世界2014追記版」中に“Ave Maria”と関係の深い名画 他
を収載しています。
死の舞踏(音楽資料を中心に)(国音2011-0077S)もご参照ください。
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=man_view&id=2000019445 ◆仏教美術(特に「曼荼羅」等)は、日本の音楽(特に声明等)と深い関係があります。
国立音楽大学附属図書館所蔵仏教及び密教資料(国音2014-0002S)もご参照ください。
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=man_view&id=2000022907 当館OPAC の 簡易検索をすると 2015.3.14現在 49件のヒットが見られ、
和書(「図典」「図解」類他)や楽譜、録音資料でタイトル中に「曼荼羅」を含むものが
ヒットしています。(楽譜、録音資料からは、「曼荼羅」を主要テーマにした作品のある
ことが分かります。)
◆音楽教科書の教師用指導書の中に、絵と音楽に関連した記述が掲載される可能性が
高いが、収載例を探すには、OPAC検索だけでは難しく、最終的には現資料によって
確認する必要があります。以下に一例のみ挙げます。
・「組曲 「展覧会の絵」から」 『中学音楽 : 音楽のおくりもの : 教師用指導書. 2・3上 /
教育出版株式会社編集局編』 p46-49 (参考資料2参照)
[[絵画と音楽とのかかわり]との傍注があります。p48-49にガルトマンの絵画も収載
されています。][必読文献を挙げている、後述、◆Mussorgsky:Kartinki s vystavki
(Pictures at an exhibition) ムソルグスキー:展覧会の絵 をご参照ください。]
○「絵と音楽」について多少調査した感想を言うと、有名作品について、作曲者が有名な
絵にインスピレーションを得たという明確な記述を発見するのは、むしろ稀で、多くの
場合、1対1の直接的な影響関係を指摘する記述に辿りつくのは、至難の業と感じています。
(「絵と音楽」の関係があったと通説のように言われる作品についても、学術文献とし
て責任もった記述にヒットする例は珍しく、せっかくあっても、推量とも疑問ともつかな
い?のついているものもあり、異論がある場合もあります。)
特に、影響を受けた、インスピレーションを得た、霊感を受けた、触発された等の言葉
を使う文献、情報については、"Music inspired by art : a guide to recordings / Gary
Evans "に記載がない限り、慎重を極めた調査を行う必要があると思われます。
◆Debussy:La mer(ドビュッシー:海)には、次の文献が役立つ可能性があります。
・ "Debussy, La mer / Simon Trezise." Cambridge University Press (参考資料3参照)
・『ドビュッシー、音楽と美術 : 印象派と象徴派のあいだで 』(日本経済新聞社)p61等 (参考資料4参照)
・沼野雄司「C. ドビュッシーの《海》研究序説 : 第1曲を中心に」 東京音楽大学
『研究紀要』 23, 25-47, 1999-12-20
*ただし、いずれも葛飾北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖波裏」との関係についての
記述は、極めて慎重に読む必要があります。〔絵を見て、インスピレーションを得た等
の情報のあることは承知していますが、下記に示すような事情があるので、あくまで
大学図書館の行うレファレンス調査としての場合は、学術文献等を慎重に読む必要が
あるという意味です。〕
*ドビュッシーの1905年版の楽譜表紙が作曲者のたっての希望により、葛飾北斎『冨嶽
三十六景 神奈川沖波裏」を使用しているという事情があるにせよ、作曲者自身の文章
から、「神奈川沖波裏」に触発されたという記述が提示されない限りは、厳密な調査の場
合は、問題が生じる可能性もあります。
*ちなみに、 "Music inspired by art : a guide to recordings / Gary Evans "には、葛飾
北斎 「冨嶽三十六景 神奈川沖波裏」の記載はありません。
◆Debussy:La mer(ドビュッシー:海)にについては、以下もご覧ください。
Debussy:La Mer(ドビュッシー:海)は、葛飾北斎の木版画「冨嶽三十六景-
神奈川沖波裏」から曲想を得たか?(国音2013-0010)
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000132429 ◆Debussy:Isle joyeuse(ドビュッシー:喜びの島) は、以下をご覧ください。
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000029652◆Liszt:Légendes(リスト:伝説)については、以下のご参照をお願いします。
Liszt, Franz:Légendes(リスト, フランツ:伝説)について調べるには?(国音2012-0005S)
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=man_view&id=2000023332 ◆モーツァルト新全集には、以下の巻があります。
Sr.10 Werkgruppe 32 イコノグラフィー
Mozart und seine Welt in zeitgenossischen Bildern.
(同時代の絵画の中のモーツァルトとその世界)
◆Mussorgsky:Kartinki s vystavki(Pictures at an exhibition)
ムソルグスキー:展覧会の絵 は 以下が役立つ可能性があります。
・『展覧会の絵とフィガロの結婚』
http://www.lib.kunitachi.ac.jp/tenji/2009/tenji0904.pdf 2009年度、国立音楽大学基礎ゼミコンサート参考資料展パンフレット
として、作成したものですが、当時、当館で調べられる「展覧会の絵」
関連資料の主なものを展示し、簡単な紹介文を載せています。
パンフレット中のT14、T15は調査の上からは、是非、読んでいただき
たいポイントを挙げています。特にT15は必読文献です。
・"Music inspired by art : a guide to recordings / Gary Evans "にも
Gartoman, Victor Aleksandrovichの項に、Musorgsky, Mondest
Petrovich. Pictures at Exhibition.の記述があります。
・調べ方マニュアル「展覧会の絵」(国音2011-0079S)もご参照ください。
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=man_view&id=2000019520 ◆R.Schumann:Dichterliebe(シューマン:詩人の恋) 第6曲:Im Rhein, im heiligen Strome
(神聖なラインの流れに) には、ケルン大聖堂の聖像画(聖母マリア)が、 歌われています。こ
れは、ハイネの詩に基づくものですが、主題材とは言えないまでも、この聖母マリアの聖像画
は、詩と音楽に非常に深く、重要な意味を与えており、作品の素材(題材)としても見逃せない
ものです。
ちなみに、 "Music inspired by art : a guide to recordings / Gary Evans "には、この件につ
いての記載はありません。理由は、直接的なテーマでもなく、 美術-詩-音楽という間接経路を
経ての音楽作品化のためと推測されます。
◆図版の豊富な洋書のシリーズとして、以下のものがあります。
*The Illustrated lives of the greate composers
Gustav Mahler, Gilbert & Sullivan, Villa-Lobos, Wagner, Tchaikovsky,
Stravinsky, Britten, Prokofiev, Purcell, Holst, Vaughan Williams, Debussy,
Sir Arthur Bliss, Elgar etc
*Illustrated Calderbook
Prokofiev,Tchaikovsky, Stravinsky, Mozart, Händel, Bruckner etc
(2013.10.8現在)
◆音楽ガイド(入門書)の中には、絵画等大変美しい図版を多数収載し、音楽史等を解説する
図書があります。その筆頭として以下を挙げます。
" The enjoyment of music " W. W. Norton (参考資料5参照)
◆日本語の資料で、絵画等大変美しい図版を多数収載し、音楽や譜例等を解説する
大変分かり易い参考図書(図鑑)があります。レファレンスツールとしても大変有効です。
特に、古い楽譜類の読み方のワンポイント・アドヴァイスを大変重宝に利用しています。
『世界の音楽大図鑑』 (参考資料6参照)
*なお、この図書は参考図書室、分類番号:X-051〔音楽図版、音楽史年表〕の棚に排架しております。
その付近には、数々の美しい音楽図版がありますので、ご参照をお願いします。
◆当館は、2014年12月~2015年1月にかけて以下の特別展示を行いましたが、その中には、
楽譜そのものが美しい図形でもあるものや美しい表紙絵やデザイン、挿絵等をもつものも多く含まれて
いました。特に、『伝真言院両界曼荼羅 : 教王護国寺蔵』(参考資料7参照)の展示の前では、
「曼荼羅そのものが音楽」のよう、という感想がきかれたのが印象的でした。
美しい手稿の世界
http://www.lib.kunitachi.ac.jp/tenji/2014/tenji1412.pdf