レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022/07/05
- 登録日時
- 2022/08/02 00:30
- 更新日時
- 2022/08/18 17:55
- 管理番号
- 12307136
- 質問
-
未解決
(1)古活字版源氏物語の翻刻を探している。
国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている①慶長年間の古活字版の翻刻を探している。
ない場合は②元和9年の古活字版でも構わない。
① [源氏物語] 54巻【国立国会図書館請求記号:WA7-279】
国立国会図書館デジタルコレクションURL:https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/8943312
② [源氏物語] 54巻【国立国会図書館請求記号:WA7-275】
国立国会図書館デジタルコレクションURL:https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2610583
(2)『源氏物語大成 巻7 (研究・資料篇)』【国立国会図書館請求記号:913.36-I222g3】収録の「源氏釋 前田家本」に引用されている源氏物語本文は、古活字版源氏物語の本文に相当するのか。
- 回答
-
【 】内は国立国会図書館請求記号、請求記号末尾に☆を付した資料は国立国会図書館デジタルコレクションのインターネット公開資料、◎を付した資料は国立国会図書館内/図書館・個人送信資料です。
(1)
ご指定の古活字版①【WA7-279】☆、②【WA7-275】☆を底本とする翻刻は見当たりませんでしたが、資料1の翻刻に古活字版を底本とする旨の記載がありましたので、参考としてお知らせします。
資料1
与謝野寛 等編『日本古典全集 源氏物語 1』日本古典全集刊行会, 大正15【550-4イ】☆
* 「源氏物語 解題」(本文とは別建てのpp.1-8)に、底本として編者の正宗敦夫と京都帝国大学所蔵の木活字版を使用したこと、仮に「元和木活字本」いう等の記載があります(p.5)。また、『国民文庫』、『校注日本文学大系』の底本は「首書源氏物語」ということです(p.6)。
* 川瀬一馬 著『古活字版之研究 上巻 増補版』【022.3-Ka932k-n】◎のp.513に正宗敦夫所蔵本について「元和九年刊本に據って寛永中に飜印せられた」との記載があります。
(2)
「源氏釈」所引の源氏物語本文については、抄出したもの、青表紙本以前の本文を伝存する、別本のもの(資料2~4ほか)とされるのに対し、古活字版の源氏物語本文は青表紙本系とされていること(資料5~7ほか)から、「古活字版源氏物語の本文に相当する」とはいえないようです。
網羅的な調査、本文を精読しての調査は、当館のレファレンスサービスの範囲を超えるものですのでお受けできません。詳細は利用者ご自身でご確認ください。
資料2
伊井春樹 編『源氏物語注釈書・享受史事典』東京堂出版, 2001.9【KG57-G5】
* 「源氏釈」の項(pp.162-164)に「注記に必要な本文を引用するほか、その前後の物語場面をダイジェスト化して示す」(p.162)との記載があります。
資料3
渋谷 栄一「平安末期における「源氏物語」の抄出書写--国宝『源氏物語絵巻』絵詞と藤原伊行『源氏釈』抄出本文を中心として」(『日本文學論究』66 2007.3 pp.73-81【Z13-952】)
* 藤原定家校訂の青表紙本より古い本文を伝存するものとして「源氏釈」の抄出本文が挙げられています(p.73)。
資料4
田中 隆昭「中世の源氏物語注釈--『源氏釈』『奥入』から『河海抄』まで」(『國文學』44(5) (通号640) 1999.4 pp.10-17【Z13-334】)
* 「伊井春樹氏のいうように(中略)『源氏釈』のあげる物語本文は別本源氏物語のそれであるといってよいであろう」(p.11)との記載があります。紹介されている伊井氏の論文「源氏釈の形態」を収録する『源氏物語と和歌研究と資料』【KG59-48】、『源氏物語注釈史の研究 : 室町前期』【KG58-60】は、いずれも現在デジタル化作業中のため利用できません。そのため、調査できませんでした。
* 「別本」は、「池田亀鑑が『校異源氏物語』において用いて一般的になった呼称で、河内本及び青表紙本のどちらでもない本をいう」ということです(『源氏物語事典』【913.3603-O411g】◎ p.449)。
資料5
増田繁夫, 鈴木日出男, 伊井春樹 編『源氏物語研究集成 第13巻 (源氏物語の本文)』風間書房, 2000.5【KG59-G91】
* 伊井春樹「伝嵯峨本源氏物語の本文」(pp.353-403)に「当然のことながら伝嵯峨本や古活字本は青表紙本と考えられる」(pp.356-357)、伝嵯峨本について「大半の五十帖は青表紙本と判断される」(p.400)等の記載があります。
資料6
『国立国会図書館月報』
* 2011年11月号(通巻608号)のpp.6-7に『[源氏物語] 54巻』【WA7-275】(ご質問資料②)の貴重書指定に関する記事があり、【WA7-275】は元和9年に刊行されたもので、本文が青表紙本系であること、安田善次郎が所蔵していたこと等が紹介されています。
* 2013年9月号(通巻630号)のp.7に『[源氏物語] 54巻』【WA7-279】(ご質問資料①)の貴重書指定に関する記事があり、「伝嵯峨本」の通称があること、安田文庫旧蔵本であること等が紹介されています。
* 国立国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開しています。
2011年 (11月) (608):https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3192136
2013年 (9月) (630):https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/8301274
資料7
伊井春樹 監修, 伊藤鉄也 編『講座源氏物語研究 第7巻 (源氏物語の本文)』おうふう, 2008.2【KG59-J11】
* 上野英子「近世の源氏物語本文-古活字版源氏物語を中心に―」(pp.139-155)に「古活字諸本の底本はやはり青表紙」(p.153)等の記載があります。
〔主な調査済み資料・ウェブサイト〕
日本古典籍総合目録データベース http://base1.nijl.ac.jp/~tkoten/
* 源氏物語の「著作詳細」(http://dbrec.nijl.ac.jp/KTG_W_2357)で諸本の所在や活字翻刻等について確認できます。
新日本古典籍総合データベース https://kotenseki.nijl.ac.jp/
* 一部の資料は画像とあわせてテキスト本文の閲覧が可能ですが、源氏物語の古活字本で該当するものは見当たりませんでした。
(例)国文学研究資料館所蔵の『源氏物語』(同館請求記号:サ4-26-1~54)の本文画像のあるページ(例えばhttps://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/200003803/viewer/2)で「テキストを表示」のチェックボックスにチェックを入れると、画像の箇所のテキストデータが表示されます。
国文学論文目録データベース https://base1.nijl.ac.jp/~rombun/
* 「より詳細な条件で探す」画面の「翻刻・複製」欄に「源氏物語」、「論文表題」に「〈翻〉」と入力して検索することで関連の翻刻を探すことができます。
日本古典文学大辞典編集委員会 編集『日本古典文学大辞典 第1巻 (あーかほ)』岩波書店, 1983.10【KG2-70】
* 「源氏釈」(pp.403-404)、「源氏物語」(pp.406-437)の見出しがあり、源氏物語については「近代の研究・翻刻」の項(pp.435-437)で翻刻の一部とその底本が紹介されています。
塚本哲三 編『源氏物語 1』有朋堂書店, 1932【913.36-Mu25aウ】☆
* 「緒言」(本文とは別建てのpp.1-5)に、首書源氏物語を底本とするとの記載があります(p.3)。
紫式部 著, 池田亀鑑 校註『源氏物語 第1-2 (日本古典全書)』朝日新聞社, 昭和21-24【913.36-I32ウ】
* 第1の「凡例」(pp.145-148)に、本文は「大島雅太郎氏藏の靑表紙本に依り」との記載があります(p.145)。
池田亀鑑 編『源氏物語大成 巻1 (校異篇 [第1])』中央公論社, 1953【913.36-I222g3】◎
* 「校異源氏物語凡例」(本文とは別建てのpp.1-19)に、写本の中から校異に使用する本を選択し(p.1)、更にその中から底本を選んだ(p.5)等の記載があります。
紫式部 著, 竹下直之 校訂『源氏物語 第1』いてふ本刊行会, 1953【913.36-g-T】
* 「解題」(本文とは別建てのpp.1-7)に「いてふ本も亦、このいわゆる湖月抄本を底本としたもの」(p.7)とあります。
『日本文学大系 : 校註 第4巻 新訂版』風間書房, 1955【918-N684-k(t)】◎
* 「例言」(p.1)に「本文は首書源氏物語をもととして」との記載があります。
紫式部 著, 山岸徳平 校注『源氏物語 第1 (岩波文庫)』岩波書店, 1965【913.36-g-Y】
* 「凡例」(pp.3-4)に「本書は、三条西実隆筆になる青表紙証本(宮内庁書陵部蔵)を底本とした」(p.3)とあります。
佐竹昭広 [ほか]編『新日本古典文学大系 19』岩波書店, 1993.1【KH2-E3】
* 「凡例」(pp.iii-vi)に飛鳥井雅康筆本53冊と浮舟巻については明融本を底本として用いるとの記載があります(p.iii)。
『新編日本古典文学全集 20』小学館, 1994.3【KH2-E9】
* 「凡例」(pp.9-11)に「伝定家筆本・伝明融筆臨摸本・飛鳥井雅康筆本(古代学協会所蔵、通称「大島本」)等を底本とし」(p.9)とあります。
伊井春樹 編『本文研究 : 考証・情報・資料 第3集』和泉書院, 2000.8【KG12-G17】
* 大谷晋也「本文データベースの新しい基準点―『CD-ROM 角川古典大観 源氏物語』―」(pp.119-154)に、『CD-ROM 角川古典大観 源氏物語』に、大島本、陽明文庫本、保坂本、尾州家河内本の4本の写本の翻刻を収録しているとの記載があります(p.122)。
米国議会図書館蔵『源氏物語』翻字本文 https://mmsrv.ninjal.ac.jp/LCgenji/
貴重資料(九大コレクション):源氏物語 古活字版 https://guides.lib.kyushu-u.ac.jp/c.php?g=774839&p=5560033
デジタル源氏物語 https://genji.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/
正宗文庫調査斑「正宗文庫目録(五十音順、典籍編)」(『調査研究報告』(29) 2008 pp.215-465【Z13-2772】)
* 正宗敦夫収集資料の目録です。木活字版の源氏物語は目録p.284に1593aとあるのが確認できます。
* 「正宗文庫目録」は、国文学研究資料館学術情報リポジトリで閲覧可能です。
正宗文庫目録(経緯、概要、凡例):http://doi.org/10.24619/00001479
正宗文庫目録((あ)~(こ)):http://doi.org/10.24619/00001480
田村 隆「寛永古活字版『源氏物語』一斑(2)鶴見大学図書館蔵本をめぐって」(『語文研究』(110) 2010.12 pp.41-49【Z13-176】)
* 寛永版古活字版であっても、一部の丁が九州大学本と同一のものがあることが紹介されています。
* 九大コレクションで全文の閲覧が可能です。
http://hdl.handle.net/2324/25248
清水婦久子 著『源氏物語版本の研究』和泉書院, 2003.3【KG59-H31】
渋谷 栄一「源氏釈所引「源氏物語」本文について」(『中古文学』(通号 34) 1984.10 pp.24-34【Z13-1340】◎)
松原 志伸「『源氏釈』私攷」(『中古文学』(68) 2001.11 pp.21-30【Z13-1340】)
* J-STAGEで全文の閲覧が可能です。
https://doi.org/10.32152/chukobungaku.68.0_21
ウェブサイトの最終アクセスは2022年7月2日です。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
-
- 小説.物語 (913 10版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 人文(レファレンス)
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000319419