レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021/07/19
- 登録日時
- 2021/08/03 00:30
- 更新日時
- 2021/08/19 12:08
- 管理番号
- 10003892
- 質問
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解決
日の丸の寄書きがいつから始まったのか知りたい(起源が分からない場合は、最も古い年代が確認できる資料を知りたい。三重県戦争資料館のホームページには、昭和7(1932)年10月の日章旗寄書きが掲載されている)。
- 回答
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ご照会の件について、以下のとおり回答します(【 】内は国立国会図書館請求記号、インターネット最終アクセス日は2021年7月15日です)。
資料1には、「日の丸寄せ書きについては、研究も少なく、その始まりについて、何がきっかけとなって国旗に揮毫するという行為が流行し始めたのか現在のところ確認できていない。しかし、その手掛かりとして、日中戦争における日の丸寄せ書きについての新聞紙上での論争がある。……昭和12年9月23日の段階で、「近来」日章旗の寄せ書きが見られるようになったことが記されている」(p.189)との記述があります。
資料2は、「日の丸への寄書はいつ頃から行われていたのかといえば、案外歴史が浅いようである。新聞報道は昭和12年7月の日中戦争勃発以降に集中する」(p.4)と指摘し、複数の新聞記事を引用した上で、「日中戦争勃発以降、急速に日の丸に字を書く行為が広まり、それが宣伝等ではなく出征の激励のためであれば許されるという合意が形成されていったことがわかる」(p.5)と結論付けています。
資料3には、「出征に際して、武運祈願のために書かれたのが、国旗の寄せ書きであった。満州事変以降盛んにおこなわれたといわれている」との記述があります(p.48)。
資料4の年表には、1930年代に「出征兵士の出発に際し、武運長久等と寄せ書きした「日の丸」が流行」したと記載されています(p.284)。
三重県戦争資料館ホームページにある昭和7年10月の日章旗寄書き(資料5)よりも古い例としては、福岡市総合図書館が所蔵する「中村正一資料」に含まれる日章旗寄書きが見つかりました。この寄書きが作成された時期は特定されていませんが、資料6によれば、中村正一の入営時(昭和5年末又は昭和6年1月)又は出征時(昭和7年2月)とされています(p.121)。「中村正一資料」に関する情報は、福岡市総合図書館のウェブサイトに掲載されています(資料7, 8)。
資料1: 渡邉一弘「戦時中の弾丸除け信仰に関する民俗学的研究 千人針習俗を中心に」(総合研究大学院大学文化科学研究科提出博士論文)2014.3.20 <https://ir.soken.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=4922&item_no=1&attribute_id=19&file_no=2>
資料2:都倉武之「寄書日の丸考(1)」『福沢研究センター通信』26, 2017.4, pp.4-5【Z71-M673】<http://www.fmc.keio.ac.jp/common/pdf/tsushin26.pdf>
資料3:石川県立歴史博物館編『銃後の人々 祈りと暮らし』石川県立歴史博物館, 1995【GB611-G3】
資料4:三浦朱門、吹浦忠正『「日の丸」「ヒノマル」 国旗の正しい理解のために』海竜社, 2001【AZ-237-G35】
資料5:三重県戦争資料館「日章旗1、旗・千人針」<https://www.pref.mie.lg.jp/FUKUSHI/heiwa/17498018321.htm>
資料6:「三 中村正一資料」『古文書資料目録 25(令和元年度)』福岡市総合図書館文学・文書課, 2020, pp.121-124【GB2-M78】
資料7:福岡市総合図書館「古文書資料紹介 vol.8 写真 <中村正一葬儀光景> ― 中村正一資料(『令和元年度古文書資料目録25』所収、資料番号8)―」<https://toshokan.city.fukuoka.lg.jp/documents/detail/10>
資料8:福岡市総合図書館「文書資料室 現在閲覧できる古文書資料」<https://toshokan.city.fukuoka.lg.jp/materials/classical/>
(その他の調査済み資料)
・中田忠夫『大日本帝国陸海軍 軍装と装備 明治・大正・昭和 2』池宮商会, 2010【AZ-662-J71】
・アグスティン・サイス(村上和久訳)『日本軍装備大図鑑 制服・兵器から日用品まで』原書房, 2012【AZ-675-J81】
・石川弘義ほか編『大衆文化事典』弘文堂, 1994【GB8-E81】
・吉田裕、森武麿、伊香俊哉、高岡裕之編『アジア・太平洋戦争辞典』吉川弘文館, 2015【GB8-L29】
・国立国会図書館専門資料部編『国立国会図書館所蔵写真帳・写真集内容細目総覧 昭和前期編』国立国会図書館, 1999【KC711-G5】
・吉良芳恵「昭和期の徴兵・兵事史料から見た兵士の見送りと帰還」『国立歴史民俗博物館研究報告』101, 2003.3, pp.285-305【Z8-2017】<http://doi.org/10.15024/00001071>
・高潤香「戦争における日の丸と新聞報道 1937年から1945年を中心に」『東アジア研究』58, 2013, pp.1-21 【Z8-3419】<http://210.168.184.3/research/asia/bulletin/pdf/asia_58.pdf>
・都倉武之「寄書日の丸考(2)」『福沢研究センター通信』26, 2017.10, pp.4-5【Z71-M673】<http://www.fmc.keio.ac.jp/common/pdf/tsushin27.pdf>
(その他の調査済みデータベース、インターネット情報等)
・国立国会図書館オンライン(NDL ONLINE)<https://ndlonline.ndl.go.jp>
・国立国会図書館サーチ <https://iss.ndl.go.jp>
・国立国会図書館デジタルコレクション <https://dl.ndl.go.jp/>
・リサーチ・ナビ <https://rnavi.ndl.go.jp>
・近代日本軍事関係文献目録 <https://rnavi.ndl.go.jp/gunji/index.php>
・国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)<https://warp.da.ndl.go.jp>
・ジャパンサーチ <https://jpsearch.go.jp/>
・文化遺産オンライン <https://bunka.nii.ac.jp/>
・国立歴史民俗博物館 <https://www.rekihaku.ac.jp/>
・アジア歴史資料センター <https://www.jacar.go.jp/>
・防衛省防衛研究所 <http://www.nids.mod.go.jp/>
・昭和館 <https://www.showakan.go.jp/>
・静岡県護国神社「遺品館データベース」<https://shizuokagokoku.jp/relics/>
・Japan Knowledge Lib(当館契約データベース)
・Japan Knowledge「国史大辞典ウォーク 第26回 旗のはなし(2)」<https://japanknowledge.com/articles/blogkokushi/entry.html?entryid=26>
・ざっさくプラス(当館契約データベース)
・聞蔵IIビジュアル(当館契約データベース)
・ヨミダス歴史館(当館契約データベース)
・毎索(当館契約データベース)
・毎日フォトバンク<http://photobank.mainichi.co.jp/>
・日経テレコン21(当館契約データベース)
・産経新聞データベース(産経電子版)(当館契約データベース)
・中日新聞・東京新聞記事データベース(当館契約データベース)
・神戸大学附属図書館デジタルアーカイブ新聞記事文庫 <http://www.lib.kobe-u.ac.jp/sinbun/>
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- キーワード
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- 寄与者
- 備考
- 議官(レファレンス)
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- 登録番号
- 1000302699