レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020/03/04
- 登録日時
- 2020/04/02 00:30
- 更新日時
- 2020/04/17 10:43
- 管理番号
- 7369750
- 質問
-
解決
資料1のp.194右下段「震洋特攻隊要員着隊」中に
“甲十四期五〇〇名が宇和島空と小富士空から着隊してきた”という文章があります。
1945年6月29日、7月7日のこの転勤(配属替え)について、以下2点を調べています。
・公式の発令記録は何らかの形でのこっているか
・公式文書でなくても、宇和島空、小富士空、甲十四期生の回想録や手記等で
この倉敷空への転属について書かれているものがあるか
資料2p.39には“第十四期生は(中略)「震洋艇」を始めとする(中略)に半強制的に転科”、
資料3p.22には小富士航空隊から昭和20年7月「震洋」の隊員に選抜
とありますが、それ以上詳しくは書かれていませんでした。
資料1 矢沢昭郎「わたしは「倉敷航空隊」の予科練だった」(『高梁川』56,1998年12月,p.180-199.)
資料2 二階堂清風著「海の墓標」鳥影社 2004.12
資料3 鈴木昭二「倉敷航空隊日誌〔その三〕」(『福田市談会会報』148,1996年12月)
当館に所蔵のない「人間兵器震洋特別攻撃隊」を含む種々の資料を調査いただけますか。
- 回答
-
ご照会の件につきまして、以下のとおり回答いたします。
【 】は当館請求記号です。インターネットの最終アクセス日は2020年2月28日です。
1. 公式の発令記録は何らかの形で残っているか
インターネット情報1によると、「陸海軍人の辞令は、昭和十二年までは官報に掲載されていたが、以後は掲載されなくなった。従って陸海軍人の人事移動(ママ)は、(中略)海軍は「海軍辞令公報」か「海軍公報」によらなければならない」とありますので、公式の発令記録としてはこれらを確認することになります。
ご照会の時期には「海軍辞令公報」甲・乙が発行されています。
「海軍辞令公報」は当館では、憲政資料室のマイクロ資料【YF-A41 R26: 008-501】の所蔵がありますが、この時期のものはありません。
防衛省防衛研究所がデジタル化して、アジア歴史資料センターのホームページ(インターネット情報2)で公開されています(欠号もあるようです)。
資料の検索・閲覧のページから、防衛省防衛研究所>海軍一般史料>0法令>辞令公報 と順に絞り込んでください。
例えば昭和20年6月10日の「海軍辞令公報 乙」第191号には、「海軍予備学生(第十六期(第一次)飛行専修)ヲ命ス 滋賀海軍航空隊ニ入隊ヲ命ス」等の辞令が出ています(インターネット情報3)。
当館のレファレンスでは、本文を精読しての調査はできませんのでご了承ください。詳細については、利用者ご自身でご確認ください。また利用方法等詳細については、所蔵館に直接お問い合わせください。
なお、資料1は山梨県出身の海軍第十四期甲種飛行予科練習生の会による回想録ですが、巻末の「海軍第14期甲種飛行予科練習生奈良空入隊者略歴」には、三重空・奈良分遣隊から土浦、さらに小富士を経て倉敷航空隊へ入隊した十四期生がいたとみられる図解があります。ただ、この資料の回想録の中には倉敷航空隊へ配属された方は見当たりませんでした。
2. 宇和島空、小富士空、甲十四期生の回想録や手記等でこの倉敷空への転属について書かれているものがあるか
まず資料2『人間兵器震洋特別攻撃隊 : 写真集』を調べました。
上巻には上田恵之助「震洋特別攻撃隊」内の「要員の養成と震洋隊の編成」という項、「第五部 資料」に「震洋隊編成表」、「主要年表」がありますが、いずれも倉敷航空隊について言及はありませんでした。下巻は部隊史です。各部隊について念のためその訓練地や所在地等について確認しましたが、倉敷への言及は見当たりませんでした。
それから甲十四期生で、倉敷で「震洋」の訓練を受けていた方の回想録が見つかりましたので資料3、4、5をご紹介します。倉敷海軍航空隊で震洋の要員として終戦を迎えたことが書かれており、特に3と4では第十四期生と明記されています。
なお、既にご存知かと思いますが、レファレンス協同データベースに倉敷海軍航空隊に関するレファレンス(インターネット情報4)があります。
ここで挙げられている資料『倉子城』の当該号は当館に所蔵がないので詳細は不明ですが、小富士や宇和島から倉敷に転属になった方の回想録もあるようですので、もし未確認でしたら事例登録館へ問い合わせてみられてはいかがでしょうか。
(資料)
1. 『予科練と特攻隊 : 海軍甲種飛行予科練習生14期の回想』 山梨甲飛14期会 編. 山梨ふるさと文庫, 2003.8 【GB554-H280】「海軍第14期甲種飛行予科練習生奈良空入隊者略歴」(p.283)
2. 『人間兵器震洋特別攻撃隊 : 写真集』 震洋会 編. 国書刊行会, 1990.5 上下巻【GB547-E47】「要員の養成と震洋隊の編成」(p.17)、「震洋隊編成表」(pp.134-138)、「主要年表」(pp.141-142)
3. 山田和夫「予科練から特攻隊へ―私は生きのこった」『ドキュメント太平洋戦争 1』 汐文社, 1975 pp.229-250【GB541-70】
4. 山田 和夫「時代と向き合う映画(4)その瞬間、彼らはまだ生きていた――特攻を描いた日本映画の歩み」『前衛 : 日本共産党中央委員会理論政治誌』 (通号 821) 2007.9 pp.73-83【Z1-24】
5. 山田 和夫「「特攻」の悲劇は美化されてはならない――私自身の記憶と体験、そして映画作品から」『女性のひろば』 (通号 322) 2005.12 pp.92-97【Z23-370】
(インターネット情報)
1. 原 剛「陸海軍文書について」『戦史研究年報 第3号』防衛研究所 2000.3 p.114
( http://www.nids.mod.go.jp/publication/senshi/200003.html )
2. アジア歴史資料センター 資料の検索・閲覧のページ
( https://www.jacar.archives.go.jp/aj/meta/default )
3. 海軍辞令公報 乙 第191号
件名標題:6月
階層:防衛省防衛研究所>海軍一般史料>0法令>辞令公報>昭和20年1月4日 昭和20年11月12日 海軍辞令公報 乙 (24コマ)
レファレンスコード:C13072154700
4. 倉敷海軍航空隊に関する資料はないか。(岡山県立図書館)レファレンス協同データベース ( https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000189885 )
(その他の調査済み資料およびデータベース)
・『ああ"予科練" : 甲種飛行予科練習生の記録』福本和也 著. 講談社, 1967【397.8-H791a】国立国会図書館デジタルコレクション(図書館送信参加館内公開)( https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9581700/1 )
・上原 光晴「震洋・(レ)激闘録 : 挽回の期待を担った水上特攻艇」『歴史群像』 12(6)=62:2003.12 pp.172-179【Z8-3933】
・『予科練甲十三期生 : 落日の栄光』高塚篤 著. 原書房, 1972【AZ-664-8】
・『ああ甲種予科練 (徳間文庫)』 福本和也 著. 徳間書店, 1984.8 【AZ-664-106】
・『日本海軍史 第7巻 (機構・人事・予算決算・艦船・航空機・兵器)』 軍歴史保存会 編. 海軍歴史保存会, 1995.11【AZ-664-G9】
・『鉄の棺 : 日本海軍潜水艦部隊の記録 資料編 4』 渡辺博史 著. ニュータイプ, 2005.5 【AZ-664-H60】
・『空の彼方 : 海軍基地航空部隊要覧 3』 渡辺博史 編. 楽學庵, 2009.5 【AZ-664-J22】
「倉敷海軍航空隊」の章(pp.532-536)で時系列に沿って士官や士官候補生の転出入が載っていますが、甲十四期生の転入については記載がありません。
・『特攻 : 自殺兵器となった学徒兵兄弟の証言』 岩井忠正, 岩井忠熊 著. 新日本出版社, 2002.7 【GB547-G121】
・『還らざる特攻艇 : 爆装モーターボートの知られざる戦闘記録 3訂版』益田善雄 著. 霞出版社, 2005.5【GB547-H38】
・『陸海軍水上特攻部隊全史 : マルレと震洋、開発と戦いの記録』奥本剛 著. 潮書房光人社, 2013.9 【GB547-L8】
・『日本特攻艇戦史 : 震洋・四式肉薄攻撃艇の開発と戦歴 (光人社NF文庫 ; きN-857)』木俣滋郎 著. 潮書房光人社, 2014.11【GB547-L29】
・『証言記録兵士たちの戦争 4』NHK「戦争証言」プロジェクト 著. 日本放送出版協会, 2010.7【GB554-J572】
・『新修倉敷市史 第6巻』倉敷市史研究会 編. 倉敷市, 2004.3【GC218-H51】
・『日本映画の 80年』 山田和夫 著. 一声社, 1976.11 【KD652-40】
「18 「大曽根家の朝」堰を切った良心の叫び」(pp.116-121)のp.116に予科練と震洋、倉敷への言及がありますが、数行なのでご紹介した資料には入れていません。
・国立国会図書館オンライン( https://ndlonline.ndl.go.jp/ )
・国立国会図書館デジタルコレクション( https://dl.ndl.go.jp/ )
・国立公文書館アジア歴史資料センター( https://www.jacar.archives.go.jp/aj/meta/default )
・google books( https://books.google.co.jp/ )
- 回答プロセス
- 事前調査事項
-
資料1~3のほか
島尾敏雄・吉田満著「新編 特攻体験と戦後」中央公論新社 2014
特攻最後の証言制作委員会著「特攻 最後の証言」アスペクト 2006
馬場明子著「誰も知らない特攻」未知谷 2019
矢沢昭郎「思い出の倉敷海軍航空隊」(『高梁川』70,2012年12月,p.54-65.)
矢沢昭郎著「海軍七つ釦よもやま物語」光人社 1992.3
矢沢昭郎著「花の予科練物語」光人社 1994.6
福田史談会会報146〔1996.12〕
福田史談会会報147〔1997.2〕
福田氏段会会報148〔1997.4〕
福田史談会会報154〔1998.6〕
福田氏段会会報156〔1998.12〕
- NDC
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 議官(レファレンス)
- 調査種別
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000279972