レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20170815
- 登録日時
- 2019/08/20 00:30
- 更新日時
- 2019/08/20 00:30
- 管理番号
- 1002997
- 質問
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解決
沖縄での捕鯨および鯨肉を食べていたことについて知りたい。
- 回答
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沖縄における捕鯨および鯨肉の消費については、小型鯨類(イルカ、ゴンドウクジラなど)と大型鯨類(ザトウクジラなど)で状況が異なる。
1.
小型鯨類の捕鯨は、沖縄県内各地での始まりは明確ではない。小規模の手投げ銛による捕鯨はかなり昔から行われていたようだ(資料①)。名護市のイルカ漁(イルカと呼ばれているが、実際には殆どがゴンドウクジラだった。(資料①③))は有名だが、多数の船による追い込み漁は、明治以降に行われた(資料③)。明治以前のイルカ漁については、確実な記録は得られていない(資料③)。
捕鯨が行われていたことから、鯨肉も琉球王府時代から食べられていたようだ(資料①③)。資料③によると、琉球王府時代の資料「間切公事帳」の「大魚」はイルカを指している可能性が高く、イルカが食の対象と考えられていたことは確実なようだ。明治以降、イルカ肉を炒めたりソーキ汁、また保存食として塩漬けなどにして消費した(資料③)。
2.
大型鯨類の捕鯨は、沖縄県では戦後名護町から始まった(資料①と②では、1950年、資料④では1952年の記述がある)。戦後の食糧不足の時代だったため、捕鯨が盛んになったようだ。本部村、与那城村でも捕鯨が行われたが、1956年に米国民政府によって国際捕鯨法に従うように指導されて頓挫した(資料④)。それ以降は、名護漁業共同組合、琉球食品株式会社(糸満町)、海洋水産株式会社(佐敷村)で、捕鯨が行われた。
捕鯨のピーク時には、年間290頭が捕獲された(資料①②)。統計資料によると、鯨肉の輸出も盛んに行われた(資料⑤~⑦)。しかし、鯨が激減したため、1963年には年間でマッコウクジラ1頭のみだった(資料①②)。1965年の国際捕鯨委員会による北太平洋のザトウクジラの捕獲禁止、1966年の琉球政府による沖縄海域での捕獲禁止が決定したため、沖縄での捕鯨は終了した(資料②)。
戦後の食糧不足の時代には、鯨類を食べる習慣がなかった地域にも、鯨肉が広がった(資料①)。糸満町の琉球食品株式会社では、鯨肉の缶詰も生産されて島内で販売された(資料④)。沖縄での捕鯨が終了した後は、統計資料より、鯨肉の缶詰の輸入が行われたことが分かる(資料⑦)。
①
『あじまあ 4号 名護博物館紀要』(名護博物館∥編・刊、1988.3)
p15-54 「名護の捕鯨-名護における捕鯨の起りとその変遷- 宮里尚」の論文がある。
p16 「沖縄県名護市(旧名護町)では、明治以前からヒートゥ漁(ピトゥ:コビレゴンドウクジラを中心とするイルカ狩り)が行なわれ、ゴンドウクジラ捕獲はこの地域の人々の経済と食生活をうるおしてきた。」の記述がある。
p21-25 「名護捕鯨の歩み」の項目で、1950年から1963年までの県内の捕鯨について記述がある。
p21 「名護や沖縄各地における捕鯨の始まりは決して明確ではない。恐らく、かなり古い時代から各地の沿岸で原始的な手投げ銛などによる小型捕鯨は行なわれていたと考えられる。(中略)その当時捕鯨(ザトウクジラ)に携わった人々からの聞き取り調査によると、名護漁民の捕鯨は、1950年(昭和25年)本町[名護町]船籍第三廣泉丸乗組員により沖縄県の北方に位置する伊是名島の仲田沿岸で、捕獲したのが始まりであったという。」の記述がある。
p 51-53 「鯨肉の消費変遷」の項目で、戦後の鯨肉の普及する様子の記述がある。
p 52 「当時、冷蔵施設が乏しかったため解剖された鯨肉は、すぐ町公設市場(精肉店)や個人の精肉店への出荷が主であった。…しかし、巨大な鯨を見たことも、食用に用いたこともなかった地域での販売に四苦八苦して、時には地域住民の理解を求めるために各路地の広場を利用して、水炊きをおこない試食させながらの商いであったという。…その結果、極めて町内広く大衆に好まれ、これから近村へ次いで都市へと次第に普及していった。」の記述がある。
p 53 「1958年には島内消費は拡大され鯨肉生産報告書から見ると、年間250トン余も食用として消費され、食生活向上に大きな役割を果している。また町内外の精肉店においても畜肉より鯨肉がずらりと並べられ活気を示して販売されていたという。」の記述がある。
②
『名護市史 本編9 自然の文化誌』(名護市史編さん委員会∥編、名護市役所、2001.3)
p106-114 「名護の捕鯨」の項目がある。
p108 「・・・一九五〇年、底魚一本釣船、第三廣泉丸(十五トン・焼玉機関・六十馬力)は、伊是名島の中田沿岸付近の漁場を探索中に親子のザトウクジラを発見した。」と記述があり、その際子クジラを捕獲したことが名護の捕鯨の始まりであるとの記述がある。
p112-113 「沖縄捕鯨年次捕獲状況」の表(p112)と鯨資源の枯渇についての記述(p113)がある。
p113 国際的な要因(ザトウクジラの捕獲禁止)による捕鯨の終了についての記述がある。
③
『イルカと日本人』(中村/羊一郎?著、吉川弘文館、2017.2)
p109-128 「近代から始まった祝祭的イルカ漁-沖縄県名護湾-」の項目がある。
p112-113 「沖縄におけるイルカ漁の最も古い記録であり、成立は明治二十二年(一八八九)であるが、本文中に明治二十年に八〇頭を捕獲したとあることから、少なくとも明治中期には多数のイルカを対象とした追い込みが行われていたことがわかる。…この記録以前には、イルカ漁に関する確実な記録は知られていない。…王府の高貴な食べ物としてはザンすなわちジュゴンが珍重されてきたことは名高いが、イルカが供されていたという記録は管見には入っていない。…「間切公事帳」の大魚がイルカをさしている可能性は高く、イルカが食の対象と考えられていたことは明らかである。ただし、銛などによる個別漁はあったろうが、積極的に追い込み漁を行なっていた可能性は低く、その開始は、あいまいな伝承を除けば明治以前にさかのぼることはないとみてよい。」の記述がある。
p116 「捕獲されるイルカの大部分はコビレゴンドウである…」の記述がある。
p122-123 イルカ肉の調理法についての記述がある。
④
『月刊沖縄経済 5号』(沖縄経済振興センター//編・刊、1982.4)
p157-159 「一九五〇年代 沖縄の捕鯨業」の記事がある。
p157 「琉球で初めて行われたのは戦後であるが、一九五二年に名護漁協が一八屯の漁船で、而も手銛で座頭鯨を一頭仕止めたのに始まる。」の記述がある。
p157-158 県内の捕鯨会社の変遷についての記述がある。
p158 「現在、琉球食品KKに於ては、鯨肉の缶詰も製造され専ら島内に販売されている。」の記述がある。
→ 名護町、本部村、与那城村で捕鯨が行なわれたが、1956年に米国民政府によって国際捕鯨法に従うように指導され、本部村と与那城村の捕鯨は頓挫。
⑤
『琉球水産業の概況 1962年』(琉球政府経済局水産課∥編・刊、1963.7)
p16 「主要魚種漁獲指数の推移」で、1955年から1962年まで、鯨の指数が記述されている。
p20 「1962年製造加工品生産高」で、鯨油およびその他鯨加工品に生産高が記述されている。
p27 「1962年魚種別漁獲高」で、1~3、12月に鯨の漁獲高が記述されている。
p34 「業態別漁獲高」で、1~3月に捕鯨漁業の漁獲高が記述されている。
p43 「市町村別魚種別漁獲高」で、名護町、那覇市、平良市に漁獲高が記述されている。
p47-49 「鮮魚卸売市場魚種別取扱高」で、1~3、12月に鯨の取扱高が記述されている。
p50 「年度別会社別捕鯨業状況」で、1958年から1962年の捕獲高および輸出高などが記述されている。
→ 県内の捕鯨会社は、各年2~3社のみ。
⑥
『琉球の水産業 1966年』(琉球政府農林局∥編・刊、[1967.6序])
p6 「主要魚種別年次別漁獲高の推移」で、1957年から1963年まで、鯨の指数が記述されている。
p195-196 「水産物輸出高の推移」で、1957年から1962年に、鯨肉および鯨脂の輸出高が記述されている。
⑦
『琉球の水産業 1967年』(琉球政府農林局水産部漁政課∥編、琉球政府農林局、1968.6)
p292-315 「水産物の月別輸出入高」で、気密缶入り鯨肉の輸入高が記述されている。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 産業 (6)
- 参考資料
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- あじまあ 4号 名護博物館/編 名護博物館 1988.3 (p15-54)
- 名護市史 本編9 名護市史編さん委員会/編 名護市役所 2001.3 (p106-114)
- イルカと日本人 中村 羊一郎/著 吉川弘文館 2017.2 , ISBN 4-642-08305-8 (p109-128)
- 月刊沖縄経済 5号 沖縄経済振興センター 沖縄経済振興センター 1982.4 (p157-159)
- 琉球水産業の概況 1962年 琉球政府経済局水産課/編 琉球政府経済局水産課 1963.7 (p16,20,27,34,43,47-50)
- 琉球の水産業 1966年 琉球政府農林局/[編] 琉球政府農林局 [1967.6序] (p6,195-196)
- 琉球の水産業 1967年 [琉球政府]農林局水産部漁政課/編 琉球政府 1968.6 (p292-315)
- キーワード
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- 捕鯨
- 鯨肉
- 鯨
- イルカ漁
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000260318