レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2018年11月02日
- 登録日時
- 2019/03/24 18:20
- 更新日時
- 2019/03/24 18:40
- 管理番号
- 千県中参考-2018-21
- 質問
-
解決
『捜神記』の日本語訳の本はないか。高校の国語の教科書に載っていた「売鬼」の訳が読みたい。
「鬼を売る」というが鬼は幽霊のことで、正式な題は「定伯売鬼」である。
- 回答
-
読み物ならば【資料1】、より詳しく語釈などのついた資料として【資料2】【資料3】あり。このほか【資料4】【資料5】等にも該当の話の訳文が載っている。
【資料1】『捜神記 東洋文庫 10』(干宝[撰] 平凡社 1964)※平凡社ライブラリー版(2000年刊)もあり。
解説に「二十巻本の全訳」とある(p613)。
p307-309「393 幽霊を売った男」現代語訳掲載。
【資料2】『干宝捜神記』(先坊幸子編 白帝社 2004)
巻1~20の全訳注。あとがきに「これまでその全訳注は作られることがなかった」とある(p721)。
p553-555 巻十六「393 宋定伯」 白文、書き下し、通釈、語釈掲載。通釈が日本語訳にあたる。
【資料3】『中国古典小説選 2 捜神記 幽明録 異苑他』(竹田晃編 明治書院 2006)
p125-128「「鬼を騙した人(宋定伯)」(『列異伝』二六、『捜神記』巻一六・三九三)」
現代語訳、原文、書き下し文、語注、余説掲載。
【資料4】『中国古典文学全集 第6巻 六朝・唐・宋小説集』(平凡社 1959)
p4-5「幽霊を背負った男」
【資料5】『中国の幽霊 怪異を語る伝統』(竹田晃著 東京大学出版会 1980)
p104-106「幽霊の習性」の見出しで「宋定伯」の話を現代語で紹介している。
- 回答プロセス
-
・『中国学芸大事典』(近藤春雄著 大修館書店 1978)p464-465「捜神記」
現存するものは二十巻本と八巻本であることと、両者の性質の違いが示され「邦訳に東洋文庫所収の二十巻本の訳、世界文学大系・古小説集所収の八巻本の訳がある」とある。
当館に平凡社版【資料1】がないため取り寄せて確認。ほかに蔵書検索で判明した【資料2】【資料3】を取り寄せ。
・『教科書掲載作品13000 読んでおきたい名著案内』(阿武泉監修 日外アソシエーツ 2008)
p182 「干宝 「捜神記」」
図書データとして「捜神記 平凡社 2000」と記載あり。なお、「捜神記」を使用している教科書のデータがあるが、どの話が載っているかまでは書いていない。
・次の資料は目次を見る限り「定伯売鬼」に類する話なし
『世界文学大系 71 中国古小説集』(筑摩書房 1964)(9100359237)
・NDLサーチをキーワード「宋定伯」で検索。
増子和男「六朝志怪「宋定伯」小考 その用語を中心として」(『中国文学研究』29号 2003.12)p211-226(PDF閲覧可 http://jairo.nii.ac.jp/0069/00019875 )
「市」「唾」「銭千五百」等の作中の用語を、過去の訳文等を比較しながら検討している。
この論文の出典を参考に該当の話を掲載している資料を探した。
→【資料4】【資料5】および、
『中国の古典 32 六朝・唐小説集』(藤堂明保監修 学研 1982)
六朝志怪をテーマで分類している。
p206-210「幽霊を売った男」 書き下し文(傍注あり)と現代語を掲載。
解説(p456)に「より語りの口調のよく伝わる『列異伝』の文章を採用した」とあり、同内容でも別の書物の文章のようだ。
・その他、googleをキーワード「宋定伯 教科書」で検索。
小川美江「漢文教材としての「捜神記」」(『人間文化研究科年報』21号 2006)p263-272(PDF閲覧可 http://hdl.handle.net/10935/284)
六、七頁(p267-266)に「「異同」と「口語表現の解釈」の二つの問題がクリアできないままに、教科書、大学入試問題に多数採録出題されている巻十六/393」として前半部分が引用され訳文が検討されている。
・国立国会図書館デジタルコレクションを「定伯 中国」や「売鬼」で検索。
『怪力乱神 中国怪談集』(安成三郎訳編 学風書院 1953)
(国立国会図書館デジタルコレクション 参加館公開http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1660198/47)
p88-90(47-48コマ)「宋定伯(羊)」
「あとがき」(p160(83コマ))には、上海で発行された中国歴代の短編小説の抜粋で、翻案していることが記されている。
『桃園の小女 中国伝説選』(中沢蔵人著[他] 啓文館 1952)
(国立国会図書館デジタルコレクション 参加館公開http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1628220/40)
p62-69(40-43コマ)「定伯と鬼」
「まえがき」(8コマ)によると青少年向けの読み物。「宋定伯(ソンティンポウ)」、「鬼(コウイ)」や地名に中国語音の振り仮名が付いている。「あとがき」に翻訳にあたってできるだけ原文に沿うよう努めたが、半ば創作のようになったものや、読者の年齢を考慮して一部省略したものもあるとある(p213(115コマ))。
『伝説之支那』(松井等著 楠林書店 1922)
(国立国会図書館デジタルコレクション インターネット公開 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/970310/21)
p16-18(21-22コマ)「賣鬼」
- 事前調査事項
-
宋定伯という男が幽霊を騙して背負って歩き、羊になった幽霊を売るという話だった。
蔵書検索で「捜神記」が載っている資料を探し、当館所蔵の『岡本綺堂読物選集 7 翻訳編』(岡本綺堂著 青蛙房 1970)(9100677106)を見たが載っていなかった。
- NDC
-
- 小説.物語 (923 9版)
- 参考資料
-
- 【資料1】『捜神記 東洋文庫 10』(干宝[撰] 平凡社 1964)(1100227270)(2100507918)
- 【資料2】『干宝捜神記』(先坊幸子編 白帝社 2004)(2101723274)
- 【資料3】『中国古典小説選 2 捜神記 幽明録 異苑他』(竹田晃編 明治書院 2006)(2101995200)
- 【資料4】『中国古典文学全集 第6巻 六朝・唐・宋小説集』(平凡社 1959)(9100845293)
- 【資料5】『中国の幽霊 怪異を語る伝統』(竹田晃著 東京大学出版会 1980)(9100839830)
- キーワード
-
- 捜神記
- 売鬼
- 宋定伯
- 漢文
- 国語教科書掲載作品
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000253636