レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2018/10/05
- 登録日時
- 2018/11/02 00:30
- 更新日時
- 2018/11/21 13:18
- 管理番号
- 2466688
- 質問
-
解決
保険制度のある国におけるカルテの開示費用について調べています。
調査した限りでは諸外国での費用について記載のある資料は見つかりませんでした。
記載のある資料であれば、洋書や海外のサイトでも良いのでご教示ください。
- 回答
-
お尋ねの件について回答します。
今回の調査では、ドイツと英国について、診療記録の閲覧に係る費用に関する記載がある資料が以下のとおり見つかりましたので、判明した範囲での根拠規定を含めてご紹介します。
なお、【 】内は当館請求記号、インターネット最終アクセス日は2018.10.3です。
■ドイツ
資料1は、診療記録の閲覧等について書かれた記事です。この中で、ドイツ民法第630g条第2項により患者がコピーの作成に要した費用を支払うとされていることや、判例や専門書の中で妥当とされる金額について触れられているようです。
資料2は、ドイツ民法の解説書です。当該資料のp.1163に第630g条の概要の説明と解説の目次、pp.1165-1166に「A. Ⅲ.Erläuterungen [6] Kosten」[費用]の節がありますので、併せてご紹介します。
なお、ドイツ民法第630g条は、以下のインターネット情報で閲覧できます。
また、当該条文は、患者の権利を改善するための法律(Gesetz zur Verbesserung der Rechte von Patientinnen und Patienten vom 20. Februar 2013 (BGBl. I S.277))により民法典に組み込まれたものです。これについては、参考資料1をご参照ください。
資料
1 Einsichtsrecht in die Patientenakte : Recht. KVS-Mitteilungen. Ausgabe 03/2015 p.VII
※ドイツ・ザクセン州保険医協会の雑誌、当館未所蔵。以下の出版者サイトで閲覧できます。
https://www.kvs-sachsen.de/mitglieder/kvs-mitteilungen/2015/03-2015/recht/
2 Reiner Schulze, Herbert Grziwotz, Rudolf Lauda [Hrsg.] ; Peter Baltzer [and others].
Bürgerliches Gesetzbuch. 3. Auflage. Nomos, 2017【AG4-811-B136】
インターネット情報
Gesetze im Internet(ドイツ連邦司法省とJuris社が共同で提供する法令サイト)
Bürgerliches Gesetzbuch (BGB) §630g Einsichtnahme in die Patientenakte
http://www.gesetze-im-internet.de/bgb/__630g.html
参考資料
1 渡辺 富久子. 立法情報 ドイツ 患者の権利を改善するための民法典等の改正.
外国の立法. 月刊版 : 立法情報・翻訳・解説 / 国立国会図書館調査及び立法考査局 編. (255-1):2013.4.
※当館デジタルコレクションで閲覧できます。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/8196100
2 村山 淳子. 講演「ドイツの患者の権利法」(患者の権利宣言30周年記念シンポジウム) :
立法における価値判断という問題意識. 西南学院大学法学論集. 47(2・3):2015.2.
※出版大学の機関リポジトリで閲覧できます。
http://repository.seinan-gu.ac.jp/bitstream/123456789/1137/1/lr-n47v2_3-p91-132-mur.pdf
■英国
以下の資料は、患者の保健記録へのアクセスについて規定した法律(Access to Health Records Act 1990)に関する記事です。この中に同法の日本語訳が掲載されており、第3条(4)の箇所に、明確な費用ではありませんが、アクセスに関する料金に係る記載があります(p.35)。
なお、同法は以下のインターネット情報で閲覧できます。ただし、上記の箇所(第3条(4))には、データ保護に関する法律(Data Protection Act 2018)により削除された箇所がありますので、ご注意ください。
資料
伊藤 信博. 保健記録のアクセス法(立法紹介 米国,英国). 外国の立法 : 立法情報・翻訳・解説 / 国立国会図書館調査及び立法考査局 編. 31(2) 1992.03. pp.26-39 【Z2-5】
※以下のページから閲覧できます。
http://www.wam.go.jp/wamappl/bb14GS50.nsf/0/88e42183b32283c64925735d00054600/$FILE/20070921_4sankou1_4.pdf
インターネット情報
Legislation.gov.uk(英国の法令データベース)
https://www.legislation.gov.uk/ukpga/1990/23/section/3
- 回答プロセス
- 事前調査事項
-
・『世界の医療保障』(加藤 智章/編 法律文化社 2013)に各国の医療制度の記載はあり
・厚労省HP『医療保障制度に関する国際関係資料について』(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken11/)に「主要国の医療保険制度概要」としてわかりやすい各国の制度の比較表があり。
カルテ開示にかかる費用について諸外国の費用に関する資料なし。料金に関する規定があるのかも不明。
・『カルテ改ざんはなぜ起きる 検証:日本と海外』(石川 寛俊/著 日本評論社 2006)に、イギリスとドイツについて、医療情報を見る権利が保障されています、ということは記載あり。費用については記載なし。
・「診療情報の提供等に関する指針 」(厚労省法令等データベースhttps://www.mhlw.go.jp/hourei/html/tsuchi/search1.html)に、「7(4)診療記録の開示に要する費用 ○医療機関の管理者は、申立人から、診療記録の開示に要する費用を徴収することができる。その費用は、実費を勘案して合理的であると認められる範囲内の額としなければならない。」とあり。明確な費用は記載なし。
・2018年7月24日の朝日新聞朝刊に「カルテ、コピー1枚で5千円も 厚労省「不適切」と注意」との記事あり。
「薬害被害者らでつくる全国薬害被害者団体連絡協議会(薬被連)は、カルテの開示請求を妨げるような価格設定の改善を指導するよう同省に求めている。」などとあり。
- NDC
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 議官(レファレンス)
- 調査種別
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000244807