レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017/8/5
- 登録日時
- 2018/10/31 00:30
- 更新日時
- 2018/10/31 15:31
- 管理番号
- 参調 18-0028
- 質問
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解決
既存の小説と同じタイトルの小説を発表したとしたら、著作権侵害に当たるのか。
もし具体的な事例(判例)などもあれば知りたい。
- 回答
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『そこが知りたい著作権Q&A100 CRIC著作権相談室から』という資料に、
「既存の小説と同じ題号の別の小説を書いたら著作権問題になりますか」という質問と回答
の項があったので記述の一部を以下に引用・要約し、回答とする。
「小説の題号は普通名称だけ、あるいはその組み合わせであっても短いものが多く、思想または感情を創作的に表現したとまではいえない場合が多いため、一般的に小説等書籍の題号は著作権の対象とならない場合が多い。小説の題号に著作物性を認めるとそれと同一あるいは類似する題号は他人が使用できなくなってしまうが、そのような独占的な効力を認めることは好ましくないという配慮もあるだろう。」
また、同資料に判例として「書籍の題号に関し、著作者の人格的利益の損害の有無が争われた事案について和解が成立した事例」として紹介されていた「父よ母よ!」という題号の書籍について争われた事案ではその題号の独創性について 、
「原告は、その書籍「父よ母よ!」の内容を考慮し、熟慮の結果、その題号を決定したものであり、同題号はシンプルではあるが、同書に登場する少年達の心の叫びでもあり、同書の内容を象徴するにふさわしい題号となっているものと認められる。しかしながら、右題号は、その書籍の内容と離れて題号のみを客観的に検討すると、「父よ」「母よ」という使用頻度の高いシンプルで重要な言葉を組み合わせたものであり、その意味で題号そのものとしてみた場合に、高度の独創性があるものということはできず、このようなシンプルで重要な言葉の組合せからなる題号を特定の人にのみ独占させる結果となることは、不正の目的が認められる等の特段の事情がない限り、表現の自由の観点から見て相当ではない。」
と和解勧告がされている。
この判例が紹介されている判例時報1595号には「著作物の題号について著作権法は20条1項で著作者人格権(同一性保持権)による保護を規定しているが、著作権による保護についての規定はない」との記述があるほか、この判例の参考として日本文芸家協会の「文芸作品の題名について」という見解が掲載されており、そちらを以下に引用する。
(1)文芸作品の題名は作者の苦心の所産であり,独創性の高いものが数多く存在します。
こうした作者の苦心や独創性は尊重されるべきです。
(2)その反面、文芸家がその作品の題名を定める場合の表現の自由は最大限に確保されなければなりません。
(3)こうした観点から、既存作品の題名と同一題名を用いることは、イ既存作品の題名がありふれたものではなく、ロその既存作品の評価が定まっているものであり、ハ同一題名の作品が既存作品の名声に便乗するものであったり、既存作品を冒涜するものであったり、既存作品の作者の感情を著しく傷つけるものである場合は避けることが望ましいと考えます。
(4)もっとも、右のイロハすべてを満足する場合でも、パロディ等正当な目的のためであれば、既存作品と同一題名を用いることは差し支えないでしょうし、また、作者の思想、信条にしたがい、作者の責任において同一題号を用いることも作者の自由です。
(5)この見解は日本文芸家協会が文芸作品の題名について望ましいと考えられる方向を示すものであり、いうまでもなく、協会員に対し何らかの拘束力をもつものではありません。
(文芸家協会ニュース392・2 昭和59年4月)
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 著作.編集 (021 7版)
- 参考資料
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- 1 そこが知りたい著作権Q&A100 早稲田/祐美子?著 著作権情報センター 2011.3 021.2/SO
- 2 判例時報 通巻1595号 判例時報刊行会 日本評論新社 1953- Z403
- キーワード
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- 小説
- 著作権法
- タイトル
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事項調査
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000244668