レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017/01/25
- 登録日時
- 2017/04/10 00:30
- 更新日時
- 2017/04/12 00:30
- 管理番号
- 6001022017
- 質問
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解決
明治時代の芝居「近世開港魁」(キンセイミナトノサキガケ)の公演内容について知りたい。
- 回答
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次の資料に内容等の記載がありました。
【図書】
『横浜市史稿:風俗編』(横浜市役所/[編]著 横浜市役所 1932.9)
p.216~222に第5章第1節に「港座舞台開きの維新事件芝居」という項立があり、「近世開港魁」が取り上げられています。
[作者]
瀬川如皐
[上演日・上演場所]
明治7年7月横浜・港座初演
[演目]
序 幕:億川館庭内の場。瀧見亭遊興の場。夷船渡来注進の場。
二幕目:浦賀海岸。幕府場中。大廣間代對論。
三幕目:洛北岩倉谷。楠公神霊出現。
四幕目:拜郷配所。
五幕目:孤島磯邊。
六幕目:八幡山閑道。生駒越峠。大坂城中。
七幕目:平河天神境内。發屋敷。
計 七幕十五場。
「狂言は近世紀聞の山を取り入れて、ペルリ渡来に始まり、大政奉還、西郷の入水、鳥羽伏見の戦争、慶喜公の東帰、
榎本の脱走までを7幕15場纏めた相当長いもの」と書かれています。
『明治前期演劇論史』(松本伸子/著 演劇出版社 1974.9)
第2章「明治初期演劇論の展開」に『近世開港魁』についての記述があります。
p.111に「この芝居は「濤乗開化初夢(なみのりふねかいくわのはつゆめ)」という題名で『日本戯曲全集』第44巻に収められているが、それによると、すべて実名という訳でもなく、徳川家定を億川輝定とし、・・・適当に実在人物と役名との間をぼかしてある上、筋立や趣向も決して『近世史略』の史実を追ったというものではない。かえってどちらかといえば、執拗なまでに従来の歌舞伎の型に当てはめた構成をとり、演出方法を踏襲しているように読める台本である」との記述があります。
【雑誌・論文】
吉岡亮「歴史を語る芝居:明治初年~十年代における<演劇>と<歴史>」『日本近代文学』65(日本近代文学会 2001.10.15)p.136~149
第Ⅰ節に「明治7年に横浜湊座で上演された「近世開港魁」は、明治5年に刊行された山口謙の『近世史略』を劇化した形をとり、ペリー来航から大政奉還までの幕末の様子を列伝体で見せようとするものであった。おそらく、明治に入ってから歌舞伎で幕末の出来事をとりあげた最も早いものの一つであっただろう」(p.140)という記述があります。
また「現在見ることのできる脚本からうかがう限り、「近世開港魁」は、『近世史略』の劇化という体裁をとっているが、鬼界ヶ島に流された俊寛僧都の姿を描く「平家女護島(へいけにょごのしま)」などの従来の歌舞伎の世界を換骨奪胎しながら構成された作品であったようである」(p.140-141)と記述されています。
この「現在見ることのできる脚本」の箇所には、「「濤乗船開化初夢(なみのりぶねかいくわのはつゆめ)」という題で『日本戯曲全集』第44巻「維新狂言集」(春陽堂、1932年12月)に収録されている・・・・」という注が施されています。(注(21):p.148)
下記資料は国立国会図書館デジタルコレクションで公開されており「濤乗船開化初夢」の台本をインターネットで閲覧できます。
『日本戯曲全集 第44巻:維新狂言集』(渥美清太郎/編纂 春陽堂 1932)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1884003(2017.1.25現在)
「事例作成日:2017年1月25日」
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 歌舞伎 (774 8版)
- 演劇史.各国の演劇 (772 8版)
- 参考資料
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- 横浜市史稿 風俗編 横浜市役所∥[編]著 横浜市役所 1932 (216-222)
- 明治前期演劇論史 松本/伸子∥著 演劇出版社 1974
- 日本近代文学 日本近代文学会 日本近代文学会 <65-67> (136-149)
- 明治演劇史 伊原/敏郎∥著 早稲田大学出版部 1933
- 日本戯曲全集 第44巻 春陽堂 1932
- http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1884003 (日本戯曲全集 第44巻:維新狂言集(2017.1.25現在))
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000214621