レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016/07/08
- 登録日時
- 2016/10/02 00:30
- 更新日時
- 2016/10/02 00:30
- 管理番号
- 6001017183
- 質問
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解決
枕草子245章の中に「・・・御笛二つして、高砂ををりかへして吹かせ給ふは、なほいみじうめでたしといふも世のつねなり。・・・」とあるが、この「高砂」について知りたい。
- 回答
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『枕草子』の注釈書を調査したところ、催馬楽の「高砂」であることがわかりました。
以下、調査した資料の中から数点紹介します。なお、『枕草子』の資料は底本によって章段の異動があります。
よって章段の記述は「一条の院をば」という段名で記述します。
【図書】
『日本古典文学大系19:枕草子』(岩波書店 1958.9)p268
「一条の院をば」(245段)の高砂を吹く記述部分の注には、「この人と二本の笛で催馬楽の高砂という曲を繰り返し合奏なさる」とあります。
『枕草子 下(新潮日本古典集成 12)』(清少納言/[著] 新潮社 1977)p145
「一条の院をば」(227段)の「高砂」の注には「長生楽の破曲の歌。催馬楽「高砂の、さいさごの、高砂の、尾上に立てる白玉玉椿玉柳(下略)」」とあります。
『新編日本古典文学全集42:神楽歌』(小学館 2000.12)p165-171
「高砂」の本文や訳ならびに解説が記されています(p120-121)。また、催馬楽の成立や伝承等の解説も記されています。
『催馬楽(東洋文庫750)』(木村紀子/訳注 平凡社 2006.5)p34-39
「高砂」の本文ならびに語注が掲載されています。
『平安宮廷文学と歌謡』(中田幸司/著 笠間書院 2012.12)
「催馬楽「高砂」攷:「寿歌」から「恋歌」への移行」と題する論文が掲載されています(p46-65)。また「歌謡と『枕草子』」と題する章には、「歌謡が流行し、最盛期を迎えるとはどのようなことであろうか。・・・たとえば『催馬楽』の最盛期を一条朝に定めることはこの時代に成立した『枕草子』や『源氏物語』への引用・典拠の頻度の多寡を基準に考えるならば、異論のないところであろう」(p273)と書かれ、「一条の院をば」(228段)の催馬楽「高砂」について「もともと寿歌の体裁をもつ歌が恋歌として詞章を工夫されて宮廷内部に受容された「高砂」がここで演奏されていることの問題は、歌謡の需要を考える上で未解決である・・・」(p286-287)と記されています。
『王朝文学と音楽』(堀淳一/編 竹林舎 2009.12)p221
「平安文学と風俗圏歌謡:『枕草子』と『紫式部日記』に見る催馬楽・風俗歌」(小野恭靖/著)という論文が収録されています。この論文の中に「一条の院をば」(245段)の「高砂」について「この部分では催馬楽は楽曲として登場しており、詞章は直接には現れてこない。・・・この部分を除く六例は詞章とのかかわりが強いことを指摘できるが、この「高砂」のみは例外となる。・・・」と記されています。
【雑誌】
本塚亘「催馬楽における「同音」の実感 : 催馬楽曲と唐楽・高麗楽曲との距離感を探る」
『日本文学誌要』91(法政大学国文学会 2015.3)p.24-39
http://repo.lib.hosei.ac.jp/bitstream/10114/12070/1/nbs_91_motozuka.pdf (2016.7.8現在)
「3.催馬楽を笛で奏するということ」という項に「一条の院をば」の段が取り上げられています。
また「5.<長生楽>と催馬楽の近似性」という項には、「『枕草子』における<高砂>を「折り返して吹」くという形式は、そのまま<長生楽>破の演奏形式にあてはめることができるのである。おそらく、一条天皇と藤原高遠が笛で奏していた曲は<長生楽>破であったのだろう。それを聞いた清少納言が<高砂>であると認識したのは、たまたま彼女が<高砂>を知っていて<長生楽>破を知らなかったというだけかもしれない」との記述もあります。
[事例作成日:2016年7月8日]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 詩歌 (911 8版)
- 評論.エッセイ.随筆 (914 8版)
- 参考資料
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- 日本古典文学大系 19 岩波書店 1958.9 (268)
- 枕草子 下 清少納言∥[著] 新潮社 1977 (145)
- 新編日本古典文学全集 42 小学館 2000.12 (120-121,165-171)
- 催馬楽 木村/紀子∥訳注 平凡社 2006.5 (34-39)
- 平安宮廷文学と歌謡 中田/幸司∥著 笠間書院 2012.12 (46-65,273,286-287)
- 王朝文学と音楽 堀/淳一∥編 竹林舎 2009.12 (221)
- http://repo.lib.hosei.ac.jp/bitstream/10114/12070/1/nbs_91_motozuka.pdf (「催馬楽における「同音」の実感 : 催馬楽曲と唐楽・高麗楽曲との距離感を探る」(2016.7.8現在))
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 書誌事項調査
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000197668