確かに、ネット上にはたくさん「猫が麦茶を飲む話」が出てきます。
その中のひとつに
あやい動物病院ブログ 「あやい動物日記」(2011年7月18日 月曜日 ねこに麦茶)
http://www.ayai-animalclinic.com/blog/2011/07/post-63-113613.htmlがあり、健康上特に問題はないとされていますが、なぜ好むかということには触れられていません。
件名=ねこ(猫)
といれて当館の蔵書検索をすると、沢山の資料が出てきますが、猫と麦茶について直接触れた記述は探し出せませんでした。
猫の嗅覚、味覚に触れている資料をご紹介します。
嗅覚が鋭く、匂いが大事ということは共通していますが、
味覚については意見が分かれ、その中でも、特に甘味については意見が分かれます。
『イラストでみる猫学』 (林良博/監修 講談社 2003.11)
44ページ嗅覚系の構造の項には、
『食べ物は味ではなくにおいで判断する。したがって、においの強いものを好む傾向がある。』とあり、
50ページの味覚の構造の項には、『動物性タンパク質を主食としてきた猫にとって、とりわけ炭水化物は苦手になる。…糖分に反応しない猫も、…甘いアミノ酸にはよく反応する。しかし、トリプトファンなどの苦いアミノ酸は苦手である。また、塩辛いものも酸っぱいものもあまり好まない。酸っぱいもののなかでも、レモンに含まれるクエン酸はとりわけ苦手で、顔に向けると逃げ出してしまう。一方、ココナッツミルクなどに含まれる中鎖脂肪酸は大好物である。よって、猫の好き嫌いは、まさに味覚によるところが大きい…』とされています。
『猫 かわいいネコには謎がある』(講談社青い鳥文庫 今泉忠明/作 講談社 2001.4)
41ページ 『猫の食事』には、
『ネコがすっぱさ、苦さ、塩からさ、あま味を感じているのは確かなようです。すっぱさにいちばん強く反応し、塩からさはあまり感じないとされます。この味のほかに、水の味も感じ、あまさもわずかに感じているとされます。このあま味ですが、猫は砂糖にはほとんど反応しませんから、肉のあま味のようです。ただ、最近のネコはあま味の感覚がしだいに発達しつつあるともいわれます…』とあります。
『猫の事典』(ステファーヌ・フラッティーニ/著 学研 2002.2)
26ページには、『ネコの嗅覚は、人間の10倍も発達しています。…ネコの味蕾は、4つの味であるしょっぱい、すっぱい、あまい、からいを認識しています。…ふつうは、あまい、からいより、しょっぱい、すっぱいが好きと言われています。』とあります。
『猫だけが知っている猫の秘密』(ロベール・ド・ラロシュ/著 ベストセラーズ 2001.2)
28-29ページには、
『猫はどんな味でも感じられるのか?』
『そうだよ。まずは酸味、それから苦味、塩味、最後に甘味を感じる。人間たちは長年誤解していたけど、猫は甘い味もきちんと感じられるんだ。とりわけ、乳糖には敏感だ。それに、人間が上等のワインを味わうときみたいに、ぼくらは水を堪能できるんだぜ…』
とあります。
『愛猫のための症状・目的別栄養事典』(須崎恭彦/著 講談社 2012.12)
49ページには、猫にごはんを食べさせる工夫として
『食欲増進の秘訣の一つが、香り付け。…ドライフードは飽きられないように香り付けの工夫がされています。
手づくり食では加熱する、焼く、炒めるなどの方法で、猫の気を引きます』
『猫缶はなぜあの様なとろみがあるのかというと、猫はとろみが大好きだからです。くず粉や片栗粉を使って、中華丼のようなとろみをつけても良いですし、…』とあります。
『猫の不完全な飼い方』(城崎哲/著 太田出版 2002.11)
291-309ページには、
『猫料理への達人への道』
の章があり、ペットフード会社の関係者の言としてこのように書かれています。
『猫は脂っこいのが好き。苦味、渋み、甘味、しょっぱさはみんな嫌い。だからカリカリには基本的にはっきりわかる味付けはなく、穀物の味と新鮮なオイルの味がするだけ。それより匂いのほうが重要』、
カリカリ(ドライフード)にまぶされた粉について『化学合成物ではなく、魚、牛、豚、鳥など煮込んだスープから作ったうまみ成分を乾燥させて粉にしたもの。…』
『猫の言いぶん:飼い主に知ってほしいボクたちの本音』(小暮規夫/著 講談社 2000.11)
145ページには、
『猫に味つけは必要ありません。猫の嗜好は、匂いや歯ざわりで決まるからです。』とあります。
『ネコのサインを見逃すな』(斎藤昭男/著 アドスリー 2001.12)
86-87ページには、
『ネコでは糖に対する反応がない(Capeter、1956)と報告されています。…苦みとして感じるアミノ酸は(L-トリプトファン)は、イヌにもネコにも同じように感じられると報告されています。(White&BOUDREAU、1975)子ネコは、生後1日目でミルクの味がわかり、生後10日で塩からさ、苦みに反応し、甘みとスッパさには多少反応します。成ネコは、塩からさ、苦みに反応し、スッパさには反応するが甘みには反応しないようです。…』とあります。
インターネット情報
ロイヤルカナン(ペットフード開発会社)ホームページ内 「よくあるご質問 食事について」
『犬や猫にとっておいしい食事とはどんな食事ですか? →
犬や猫にとっての 美味しい食事とは犬や猫が興味を引かれる匂いのするものです。また、噛み応えも重要です。』
味覚や嗅覚についてはこのように多数の資料に書かれており、
その好みも多少述べられていますし、
また、食べてはいけないもの、食べさせなければいけないものなどは多く記述されているのですが、
具体的にどんな食物を好むか、についての記述は多くは見つけられませんでした。
前出『猫だけが知っている猫の秘密』(ロベール・ド・ラロシュ/著 ベストセラーズ 2001.2)
26-27ページには、
猫の好きな匂いとして、
ジャベル水(次亜塩素酸ナトリウムの水溶液で漂白・殺菌・防腐用)オリーヴの木 オリーヴの実 アスパラガス パピルス 別名〈猫の草〉というシソ科のイヌハッカ カノコソウ
を挙げています。
前出『猫の不完全な飼い方』(城崎哲/著 太田出版 2002.11)
306-307ページで、著者の考えとして、イネ科やムギ科の雑草のにおいに触れています。
『猫が草を食べるのは毛玉を吐くためだという説があるが、私は賛成しない。食べたくて食べているようにしか見えないからだ。…燕麦はまさに牧草だが、イネ科やムギ科の雑草の中にはもともと牧草として使われていた経歴のあるものが多い。いろいろある草の中から牛や馬が特に好んで食べるのが牧草なのだから、おそらく私たちには感じない、猫たちの食欲をそそるにおいがするのではないかと思う。うちの猫は庭に生えている雑草を喜んで食べている。たぶんイヌムギだと思う。…』
たしかに、猫が食べる『猫草』は、燕麦であることが多いようです。
ウィキペディア 「猫草」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8C%AB%E8%8D%89日清ペットフード「猫草」『愛猫のハッピーLife百科』
http://www.nisshin-pet.co.jp/study/dictionary/cat/category05/nekogusa.htmlまた、CiNii Articles(国立情報学研究所)
http://ci.nii.ac.jp/「猫 嗜好」「ネコ 嗜好」等で検索した結果、いくつかの論文記事がヒットしますが、
生憎いずれも当館では所蔵しておりません。