レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013/04/19
- 登録日時
- 2013/06/02 00:30
- 更新日時
- 2013/07/06 13:38
- 管理番号
- 6000011161
- 質問
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解決
慶応4年(明治元年、1868年)2月に堺で土佐藩兵がフランス兵を十数名殺害した、いわゆる堺事件で、フランスから要求された賠償金15万ドル(ドルラル)は現在の価値に換算するといくらくらいか。
- 回答
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現在の価値を書いた資料は発見できず。推計値算出の参考となりそうな下記の資料をご紹介した。
- 回答プロセス
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統計関連の書架にあった『明治大正國勢総覽』(東洋経済新報社)に明治7年以降の対米為替相場一覧が掲載されていた。それによると明治7年はドル最高値103.00ドル、最安値100.00ドル、平均値は101.58ドル、それぞれ対銀貨100円の値とある。また同書に掲載の深川正米平均相場月別表には明治7年中平均、一石7.28円という数値もあり。賠償金で得られる米の石高を割出し現在の価値を推定することは可能と思われる。
しかし事件から時期がずれており、国際決済の場で用いられる銀貨と米相場の価格を単純に比較する可否の判断ができなかったので、当市で所蔵している関連図書を取寄せて内容を確認することにした。
取寄せた『フランス艦長の見た堺事件』(新人物往来社)には記述を見つけられなかったが、『非命の譜 神戸・堺浦両事件顚末』(毎日新聞社p215)に「この比率によれば、十五万ドルラルは十一万二千五百両になる」という記述があった。(比率というのは同書によると、それまで洋銀1ドルラルに対して銀3分としていたのを、洋銀1ドルラルに対して金3分に変更した、その新交換比率のことである。洋銀については『明治時代史大辞典』も参照)
当時の1両の現在における価値をはかることができれば推計も可能となるため、国会図書館リサーチ・ナビhttp://rnavi.ndl.go.jp/rnavi/ を調べ、紹介されていた日本銀行金融研究所貨幣博物館のサイトの「お金の歴史に関するFAQ」http://www.imes.boj.or.jp/cm/history/historyfaq/ より「江戸時代の一両の現在価値はどのくらいですか?」という質問を参照した。1両で買えたお米の量から「おおよその目安として、江戸初期で約10万円前後、中~後期で約4~6万円、幕末で4千円~1万円程度」と1両の現在価値を推定してあり、幕末の数値を前掲書にあった賠償金額11万2500両に当てはめて計算することは可能。
さらに当時の金貨銀貨の含有する金銀の量についても調べる。前掲書には、事件処理の過程で万延二分金の使用徹底や、保字一分判を1両とする交換率改訂を伴ったという記述があったので、両貨幣を基に計算した。金銀位と量目は『日本通貨図鑑』(日本専門図書出版)に拠った。同書によると天保一分金は金位567.5、量目2.8g。万延二分金は金位228.5、量目3g。天保一分銀は銀位991.4、量目8.67g。明治4年制定貿易銀1円銀貨は銀900対銅100、重さ26.96g。これらから現在の小売価格で換算することが可能である旨お伝えした。その際、通貨制度の違いについても考慮していただくようお話しした。
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本史 (210 9版)
- 近畿地方 (216 9版)
- 参考資料
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- 『非命の譜』日向 康/著(毎日新聞社)
- 『フランス艦長の見た堺事件』プティ・トゥアール/著(新人物往来社)
- 『明治大正国勢総覧』東洋経済新報社/編(東洋経済新報社)
- 『江戸物価事典』小野 武雄/編著(展望社)
- 『日本通貨図鑑』利光 三津夫/編・共著(日本専門図書出版)
- 『明治時代史大辞典 2』宮地 正人/編(吉川弘文館)
- 『明治時代史大辞典 3』宮地 正人/編(吉川弘文館)
- 『暮らしと物価 大阪百話』大阪市市民局/企画
- キーワード
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- 堺事件(サカイジケン)
- 賠償金
- 洋銀
- 貨幣
- 歴史
- 幕末
- 土佐藩(トサハン)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 江戸風俗図誌6『江戸物価事典』(展望社)p69「小判対ドル貨」も参考になった。
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 一般
- 登録番号
- 1000131921