レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2012/02/17
- 登録日時
- 2012/03/31 02:00
- 更新日時
- 2012/03/31 02:00
- 管理番号
- 千県中児童-2011-0001
- 質問
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解決
「赤ずきん」の絵本には、どんなものがあるか。読み聞かせに良い絵本とそうでないものを読み比べしたい。
両方織り交ぜて10冊くらい欲しい。
- 回答
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提供した資料は以下のとおりです。読み比べて判断していただくため、展開、絵、文章等に幅を持たせて提供しました。
1『赤ずきん』(グリム兄弟[原作] バーナディット・ワッツ絵 生野幸吉訳 岩波書店 1979)
21cmの「岩波の子どもの本」と33cmの「大型絵本」があります。
2『赤ぼうしちゃん グリム民話集より』(グリム[原作] 子ども文庫の会 2009)
14cmの小型本です。
当館で来館者にまず手にとってほしいと判断している開架資料は上記の2点です。
3『赤ずきん』([グリム原作]和歌山静子絵 立原えりか文 講談社 1999 えほん世界のおはなし)
グリム版。小澤俊夫解説。
4『赤ずきん』(グリム[原作] 矢川澄子再話 飯野和好絵 教育画劇 2001)
会話中心の文章だが、内容はグリム版のものに準拠しています。
5『丸と四角の世界 シンデレラ 赤ずきんちゃん 《フランス童話集》』
(シャルル・ペロー作 クリスチーヌ・ユエほん案・日本語訳 さ・え・ら書房 1975)
抽象画的な絵。内容はオーソドックスです。
6『世界名作ファンタジー 15』(平田昭吾企画・構成・文 大野豊画 ポプラ社 1985)
アニメ絵本。グリム版をもとに、場面・エピソードがアニメーション風に構成・創作されています。
7『あかずきん』(グリム兄弟原作 ひかりのくに 1993 原作版アニメ名作絵本)
8『あかずきんちゃん』
(シャルル・ペロー原作 ホセ・ラバレイヨ絵 講談社 1994 世界の名作おはなしの森)
おばあさんを食べずにとじこめ、先に赤ずきんを食べます。おばあさんがおとうさん(木こり)に事情を話します。グリム版のものに準拠した内容ですが、説明的な内容です。
9『赤ずきん』
(サラ・ムーン写真 定松正訳 西村書店 1989 ワンス・アポンナ・タイム・シリーズ )
食べられたところで終わるペロー版。現代風の写真絵本。
10『あかずきん』(樋口淳文 片山健絵 ほるぷ出版 1992)
フランスのトゥーレーヌ地方の語りをもとにしています(あとがき参照)。
おばあさんが食べられて助からない、赤ずきんは逃げて助かる、赤ずきんを追いかけているうちにおおかみは死ぬというように、展開がペロー版・グリム版どちらとも大きく異なります。
また、絵本ではありませんが参考資料として『赤ずきんと名作絵本の原画たち トロースドルフ絵本美術館展』(板橋区立美術館編集 刈谷市美術館編集 朝日新聞社 c2005)を貸出しました。
- 回答プロセス
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赤ずきんのテキストとしてよく知られたものに、ペロー版とグリム版があります。
ペロー版はおばあさんのふりをしたおおかみに赤ずきんが食べられるところで終わっています。
グリム版では、猟師のはさみによっておおかみのお腹からおばあさんと赤ずきんが助け出され、
石をつめられたおおかみが重さで死んでしまいます。
『ペロー童話集』(ペロー[著] 天沢退二郎訳 岩波書店 2003)
『グリムの昔話 2』(グリム[著] 福音館書店 2002)
『オックスフォード世界児童文学百科』(ハンフリー・カーペンター著 マリ・プリチャード著 原書房 1999)
「赤ずきん」の項によると、再話によって採用している結末が違い、特に20世紀以降にはとびかかろうとしたおおかみが殺される等のハッピーエンドの結末も見られるそ
うです(p6-8)。
そこで、絵本のストーリーの観点から分けてみました。
当館所蔵資料で調査した範囲では、ペロー版のように食べられて終わる作品は少なく、
グリム版に準拠したものが多数を占めましたが、おばあさんのみ食べられる展開の作品も複数ありました。
おばあさんも赤ずきんも食べられない展開は1作品でした。
また、前述のように、どちらとも違う作品もありました。
なお、ペロー版では「教訓」がついています。
また、グリム版では赤ずきんが、母に止められたのに道草をしたことを反省しています。
グリム版のストーリーによる絵本の多くでも赤ずきんが反省する描写がありますが、省かれているものもあります(前掲資料8、後掲資料18、21~25)。
【パターンA】 おばあさんと赤ずきんが食べられて終わる
前掲9
11『ペローの赤ずきん』
(シャルル・ペロー文 エリック・バトゥー絵 池田香代子訳 講談社 2001)
原典と同じく「教訓」付き
【パターンB】 おばあさんと赤ずきんが食べられて、救出される
前掲1~7
12『あかずきん』(グリム原作 大塚勇三訳 宮脇公実画 福音館書店 1976)
13『あかずきんちゃん』(ポール・ガルドンさく ゆあさふみえやく ほるぷ出版 1976)
14『あかずきん』(グリム[原著] リスベート・ツヴェルガー画 池田香代子訳 冨山房 1983)
15『あかずきん グリム童話より』
(グリム[原作] こわせたまみ文 いがわひろこ絵 フレーベル館 1995)
16『あかずきん 講談社版幼稚園百科』(那須辰造監修 森やすじ絵 講談社 1973)
17『あかずきん』([グリム原作] 曽野綾子文 シバ・プロダクション制作 フレーベル館 c1968
トツパンのステレオえほん)
続いて別のオオカミに出会う事件が描かれています。これは、完訳グリム童話に描かれるエピソードによるものです。
18『あかずきん』
([グリム原作] 寺村輝夫ぶん 多田ヒロシ絵 盛光社 [19--] きんいろの名作絵童話)
解説で「グリム童話で一番気に入らないのは、「教訓臭が強い」ところ」としています。
19『あかずきん おおかみにだまされないで』
(グリムさく おばらあやこぶん 小堤一明え 学研 1994)
【パターンC】 おばあさんのみ食べられて救出される。赤ずきんは食べられない
20『赤ずきんちゃん』
(ペロー原作 水野プロ装丁・文・構成 講談社 1971 オールカラー版世界の名作絵ばなし)
おおかみは鉄砲に撃たれて死にます。
21『かわいいあかずきん』
(リンダ・グリフィスえ 大日本絵画 1986 メリーゴーラウンド・えほん)
仕掛け絵本。「きこりのおじさん」がおおかみをうちたおします。
22『あかずきん』(ディック=ブルーナさく かどのえいこやく 講談社 1994)
おおかみはかりゅうどがナイフで殺します。
23『こねこのあかずきんちゃん』
(リチャード・スキャリーさく よしだじゅんこやく 改訂第5版 ブック・ローン出版 1984)
おおかみはきこりが殺します。
24『スキャーリーのあかずきん』(スキャーリーぶん・え くまがいこうじやく 金の星社 1993)
ほぼ上記と同じ内容の本だが版や絵が異なります。
【パターンD】 おばあさんも赤ずきんも食べられない
25『あかずきんちゃん 3~5歳』([ペロー原作] 小学館 c1971 小学館の育児絵本)
かりゅうどがてっぽうをうつが、オオカミが殺されたかは書かないようにしてあります。
『昔話は残酷か』(野村?著 東京子ども図書館 1997)であげられた絵本です。
【その他】
前掲8、10
- 事前調査事項
- NDC
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- 児童文学研究 (909 9版)
- 参考資料
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- 『赤ずきん』(グリム兄弟[原作] バーナディット・ワッツ絵 生野幸吉訳 岩波書店 1980) (0600242026)
- 『赤ぼうしちゃん グリム民話集より』(グリム[原作] 子ども文庫の会 2009) (0600413348)
- 『赤ずきん』([グリム原作]和歌山静子絵 立原えりか文 講談社 1999 えほん世界のおはなし) (0600206306)
- 『赤ずきん』(グリム[原作] 矢川澄子再話 飯野和好絵 教育画劇 2001) (0600259669)
- 『丸と四角の世界 シンデレラ 赤ずきんちゃん 《フランス童話集》』(シャルル・ペロー作 クリスチーヌ・ユエほん案・日本語訳 さ・え・ら書房 1975) (9600493031)
- 『世界名作ファンタジー 15』(平田昭吾企画・構成・文 大野豊画 ポプラ社 1985) (9600620770)
- 『あかずきん』(グリム兄弟原作 ひかりのくに 1993 原作版アニメ名作絵本) (9600580389)
- 『あかずきんちゃん』(シャルル・ペロー原作 ホセ・ラバレイヨ絵 講談社 1994 世界の名作おはなしの森) (9600562344)
- 『赤ずきん』(サラ・ムーン写真 定松正訳 西村書店 1989 ワンス・アポンナ・タイム・シリーズ ) (9600694577)
- 『あかずきん』(樋口淳文 片山健絵 ほるぷ出版 1992) (9600569130)
- キーワード
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- 赤ずきん
- あかずきん
- グリム
- ペロー
- 絵本
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000104580