レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2010年05月27日
- 登録日時
- 2010/11/19 14:45
- 更新日時
- 2011/02/02 14:25
- 管理番号
- 日進10R-1
- 質問
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解決
国宝絵巻「平家納経 薬王品(へいけのうきょう やくおうぼん)」の絵の中に文字が書いてある。
もともと絵についているのか、落書きなのか知りたい。
- 回答
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もともと絵についているもので「葦手(あしで)」と呼ぶ。
『平家納経 平清盛とその成立』より引用
画中のところどころに、濃い墨で「もし」・「コノ」・「アリテ」・「此命終」・「即」・「安楽せかい」・「生」という字句を見え隠れに潜めている。これは、「薬王品」の中の、
"若し女人有りて、この経典を聞きて、説の如く修行せば、ここ(此)において命終して、即ち安楽世界の阿弥陀仏の、大菩薩に囲繞せらるる住処に往きて、蓮華の中の宝座の上に生れん。 "
を図様化したものである。かような絵画を「葦手」と呼ぶ。
『仏教美術事典』より引用
「葦手」:もともとは、葦がなびく姿になぞらえて書いた遊戯的書体を指した言葉で、やがて水辺の景色を描いた中に、葦・流水・水鳥・岩などの一部分に目立たないように歌文字を隠したものを、葦手絵と称すようになった。現在では、背景の絵にとけ込むように歌文字を散らして、主題の和歌を暗示する手法を、葦手と呼ぶ。
- 回答プロセス
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『日本美術作品レファレンス事典 絵画篇 近世以前』(702.1/030/[1]-[6]-[1])の「平家納経」の掲載ページの下記の当館所蔵資料にあたり、図や絵の中の文字を確認する。
『日本美術全集 8 王朝絵巻と装飾経』(702.1/022/8)図86、『日本美術全集 9 王朝の美術』(708/021/9)図70、『名宝日本の美術 10 源氏物語絵巻』(708/015)図74、で図を確認。
図の解説部分で絵の中の文字について「葦手」というキーワードを得る。
次に、自館OPACで「平家納経」と検索し、ヒットした中から
『図説平家納経』(702.1/072)や、『平家納経 平清盛とその成立』(702.1/071)の“第5章 「平家納経」の王朝耽美-筆跡と絵画・工芸、挑みの美”の「薬王品」について書かれたところを見ると、絵の中の文字についてここでも「葦手」というキーワードを得る。
「葦手」の詳しい意味を美術の事典類、『仏教美術事典』(702/091)や『日本美術史事典』(702.1/02)で調べ、回答を得る。
- 事前調査事項
- NDC
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- 芸術政策.文化財 (709 7版)
- 経典 (183 7版)
- 参考資料
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- 『平家納経 平清盛とその成立』小松茂美著/中央公論美術出版/2005/(702.1/071) p207 (AJ94324259)
- 『仏教美術事典』中村元、久野健監修/東京書籍/2002/(702/091) p62 (AJ94283571)
- キーワード
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- 平家納経
- 薬王品
- 葦手
- 国宝
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 開放講座
- 登録番号
- 1000073597