レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2008/12/20 02:12
- 更新日時
- 2008/12/26 16:43
- 管理番号
- B2008M0562
- 質問
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解決
物理学者のトーマス(L.H.Thomas)について、名前の正確な綴り(L,Hを略していないもの)、出身地、亡命の有無、何を考案し、誰が実用化したのか、といったこと及び、顔写真の載っている資料がないでしょうか。
「教科書にでてくる物理学者小伝」という資料にトーマス・フェルミ近似のトーマスについてLlewellen Hilleth Thomas,1903年~1992年となっており、この人物ではないかと考えますが、確認できる資料が見つかりませんでした。Llewellen Hilleth Thomasである場合はノースカロライナの州立大学の図書館にコレクションがあり、こちらで略歴等が確認できますが、日本語の資料で確認できる資料を希望しています。
典拠:『MARUZEN物理学大辞典』第2版(物理学大辞典編集委員会/編、丸善 1999年)p1597
- 回答
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以下の日本語資料を調べましたが、L.H.Thomas氏に関する情報は掲載されていませんでした。【 】内は当館請求記号です。
・『世界科学者事典.2』(原書房 1986.5 【M2-13】)
・『人物化学史事典 : 化学をひらいた人々』(海游舎 1994.11 【PA2-G7】)
・『科学技術人名事典』(共立出版 1971 【M2-27】)
・『科学・技術人名事典』(北樹出版 1986.3 【M12-11】)
・『世界数学者人名事典.増補版』(大竹出版 2004.4 【MA2-H8】)
・『岩波西洋人名辞典.増補版』(岩波書店 1995.5 【GK2-G1】)
・『新版世界人名辞典. 西洋編.増補版』(東京堂出版 1993.9 【GK2-E3】)
・『コンサイス外国人名事典.第3版』(三省堂 1999.4 【GK2-G9】)
・『現代外国人名録』(日外アソシエーツ 1992.2 【GK2-E5】)
・『物理学事典 : ソビエト科学アカデミヤ版』(明治図書出版 1982.5 【MC2-26】)
・『人名のつく現象と法則の辞典 : 物理・化学・数学』(アグネ 1980.7 【M2-147】)
・『ロングマン物理学辞典』(朝倉書店 1998.2 【MC2-G7】)
次の資料にはわずかに記述がありましたが、詳細な情報は得られませんでした。
・『物理学大百科』(朝倉書店 1989.11 【MC2-E8】)
p.331のサイクロトロンに関する項目中に「7年前の1938年にL.H.Thomasにより提案されていた」との記述がありましたが、フルネームの記載はありませんでした。
以下に、英語の資料でご照会の事項に関連すると思われる情報を掲載している資料をご紹介します。
貴館にお示しいただいた典拠には「サイクロトロンの考え方は、1938年にはすでにトーマス(L.H.Thomas)によって提案されていた」とあることから、当館で契約している科学技術関係の論文データベースである、Web of Scienceで該当する文献を調査しました。著者が「Thomas, LH」で、1938年に発表されたものを検索してヒットする以下のサイクロトロンに関する文献が該当するものと思われます。
(a)
Title: The paths of ions in the cyclotron II. Paths in the combined electric and magnetic fields
Author(s): Thomas LH
Source: PHYSICAL REVIEW Volume: 54 Issue: 8 Pages: 588-598
Published: OCT ~1938
(b)
Title: The paths of ions in the cyclotron I. Orbits in the magnetic field
Author(s): Thomas LH
Source: PHYSICAL REVIEW Volume: 54 Issue: 8 Pages: 580-588
Published: OCT ~1938
上記2論文を掲載している洋雑誌『Physical Review』(【Z53-A383】)は当館関西館にて所蔵しております。現物を確認しましたが、著者名は「L.H.Thomas」とのみ記載されており、フルネームは分かりませんでした。ただ、著者名の下に「Mendenhall Laboratory of Physics, Ohio University, Columbus, Ohio」と記載されており、論文発表時にL.H.Thomas氏はオハイオ州立大学に所属していたことが分かります。
その他、以下の人名録を調べたところ、「Thomas.L.H」という項目は見当たりませんでしたが、「Thomas, LLEWELYN HILLETH」については以下の資料に情報が掲載されていました。しかし、いずれも記載は簡易なもので、顔写真は掲載されていませんでした。
(1)『American Men & Women of Science』(R. R. Bowker 【Z63-C37】)
17th edition(1989/1990)のp.93に「Thomas, LLEWELLYN HILLETH」の項目があり、生年月日、経歴、所属学会、実績などが簡単に記述されています。ロンドンに誕生し、ケンブリッジ大学を卒業し、学位を取得したことなどが記述されています。
1929~1943年にはオハイオ州立大学に所属していたことが記述されており、上記でご紹介した論文の情報と一致します。
(2)『Dictionary of physics』(Macmillan Publishers c2004 【MC2-B6】)
p.2307に「Thomas, Llewellyn Hilleth」の項目があり、生年月日、略歴、実績などが簡単に紹介されています。亡くなったのは1992年4月20日となっています。実績としてはトーマス・フェルミ理論を提唱したことなどが挙げられています。
(3)『Who's Who in America』(Marquis Who's Who 【Z62-A121】)
44th edition,volume2のp.2772に「THOMAS, LLEWELLYN HILLETH」の項目があり、家族構成や略歴が簡潔に記載されています。「came to U.S., 1929」との記述があり、ロンドンに生まれ1929年にアメリカに渡っていることが分かります。
上記の3つの資料によると、Thomas, Llewellyn Hilleth氏は原子物理学などの研究者であり、1938年にはオハイオ州立大学に所属しています。お探しのL. H. Thomas氏はこのThomas, Llewellyn Hilleth氏であると考えられます。
Thomas, Llewellyn Hilleth氏について、Google( http://www.google.co.jp/ )にてインターネットを検索したところ、コロンビア大学ホームページ内のL.H. Thomas and Wallace Eckert in Watson Lab(http://www.columbia.edu/acis/history/thomas.html)
に顔写真や実績などが掲載されていました。
また、貴館ですでに調査済のノースカロライナ州立大学ホームページ内の
Guide to the Llewellyn Hilleth Thomas Papers, 1921-1989
(http://www.lib.ncsu.edu/findingaids/xml/mc00210.xml)に経歴などが掲載されています。
インターネットの最終アクセス日は2008年4月26日です。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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『世界科学者事典4巻、別巻』(原書房、デービッド・アボット)
『岩波-ケンブリッジ世界人名辞典』(岩波書店、1997年)
『世界伝記大事典 総索引』(ほるぷ出版、1981年)
『新版 世界人名辞典 西洋編』(東京堂出版、1993年)
『ロングマン物理学辞典』(朝倉書店、1998年)
『人物20世紀』(講談社、1998年)
『西洋人名・著者名典拠録』(日外アソシエーツ、2004年)
『西洋人物レファレンス事典』(日外アソシエーツ、1984年)
『20世紀西洋人名事典』(日外アソシエーツ、1995年)
『西洋人著者名レファレンス事典』(日外アソシエーツ、1999年)
『岩波西洋人名辞典』(岩波書店、1981年)
『科学者人名事典』(丸善、1997年)
『世界科学大事典』(講談社、1977年~1986年)
以上にはL.H.Thomasの項目なし
『物理学辞典 三訂版』(培風館、2005年)
AVFサイクロトロン及びトーマス・フェルミ模型の項目にL.H.Thomasとあり。
『教科書にでてくる物理学者小伝』(シュプリンガージャパン、2007年)
p209フェルミの項目にトーマス・フェルミ近似として記載あり。
- NDC
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- 原子物理学 (429 9版)
- 参考資料
- キーワード
-
- 人物情報
- 物理学
- 原子物理学
- サイクロトロン
- L.H.Thomas
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 人物
- 質問者区分
- 公共図書館
- 登録番号
- 1000049849