飯塚羚児(いいずか れいじ)1904(明治37)年3月3日~ 画家。横浜市生まれ。マニラ大学などに学ぶ。少年時代より東条鉦太郎のもとで洋画を修業、海洋少年団員として諸国を訪問。軍艦をはじめ海洋関係の題材を得意とする。「少女倶楽部」掲載の千葉省三「流氷を追うて」(29)の挿絵を担当。以後同誌には「空中艦隊の歌」(32 長田幹彦)「哨海艇」(42 海野十三)などの挿絵を描く。代表作は科学読物作家原田三夫とコンビを組み、数年の準備の後に成ったという「科学絵話」(東京実業社)シリーズであろう。「科学絵ばなし海」(41)「軍艦の科学絵話」(42)など「科学的正確」さを主張した同シリーズに、写実的画風の絵は最適であった。それも図鑑的な正確さだけでなく、随所に人間を配し、人間活動の場所を髣髴させるところに親しみやすい絵を志向する姿勢がうかがえる。また、海の広大さを強調するための遠近法の効果的な使い方も特徴の一つと言えよう。単行本では、山中峯太郎『地底の王城』(41 偕成社)や海野十三『地底戦車の怪人』(41 同)などの冒険小説に、躍動感のある構図に加え、力強いタッチの絵を描いた。図鑑の類では講談社の「学習図鑑」の『電気の世界』(53)があり、筑摩書房版「小学生全集」の『出る船・はいる船』(52)「玉川こども百科」の『こうかい』(54)などに得意とする分野の筆をふるったほか、山内秋生『月夜のなげき』(32 大興社)林髞『緑の秘密国』(54 高志書房)など多数。 (藤本芳則)