レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2005/11/29
- 登録日時
- 2006/05/12 02:10
- 更新日時
- 2010/03/08 16:43
- 管理番号
- 埼久-2005-097
- 質問
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未解決
「斎藤別当実盛」正本(編集発行 金森孝之)に記載のある、「松は吹説法渡生の声 柳は含 観音 微妙色」の出典を知りたい。
- 回答
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出典が明示された資料は見つからず。当該語句が引用されていた図書は以下のものがあり。これらを紹介する。
『法華経を読む』
p113に「松ハ吹ク説法度生ノ声、柳ハ染ム観音微妙ノ相」とあり、「決して口だけが説法ではない。説法は天地に満ちておる。・・・」と本文が続いているが、出典についての記述はなし。
『延命十句觀音經講話』
p28に「柳は染む觀音微妙の相 松は吹く説法度生の聲」とあり。ただし、出典を含む一切の解説はなく、前段の文章との関連も不明。
『観音経講話』(加藤熊一郎=加藤咄堂)
p4「即ち古人も咏じましたやうに『柳は染む観音微妙の色、松は吹く説法度生の声』で、『山のいろ谷のひゞきもさながらに我が釈迦牟尼佛の声と姿ぞ』と達観するに至るのであります。」とあり。
『床の間の禅語』
p122「柳は染む観音微妙の色-春になって若芽を吹く柳の緑に、観世音菩薩の姿を見ることができる。松は吹く説法渡生の声-松の梢に風が吹くと、ざわざわとざわめきます。その音に耳を傾けてみると、それがお釈迦さまのご説法の声だと聞くことができる。」とあり。
『茶席の禅語 [正]』
p199「すなわち『古松談般若』とか『松吹説法度生声』という語があるように、そこに真仏の声を聴くことができるのです。」とあり。
『古教照心(法話百題)』
p365「『松は吹く説法度生の声、柳は染む観音微妙の相』という禅語があるが、観音さまは、松の風、柳の色にも身を託して現れ…」とあり。
また、当該語句が引用されている雑誌記事は以下のものが見つかった。あわせて紹介する。
「禅宗と観音信仰」(「大法輪 1953.7」)には「(略)ところで禪宗の儀式は千年以上の伝統を持ち、非常に洗練されたものであるが、大抵の儀式の時、その初めに導師が法語を唱える。(略)結びに、『柳は染む観音微妙の相、松は吹く説法度生の声』などといって、観音様を引出すこともある。これを漢文にすると、柳染観音微妙相、松吹説法度生声となる。法語はその人の識見で、どんなことをいっても差支えないが、この作法は、中国で始まり中国で発達したもので、禅宗の日本への移入とともに、この作法もそのまま伝わったのであるから、今なお中国風を踏襲し、五言三句とか、七言二句などで結ぶことが多い。」とあり。
「詩偈の心 観音さまを拝む」(「大法輪 1953.7」)には「私は観音信仰の一人であるが、ここで古人の詩偈(しげ)を通してそのお徳をしのんで見たいと思う。(略)観音礼讃の詩偈をご紹介することにする。
柳染観音微妙相 柳は染む観音微妙の相
松吹説法度生声 松は吹く説法度生の声
二句の偈で、古来から誰でもしっている名高い偈である、柳が青く芽生え長くのび緑を添えて、すらりとした姿が何とも云えぬ風情である。」とあり。
「禅語入門」(『茶道の研究 1996.6』)には「柳染観音微妙色 松吹説法度生声 柳(やなぎ)は染(そ)む観音微妙(かんのんみみょう)の色(いろ) 松(まつ)は吹(ふ)く説法度生(せっぽうどしょう)の声(こえ)
(前略。禅師の語録を引用したあとで)この様に曹洞宗の開祖洞山良价(とうざんりょうかい)禅師は「情(こころ)」ある人間を有情とし、山川草木瓦礫の様に「情」のないものを無情とし、その無情も人間が法をとくのと同じ様に、そのままの姿で法を説いているのだとします。「柳は染む観音微妙の色、松は吹く説法度生の声」の句もこの辺の消息を云おうとしています。」とあり。
中国語の観音経講話のWebサイトに「綠柳是觀音微妙之相,吹松乃説法度生之聲。」とあるのを見つけるが出典については明示されていなかった。
- 回答プロセス
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質問者の提示した資料は一般には流通していない個人出版のもの。
当該語句前後の文脈から、①和歌関連、②仏教関連、③漢文関連、④名言・諺関連、⑤斎藤実盛関連の資料を調査する。同時にWeb情報調査した。
その結果、禅関連の資料に多く引用されている言葉であることが判明したが出典については不明だった。
《Google》を〈觀音 & 微妙 & 度生 & 松 & 柳〉で検索する。
妙法蓮華經觀世音菩薩普門品講話(聖印法師著 中国語Webサイト)の、
「五 本文」にある【應以辟支佛得度者,即現辟支佛身而為?法。】の解説部分に「綠柳是觀音微妙之相,吹松乃説法度生之聲。」とあることから、出典は漢籍であると推測されるが典拠は不明。
成田山仏教図書館、浅草寺、大正大学図書館、国立国会図書館にも調査を依頼した結果、国立国会図書館より雑誌論文を紹介されるが出典についてはわからず。
調査済み資料(県立図書館所蔵分)
①和歌関連
『国歌大観 CD-ROM』『物語和歌集成』『日本名歌集成』『日本歌語事典』『巡礼と御詠歌』『釈教歌詠全集 5』
②仏教関連
『仏教名言辞典』(東京書籍)『仏家名言辞典』(東京堂出版)『仏教故事名言辞典』(新人物往来社)『観音経講話』(橋本徹馬)『観音経講話』(壬生台舜)『観音経法話 上・下』(高田好胤)『観音経 奇蹟の聖典』『観音経を読む』『観音経十句観音経を味わう』『観音経入門』『観音経』(現代書林)『観音経講義』『観音経の話』『観音経法話』『観音経事典』『妙法蓮華経 口語全訳』『妙法蓮華経』(久保田正文)『妙法蓮華経 観世音菩薩普門第二十五品』『秋月龍珉著作集 14 禅宗語録漢文入門』『禅林用語辞典』『禅学辞典』『禅林名句辞典』『新版禅学大辞典』『正法眼蔵用語辞典』『現代禅講座 別巻』『世界の名著 続3』『禅語散策』『禅語小事典』『禅語字彙』『禅語辞典』『禅語事典』『禅語の四季』『禅語般若心経』『禅語百選』『禅語百話』『禅語百科』『大乗仏典中国・日本篇 12、29、30』『中国禅僧列伝』『床の間の禅語 続』『日本の禅語録 3、6、7、8、11、14、15、18』『新撰禅林墨場必携』『定本禅林句集索引』『講座禅 6』(「虚堂録」のみ)『仏教法話大事典』『現代仏教法話大事典』『有朋堂文庫 79 禅林法話集』『心の落書』『西国愛染十七霊場巡礼』『西国別格二十霊場巡礼』『釈迦三十二禅刹巡礼』『新西国霊場法話巡礼』『十善法話』『日蓮聖人法話集』『仏教説話体系 29』(「観世音菩薩物語」の部分のみ)『高僧和讃講話 下』『三帖和讃講話 上・中・下』『坐禅和讃講話』『和讃史概説』『和讃』
③漢文関連
『日本漢文学大事典』『漢詩漢文名言辞典』『中国故事成語大辞典』『中国名言名句の辞典』
④名言・諺関連
『諺語大辞典』『成語大辞苑』『俚言集覧』『故事成語名言大辞典』『故事ことわざ辞典』『故事成語諺語辞典』
⑤斎藤実盛関連
『斎藤別当実盛伝』『平家物語 1、2(新編日本古典文学全集45、46)』『謡曲集 1(新編日本古典文学全集56)』『斎藤実盛 絵物語』『竹本義太夫浄瑠璃正本集 下』『新釈永平広録』『辻町文庫浄瑠璃本集』
⑥その他
『一行物 禅語の茶掛 上・下』『新版一行物 禅語の茶掛 上・下』『禅語の茶掛 一行物』『禅語の茶掛 一行物 続』『同 続々』『同 又続』『同 又々』
調査済み資料(国会図書館所蔵分)
「大正新脩大蔵経 第47巻 諸宗部4」(大正新脩大蔵経刊行会)「漢詩大観」(佐久節 鳳出版)「日本詩紀本文と総索引」(高島要 勉誠出版)「佩文韻府」(張玉書(清)等編 上海書店)「禅宗辞典」(国書刊行会)「大徳寺禅語録集成」(法蔵館)「日本仏教学会年報 1973.3」「掲示・文書伝道大事典」(国書刊行会)
- 事前調査事項
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「観音経講話」(鎌田茂雄)p18に「・・・古歌に、柳は染む観音微妙の色 松は吹く説法度生の声 とあるが柳の緑は観音さんの微妙の色をあらわしており、松籟の音は衆生を救わんとする観音さんのお声にほかならない。」とあり。
仏教語関連
「広説佛教語大辞典」「岩波仏教語辞典」「仏教用語辞典」(新人物往来社)「仏教名言辞典」「仏教比喩例語辞典」「仏教大辞典」(小学館)「仏教ものしり事典」「暮らしに生かす仏教成語辞典」「暮らしに生きる仏教語」「これで大丈夫禅語百科」など。
漢文関連
「大漢和辞典」「日本国語大辞典」「漢詩の事典」「漢詩漢文名言辞典」「漢文名言辞典」など。
和歌関連
「新編国歌大観」「歌ことば歌枕大辞典」「日本歌ことば表現辞典 植物編」など。
- NDC
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- 各宗 (188 9版)
- 参考資料
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- 『法華経を読む』(同一書名多数 書誌未確認)
- 『延命十句觀音經講話』(原田祖岳 大蔵出版 1952)
- 『観音経講話』(加藤咄堂 1923)
- 『床の間の禅語』(河野太通 禅文化研究所 1984)
- 『茶席の禅語 [正]』(西部文浄 1990)
- 『古教照心(法話百題)』(佐藤俊明 鎌倉新書 1992)
- 「詩偈の心 観音さまを拝む」(「大法輪 1953.7」:県立図未所蔵 所蔵館未確認)
- 「禅宗と観音信仰」(「大法輪 1953.7」:県立図未所蔵 所蔵館未確認)
- 「禅語入門」(『茶道の研究 1996.6』)
- キーワード
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- 禅宗-感想・説教
- 漢詩
- 照会先
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- 成田山仏教図書館
- 浅草寺
- 大正大学図書館
- 国立国会図書館
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000028616