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レファレンス協同データベース事業
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平成16年度連載 レファの芽

本実験事業やレファレンスサービス全般に関して、参加館の職員その他関係者の方々からの御意見を紹介いたします。

【本記事の内容・執筆者の肩書は、原則として原稿受付時点のものです。】


第1回 レファレンス演習とレファレンス協同データベース(CRD)

(平成16年7月26日配信)

香川県立図書館業務課主査
粉川泰典

 レファレンスカウンターで、年に数回、次のような質問を次々としてくる利用者と遭遇する。「『オズの魔法使い』の物語世界の地図が見たい」、「第1回新聞週間の標語を知りたい」、「11年目の結婚記念日は何と呼ぶか」等々…内容的な脈絡のなさや、それらしい参考図書で回答できてしまうあたりがどうにもレファレンス演習っぽい。その場の空気で、「レファレンス演習か何かで?」と声を潜めて聞いてみたりもするが、いろいろ試行錯誤するプロセスがタイセツ、とか、自分でやらなきゃ意味ないっしょ、とまでは気弱なせいで言えない。

 あるレファレンス演習の講義で先生が、演習の課題は回答があらかじめ存在していて、ある意味実験室的なもので、現実のレファレンスとはかなり違うものだ、というような意味のことをいわれたことが印象に残っている。

 確かに演習の問題は、最初に回答ありきで作成されている。しかし、現場では利用者の要求で質問が発生する。生の質問から回答に導くプロセスには、おそらく経験者にしかわからない苦労がある。記憶違いや思い込みへの対応、要点の把握等・・・忍耐力が試される場面もしばしばある。あらゆる窓口業務には緊張感がともなうものだが、どんな質問がくるかわからないというレファレンスのそれは一種独特なものである、と思う。

 考えてみれば、わかりにくい問題を資料で解決するために、見知らぬ人間同士が行う対話なのだ。適切な回答に導けないことだってたぶん、かなり多い。回答できない、所蔵資料では対応が難しい、ということを利用者に理解してもらうこともまた骨の折れる作業である。接遇といった接客スキルだって大切だ。

 CRDに蓄積された事例データは、まさにそういった現場で集められたものであり、図書館の活動記録、図書館の記憶だといえる。

 NACSIS Webcat、ゆにかねっと、県域の総合目録、各館のWebOPACはどんな資料がどこにあるかを教えてくれる。これらのWebOPAC系ツールの増加は図書館の所蔵調査の有り方を根本から変え、利用者ニーズも大きく変えた。

 一方、このCRDは、どこかの図書館でニーズのあった情報が、どの資料に記述されているかを教えてくれるツールであるという言い方もできると思う。WebOPAC系のツールと併せて使われることで、分散している資料がより効果的に活用され、図書館全体への理解が深まることを期待したい。

 CRDに多くの図書館がレファレンス事例を提供し、まずは図書館員に多くの事例を読んでもらえたらいいなあと思う。レファレンスに携わる者にとって、CRDの事例データはとても有益で楽しいはずだから。

※CRD(Collaborative Reference Database):レファレンス協同データベース

原稿受付:平成16年7月9日

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第2回 レファレンスデータベース公開の顛末

(平成16年8月26日配信)

山梨県立図書館企画協力課
千野国弘

 レファレンスサービスを行っていると、そういえば以前同じような質問を受けたような気がするなとか、このあいだ誰か○×についてブツブツいってたよなといったことが間々ある。そんなとき過去の事例が記録され、すぐに参照できる仕組みはとても有効だ。実際、地域の公共図書館では特にその地域の歴史や人物、地名などの問い合わせで共通の内容が多くあったりするのではないだろうか。多様な情報源を利用している場合や、参考図書以外を参照している場合など、再調査の手間を考えると相当スピードアップできるはずだ。記録のカード化や事例集のような形でまとめておく方法もいいが、オンラインで誰でも検索できるようにデータベース化されているとその有用度は格段に増すのではないか。

 山梨県立図書館では、平成5年に導入した図書館業務システムの中で、レファレンス記録の登録・参照がおこなえるようになっていたため、平成13年度のシステム更新で、ここに蓄積したレファレンス記録をデータベース化してWeb公開することを計画した。しかし、旧システムに入力されたデータは利用者への公開を前提としておらず、あくまで職員間で調査事例の共有を図るものとして入力されていたので、そのままでは内容にばらつきがあり確認が必要となった。時間の経過でより適切な回答がみつかるケースも多く、OPACの機能充実であえて掲載の必要のなくなった事例もあった。そもそも不正確な記述も確認されるなど、結局再調査となる例がほとんどで、見直しは大変な作業になった。

 入力データの数量を求めるシステム担当者と、内容の質を重視するレファレンスサービス担当者の間で「質か量か」「質も量も」と悩みながら、ある程度の件数がないとデータベースとしての有用性が確保できないという共通認識はあった。最終的には、元々の蓄積データ約4,500件の内、約700件を公開し、残りも順次公開することにして現在も作業を進めている。

 今回のレファレンス協同データベース実験事業には、上記の公開済み事例データをすべて提供している。これは、それぞれの事例が全国の利用者に対して有効なすぐれた情報であると考えてのことではなく、(実は質的に不安もあるが)データベース構築の効果を考えると、ある程度数量がまとまって、全分野にまたがる内容の提供が優先と判断したためだ。

 もっとも、多くの館の事例が集まったときには、重複する内容や関連・隣接する内容について、専門分野、地域性、規模の大小による使用可能ツールの差、職員の能力や業務体制の違いなどからばらつきがでるのが前提だろうから、開き直って、公開した事例へのご批判をいただいてレベルの向上を図ろうというのが、むしろ本音ではある。冷や汗をかきながら他館の優れた事例を拝見し、公開した事例も手直ししていこうと考えている。

原稿受付:平成16年8月10日

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第3回 レファレンス事例データベース活用のすすめ

(平成16年9月30日配信)

昭和女子大学
教授 大串夏身

 レファレンス事例データベースは、実際の質問があったときに参照するデータベースである。これに回答そのものを求めてはいけない。それは、2つの理由による。

 ひとつは、レファレンスの質問に対する回答は、質問者(利用者)が満足してしまえばそこで終わってしまうということだ。したがって、実際、自分の目の前にいる質問者の質問に対する回答としてふさわしいかどうかわからない。

 ふたつは、過去に回答したもので、新しいツールや情報源が出されている可能性が少なくない。特に、インターネット情報源は日に日に新しいものがアップされている。これらを使ったレファレンスの回答が求められるのは、いうまでもない。

 参考にして手がかりを得るという使い方がいい。現在、国立国会図書館の担当者の努力で、件数が増加して、近く万を越えるという。万を越えるとかなりのカバー率となるのではないだろうか。

 活用方法としては、1、演習の教材として、2、自習の材料として、3、質問回答サービスのための資料・情報源の組織化のデータとして、などの使い方がある。さらに、4、自分の館のレファレンスサービス全体での位置を確認したり、レファレンスコレクションの再検討の材料としてもつかえる。「3」「4」は、事例を量的にとらえて分析することが必要だが、事例が多くなればそれだけ分析した結果の信頼性が高まるということがある。

原稿受付:平成16年9月17日

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第4回 世界は日本を知りたがっている

(平成16年12月3日配信)

多摩大学メディア&インフォメーション・センター
課長 池田剛透

 2002年12月、マサチューセッツ大学図書館のシャロン・ドマイヤー氏と、日本研究情報専門家ワークショップで、お会いする機会を得た。彼女は私の運営する「大学図書館員のメーリングリスト」に参加されて久しく、しかしながら、顔を合わせるのは初めてという、典型的なネット時代の知り合いであった。

 その日、彼女は「Ask EASL」という東アジアに関するレファレンス協同データベースについて発表された。その中で、米国には日本研究に従事する人や、日本を知りたい人々がたくさんいるのだが、日本から発信される情報が十分ではないという現実を語ったのが印象的だった。

 話は1993年に遡る。見聞を広めるために海外を放浪していた私は、自称ファンタジー作家というイギリス人から日本の妖怪について尋ねられたことがあった。オーストラリアからタイ経由でヒースロー空港に向かう飛行機の中のことである。その少し前まで私は深い眠りにあり、突然、機内の明かりが灯ると、機長のアナウンスとともに、周囲のただならぬ気配に気づいて眠気が醒めた。右隣のイギリス人が、不安げな表情で「貨物室が火事になったけど、無事に消火したそうだよ」と、事の次第を教えてくれた。それがきっかけで、なんとなくお互いのことを話し始めたのだが、私が日本人だと伝えると、いそいそとメモ帳を取り出し、ろくろ首の絵を描いて、「この他に知っている妖怪があったら、ぜひ教えて欲しい」と目を輝かせた。しかし、私は妖怪について語るほどの知識もなく、英会話能力も幼児に等しかったので、丁重にこれを辞退した。だが、彼の懇願は続き、結局、私は緊急着陸地のストックホルム空港まで、「こんなのあったかなあ」というような妖怪を描き続けた。高度1万メートルの上空で、それも行く先の変更になった飛行機の中で、日本の妖怪を説明することになるとは、夢にも思わなかった。

 平成16年、世界は今、インターネットを媒介にして膨大な情報がやり取りされ、既存では成し得なかったコミュニケーションが生まれている。かの自称ファンタジー作家も、さぞやよい世の中になったと喜んでいることだろう。ネットで探れば、「稲生物怪録」といったマニアックな怪談さえ知ることができるのだ。

 しかし、残念ながら、まだまだ日本という国の情報は、世界に届いていないように思える。そこで、今後のレファレンス協同データベース事業でも、外国語による事例入力を試行してはいかがだろうか。この事業が、日本と海外をつなぐ架け橋となり、相互理解を深めるためのデータベースとなれば、と妄想的に期待している。もし、それが叶えば、高度1万メートルで日本の妖怪の質問をされても、レファ協のページを教えてあげれば、後は安らかな眠りにつけること請け合いである。

原稿受付:平成16年11月30日

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第5回 単なるレファレンス情報源としての役割を超えて…

(平成17年1月28日配信)

慶應義塾大学文学部
助教授 原田隆史

 近年、データマイニングやWebマイニングなどという言葉が盛んに使われるようになってきた。マイニング(=採鉱)という言葉通り、収集した大量のデータそのものの検索という範囲を超えてデータ間の関連や相違などから新しい知見を見いだそうとする試みである。レファレンス協同データベース(CRD)も実際にレファレンス情報源となるだけではなく、新たな情報を生み出す存在、レファレンスの方法を変えるパワーを秘めた存在として期待される。

 簡単に思いつくところでも、レファレンス手順の類型化やレファレンスツール整備のための指針の作成、参考資料の評価、郷土資料展示やビジネス支援図書コーナー設置の際に利用者の興味を反映させるための基礎データづくりなどが考えられる。さらに、異なる機関から大量のデータが収集され、それらを横断的に分析することで、今までは思いもかけないような新しい知見も期待できる。

 その際重要であるのは、できる限り多くのデータを対象とできることである。レファレンス手順の記録にしても、現在は「調べ方マニュアル」として参加館自身が入力したもののみがまとめられているが、近い将来には多数の事例から、人々が意識していなかった項目まで抽出したものがまとめられることもあろう。

 そのためには、たとえ完全に完成していないデータも重要な情報源となる。参加館の方々には「こんなものは役にたたないだろう」というようなことを考えず、どんなに中途半端だと思われるようなものであっても、アップロードされることが望まれる。また不完全なデータでも取り扱えるようにタグ付けの自動化など、できるだけ登録を省力化することが今まで以上に重要な点ともなろう。

 今後、CRDがどのような新しい知見やサービスを提供するようになるだろうか。全く新しいものの創出に立ち会えるかもしれないとワクワクする気持ちで楽しみにしているところである。

原稿受付:平成17年1月27日

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第6回 レファレンス協同データベース実験事業参加館フォーラムについて

(平成17年6月20日配信)

青山学院大学文学部
教授 小田光宏

 レファレンス協同データベース実験事業の参加館フォーラムを通して,このプロジェクトの事業化後の大いなる発展の可能性を,二つの面で確信した。

 一つは,ロゴスの面である。今回,基調講演の講演内容を準備するにあたって,関連データと資料を渉猟し,実験事業の意義及び位置付けに関して,客観的に考察した。その結果,この事業を支える学術面での関心が高まっていること,デジタルレファレンスサービスを展開する社会的状況が成立しつつあること,事業を実践する図書館界の基盤が厚くなっていることを認識した。すなわち,事業を取り巻く諸状況を論理的に整理すると,今後の進展が十分に見込まれると判断された。パネルディスカッションにおける議論の過程においても,こうした諸点が確認できた。

 もう一つは,パトスの面である。フォーラム開始前に配付された出席者名簿の127名という数字を目にしたとき,このテーマに対する期待と関心が極めて高いことを実感した。その思いは,会場を埋める出席者の熱気によって,さらに強くなった。身を乗り出すようにして報告を聴き,パネルディスカッションの経過を一心にメモを取る様子からは,レファレンスサービスを充実させようとする図書館員の熱意が,ひしひしと伝わってきた。

 今後,これらの認識と熱意に基づいて,レファレンス協同データベース事業が,図書館界に大きく羽ばたくことを期待する。

原稿受付:平成17年3月29日

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